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不快感
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チェルシーは学園の頃ですらシルヴァルに興味もなく、どのような性格なのかまでは知らないが、こんなに浅墓な男だったのかと、ガッカリした。
キャローズという名前は同級生にも、周りにも聞いたことはなかった。
しかも、子どもは正妻と作らず、愛人は愛人らしく弁えるのではなく、子どもまで産もうと思っているのかとすら思った。
だから、政略結婚ではなく、契約結婚だと言っているつもりなのだろう。
「お断りします」
「子どもが欲しいということだろうか?」
「なぜ親しくもないフォスト様に、そのようなデリケートな話をしなければならないのでしょうか?」
さすがに失礼だろうという怪訝な視線を向けると、さすがに察したようで、目を逸らした。
「す、すまない…」
チェルシーはロインが学園を卒業する18歳を待って結婚したので、19歳で結婚し、21歳で未亡人となった。
現在、チェルシーもシルヴァルも22歳の年である。
キャローズが誰なのか分からないが、恋は盲目というべきなのか、同級生ながら若いなという思いであった。
「そもそも、侯爵家のご嫡男なのに、婚約者はいなかったのですか?」
侯爵家はシルヴァルの上に姉がいたが、既に嫁いでおり、シルヴァルは一人息子である。そんな相手に婚約者がいないということは、大変珍しいことであった。
チェルシーとロインは10歳の時には婚約をしていたので、学園でも婚約者持ちであったために、色恋沙汰に巻き込まれることはなかった。
「候補はいたのだが、きちんと婚約した相手はいない」
「フォスト侯爵は認めてらっしゃるのですか?」
「父上は、候補者と結婚して欲しいようではあるが、キャローズと一緒にいたいということも、理解はしてくれている。だが、正妻を娶らないということはならないと言われていて…」
契約結婚など一度も考えたこともなかったチェルシーには、理解が出来ないことではあったが、侯爵家の嫡男が正妻がおらず、愛人だけというのは世間からどう見られるかくらいは分かる。
だが、チェルシーには関係のないことであることだけは確かである。
「では、対価を払えるような方に頼まれるしかないですね。私はお断りします」
「私は君が相応しいと思っているんだ」
殴ってもいいと言われていたら、いや、この男が侯爵家の嫡男でなかったら、間違いなく、艶々した頬を掌で叩き付けていただろう。
「大変失礼なことを言っていると、自覚がないのですか?」
「えっ?」
「私はお断りしましたが、誰に言っても、お前は価値がないのだから、妻として置いてやるから、ただで働けと言っているようなものですよ?」
貴族としての価値はないかもしれないが、シルヴァルに馬鹿にされる覚えのないチェルシーは、不愉快な気持ちを露わにした。
「そのようなことは思っていない!君は面倒見がよく、皆にも慕われている存在だ。だから、君ならキャローズとも仲良くやっていけるのではないかと思ったんだ」
「それはフォスト様の勝手な押し付けでしょう?」
「押し付けるわけではない!勿論、君のことは妻として守る」
「何から守るというのです?泥棒ですか?暴漢ですか?失礼ですが、あまり強そうには見えませんけど?」
チェルシーはふわふわで可愛い顔をしていても、騎士のロインを間近でずっと見ていたので、鍛えている度合いは身体つきを見れば分かる。
「いや、そうではなく、再婚からだ」
「ですから、そのような話はありません」
「これからは君も若いのだから、きっとあるはずだ」
「それは、その時に考えればいいことです。フォスト様にご心配いただくようなことではありません」
「だが、その時になって困るのは君のはずだ」
万が一にも困るようなことになったとしても、結局はシルヴァルに心配されることではない。
キャローズという名前は同級生にも、周りにも聞いたことはなかった。
しかも、子どもは正妻と作らず、愛人は愛人らしく弁えるのではなく、子どもまで産もうと思っているのかとすら思った。
だから、政略結婚ではなく、契約結婚だと言っているつもりなのだろう。
「お断りします」
「子どもが欲しいということだろうか?」
「なぜ親しくもないフォスト様に、そのようなデリケートな話をしなければならないのでしょうか?」
さすがに失礼だろうという怪訝な視線を向けると、さすがに察したようで、目を逸らした。
「す、すまない…」
チェルシーはロインが学園を卒業する18歳を待って結婚したので、19歳で結婚し、21歳で未亡人となった。
現在、チェルシーもシルヴァルも22歳の年である。
キャローズが誰なのか分からないが、恋は盲目というべきなのか、同級生ながら若いなという思いであった。
「そもそも、侯爵家のご嫡男なのに、婚約者はいなかったのですか?」
侯爵家はシルヴァルの上に姉がいたが、既に嫁いでおり、シルヴァルは一人息子である。そんな相手に婚約者がいないということは、大変珍しいことであった。
チェルシーとロインは10歳の時には婚約をしていたので、学園でも婚約者持ちであったために、色恋沙汰に巻き込まれることはなかった。
「候補はいたのだが、きちんと婚約した相手はいない」
「フォスト侯爵は認めてらっしゃるのですか?」
「父上は、候補者と結婚して欲しいようではあるが、キャローズと一緒にいたいということも、理解はしてくれている。だが、正妻を娶らないということはならないと言われていて…」
契約結婚など一度も考えたこともなかったチェルシーには、理解が出来ないことではあったが、侯爵家の嫡男が正妻がおらず、愛人だけというのは世間からどう見られるかくらいは分かる。
だが、チェルシーには関係のないことであることだけは確かである。
「では、対価を払えるような方に頼まれるしかないですね。私はお断りします」
「私は君が相応しいと思っているんだ」
殴ってもいいと言われていたら、いや、この男が侯爵家の嫡男でなかったら、間違いなく、艶々した頬を掌で叩き付けていただろう。
「大変失礼なことを言っていると、自覚がないのですか?」
「えっ?」
「私はお断りしましたが、誰に言っても、お前は価値がないのだから、妻として置いてやるから、ただで働けと言っているようなものですよ?」
貴族としての価値はないかもしれないが、シルヴァルに馬鹿にされる覚えのないチェルシーは、不愉快な気持ちを露わにした。
「そのようなことは思っていない!君は面倒見がよく、皆にも慕われている存在だ。だから、君ならキャローズとも仲良くやっていけるのではないかと思ったんだ」
「それはフォスト様の勝手な押し付けでしょう?」
「押し付けるわけではない!勿論、君のことは妻として守る」
「何から守るというのです?泥棒ですか?暴漢ですか?失礼ですが、あまり強そうには見えませんけど?」
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「ですから、そのような話はありません」
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「それは、その時に考えればいいことです。フォスト様にご心配いただくようなことではありません」
「だが、その時になって困るのは君のはずだ」
万が一にも困るようなことになったとしても、結局はシルヴァルに心配されることではない。
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