【完結】永遠の愛にはイロドリを

危惧

「ああ、だが私は最後だと思って会い、そのような気はない伝えている」
「その後も会いに来ているのか？」

　今日も実はキャローズはフォスト侯爵家を見張っていたが、シルヴァルの馬車だと分かったが、追い付けなかった。

「ああ、何度かあったようだ。手紙も送られて来たが、入れないようにして、手紙も受け取り拒否にしてある」
「そうか…ならば、心配し過ぎたか？」
「いや、殿下に迷惑を掛けることにはならないだろうか？」
「訴えるようなこともモデル事務所の社長に言ったようだが、受けるような弁護士はいないだろうとのことだった」

　ベアーラは危険だと脅してはおいたが、もしその気なら覚悟するようにも伝えたとあった。

「大丈夫か？少し攻撃的な性格になっていたようだった」
「殿下だと知れば、調子に乗る可能性もある」
「どういう意味だ？」

　仕事もないと言っていたキャローズが、殿下を相手に調子に乗るようなことがあるとは思えなかった。

「どうやら露出の激しい絵姿は止めて欲しいが、服を着ている絵姿の方は美しと思っているようで、自分がモデルだと認めて貰って、ファッションモデルとして活躍が出来るなどと考えてもいるそうだ」
「えっ？」
「あの絵姿は人気があるからな。確かに認めて貰えば、売り方としていい手らしいが、絵姿の方が美しいと反感を買う恐れもあるとのことだ。あくまで作者が認めればという話だ」
「そうなのか」

　シルヴァルは商売のことも、モデルのことも疎いために、そんな方法をするのかと素直に感心していた。

「あと、キャローズにモデルだと間違われたのは、絵姿のモデルという意味ではないかと聞いたが、そんなはずはないと全否定だったそうだ」
「それは私も思っていた」
「本人は認めないそうだ、だがおそらくそういうことなのだろう」
「そうか…それで、キャローズは自信をもってしまったのだろう。自信がないとは言わないが、キャローズは万人に目に留まり、褒められる方ではなかった」

　控えめなところがシルヴァルが好意を抱いたところだったが、少しずつ変わって言ったように思う。

「ああ…目に留まるのはチェルシー殿やメイジー殿のような令嬢だろう」
「そうなのか」
「ああ、無効になったとはいえ、結婚していたんだろう？」
「華やかだとは思うが、面倒見の良い令嬢であることが良いなと思ったんだ」

　見た目でチェルシーを選んだわけではない、未亡人になってしまったことがきっかけではあったが、学園の頃の彼女の人となりに、好感を持っていたからであった。

「だが、否定されたけどな…」
「キャローズの面倒を看させるつもりだったことがバレたんだろう」
「っ、どうして」

　そんな話はしていないのに、どうして知っているのかと驚いた。

「当然だろう？馬鹿にしているとしか思えない行動じゃないか。キャローズが、平民だからではないぞ？」
「ならば、どうして？」

　シルヴァルは伯爵令嬢と平民だからだと、考えていた。

「自分の恋人の面倒を、何の思い入れもない彼女がどうしてしなければならない？関わりもなかったんだろう？」
「それは…」
「お前は素直なのは良いところだが、相手の気持ちを考えていない。守るなんて思っていたのが、間違っていたんだからな」
「ああ、そうだな…謝罪したら、おままごとか、人形遊びだと言われたよ」
「上手い例えだな」

　チェルシーが怒っていたことがよく分かる例えである、終わることは分かっていて、契約結婚を受けたことも、騙す相手としてシルヴァルなら容易だっただろう。

　ジラードも結果を聞いて、そういうことだったのかと納得した。

「彼女は全部、分かっていたんだよ」

　キャローズがまた会いに来ることも、何も要らないと言ったのに、お金を払う気もないのに、ドレスを強請る様子から見えていたのだろう。