【完結】永遠の愛にはイロドリを

野村にれ

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違和感

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「はい…ずっと最下位です。全部、買ってくださる方もいるんですけどね…やはり人気となると、偏ってしまいます」
「では、私は一通り、全員いただけるかな?」
「ありがとうございます」
「モデルがいて、描かれているのか?」

 似ていると言いたくなる気持ちも分かる、だがこれはモデルとは言えないだろうと、ジラードは判断していた。

 しかも、モデルにするならもっと美しい者はいるだろう。

「いいえ、モデルはおりません」
「そうか」
「似ている女性がいると噂になったことがあると、私も聞きましたが、マクスタラント様もお聞きになりましたか?」
「ああ、少しな。だが、違うな」
「皆様、そうおっしゃっていました」
「そうか」

 ジラードは絵姿を包んで貰い、さてシルヴァルに伝えるべきなのか、イーロンとは誰なのか探ってみようと考えた。

 放蕩息子でも公爵家の力を使えば、分かるには分かったが、不味いことをしてしまったと気付いた。しばらく、姿を消すことにした。

 まだ何も知らないキャローズは、あれだけ見られていたのだから、今度こそ連絡があるはずだと、心を躍らせていた。

 実はキャローズが名前すら知られていないことにも、気付いていなかった。ジラードも前回は自己紹介されていたが、既に覚えていなかった。

 実家で手紙を何度も確認をしたが、キャローズ宛てに何の誘いもなかった。

「どうして…あんなに見られていたのに。やっぱりドレスが駄目だったのかしら」

 フォスト侯爵邸に戻って、もしかしたら今なら作って貰えるかもしれないと、チェルシーにもう一度頼んでみようと思った。

 だが、邸に帰ると、既にチェルシーは帰った後であった。

 翌日、チェルシーを捕まえようと、キャローズは待ち構えていた。

「チェルシー様!」
「何ですか?」

 チェルシーは妊娠は間違いだったとは聞いており、多少落ち込んでいるのではないかと思っていたが、なぜか生き生きとしているキャローズに違和感を感じた。

「あの、やっぱり妹さんにドレスを頼んもらえませんか?」

 その言葉にはあ?と言わなかったことを、褒めて欲しいくらいであった。

「王家の夜会にでも参加するのですか?」
「え?」
「私は断ったのは覚えていますよね?参加されるのなら、王女殿下に頼んでみてはいかがですか?」
「王女殿下…」
「フォスト様にそう伝えたはずですけど?」
「でも、チェルシー様が頼んでくれれば」
「ですから、王女殿下たちから許可が下りれば、妹に伝えますよ」

 チェルシーはまた同じことを伝えることになるとは思っていなかったが、時間が経てば返答が変わると思っている様子のキャローズに、もう一度伝えることにした。

「…え」
「当然でしょう?皆、私よりも立場の上の方なのですから、許可が下りれば、私も頼むことが出来るというのは筋ではありませんか?」
「でも、家族なのに…」
「妹が家族なのにという意味で合っていますか?」

 まさかチェルシーと家族などと思っているわけはないだろうと思いながらも、一応確認をした。

「はい、そうです!妹さんなら、優遇してくれるのではありませんか」
「いくら家族でも妹はデザイナーですよ?王女殿下たちよりもあなたを優先しろと言うのですか?そんなことをしたら、どうなるか分かりませんか?」
「…どう?え?」

 キャローズはどうなるかなど分からず、王女殿下よりなどと言うつもりはなかったが、少し優先してくれた落雷に考えていた。

「あなたは王女殿下たちに横入りした、常識のない方だと言われることになりますよ?」
「…あ、え、そんな」
「あなたのご家族は優先してくださるのかもしれませんけど、いくら家族でも仕事の邪魔は出来ません。もういいかしら?」
「えっ…あ…」

 会話は成り立っていなかったが、チェルシーもさすがに面倒だったのである。
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