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疲労
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「何かありましたか?」
「少し、納期を長く取って貰うことは出来るかしら?」
「それは可能ですが、何かあったのですか」
「それが大変なのよ…まだ内緒にして欲しいのだけど、メイジーが妊娠して、もうすぐ生まれるの」
「結婚ですか?」
メイジーも忙しくしているが、結婚していてもおかしくない年である。
結婚ともなれば、他家は違うだろうが、トートレイ伯爵家では、忙しくなるのはチェルシーだけとなる。
「そう思うじゃない?そうしたら、結婚はしないって、まさか既婚者?って思ったら、そうではないのだけど…名前は言わないけど、やんごとない相手なのよ…しかも、結婚はしたくないって言って。相手も納得しているって、会ったのだけど、お姉様なら安心ですって…どうなっているのか」
メイジーとお相手が一緒に来て、結婚の報告かと思ったら、ひっくり返ることになった。それも両親ではなく、姉であるチェルシーというのがおかしいのだが、そこはトートレイ伯爵家であり、すんなり受け入れる。
しかも、お姉様のお話はメイジーからたっぷり聞いておりますと言われ、シスコンを発揮したのだろうと、チェルシーにも分かった。
「え?私が聞いてもよろしいのですか?」
チェルシーはほとんど前置きすらなく、話してしまっているが、ベイクは洩らすようなことをするつもりはないが、聞いても良かったのだろうかと、焦り始めていた。
「助けて欲しいのよ!子どもには会いに来るから、私に育てて欲しいって言うの!だから、色々いるでしょう?」
「えっ?助けるのは構いませんが、納得されたのですか?」
結婚しないどころか、子育てもしないとなれば、突かれているのも当然だろう。
「物凄く話し合ったのよ!でもメイジーは子育てなんて出来ないって、したことないし、絶対に向いてないって、私だって子どもはいないのに」
「でも、されていましたよね?子育て」
学園の頃から、まるで父のように、母のように、今日はメイジーの、今日はリサールのという言葉を、ベイクは死ぬほど聞いていた。
「そんなことないわ!授乳だってしていないし…あれ?」
「それ以外、全部、しているのではありませんか?」
授乳は確かに出来ないだろうが、話を聞く限り、乳母の様な生活をしており、出産と授乳以外は全て経験済みなのではないかと考えていた。
「あれ?本当ね」
ミルクを作ってあげたり、離乳食を作って食べさせたり、おしめを作って交換したり、寝かしつけたり、歩く練習をしたり、言葉を教えたり、勉強を教えてあげたり、学園に保護者として行ったり、お金を払ったり…思い出すだけでも、両親は何をしていたのだろうかという有様である。
「ほぼ、やっているわね」
「はい、したと言ってもいいと思います」
「そうみたいね…両親は何をしていたのかしら?」
「ご愁傷さまです」
何もしていないからこそ、チェルシーが子育てをしているのである。
「まあ、もう生まれてくるのは待ってくれないから、腹を括ったのだけど」
「ご協力は惜しみませんよ」
「ありがとう!本当に頼るわよ?でもね、両親が常時いなくて、辛い思いをさせるのではないの?って言ったのだけど」
「あっ」
長い付き合いのベイクは、気付いてしまった。
「気付いた?私も両親なんていなかったわって言われてしまって、お姉様に育てて欲しいって、私の生き甲斐を思ってくれたのかもしれないと、思うことにしたわ」
「それもあるかもしれませんね」
チェルシーは再婚する気が本当にない。毎夜、ロインに今日あったことを語り掛け、眠ることを日課にしているとも言っていた。
仕事もあり、不満はなくとも、このまま一生を過ごすより、張り合いにしては過激ではあるが、悪い話ではないのかもしれない。
「ええ、破天荒だけど、優しい子だから」
「はい」
特別優しいのはチェルシーだからだろうが、ベイクは野暮なことは言わない。
「少し、納期を長く取って貰うことは出来るかしら?」
「それは可能ですが、何かあったのですか」
「それが大変なのよ…まだ内緒にして欲しいのだけど、メイジーが妊娠して、もうすぐ生まれるの」
「結婚ですか?」
メイジーも忙しくしているが、結婚していてもおかしくない年である。
結婚ともなれば、他家は違うだろうが、トートレイ伯爵家では、忙しくなるのはチェルシーだけとなる。
「そう思うじゃない?そうしたら、結婚はしないって、まさか既婚者?って思ったら、そうではないのだけど…名前は言わないけど、やんごとない相手なのよ…しかも、結婚はしたくないって言って。相手も納得しているって、会ったのだけど、お姉様なら安心ですって…どうなっているのか」
メイジーとお相手が一緒に来て、結婚の報告かと思ったら、ひっくり返ることになった。それも両親ではなく、姉であるチェルシーというのがおかしいのだが、そこはトートレイ伯爵家であり、すんなり受け入れる。
しかも、お姉様のお話はメイジーからたっぷり聞いておりますと言われ、シスコンを発揮したのだろうと、チェルシーにも分かった。
「え?私が聞いてもよろしいのですか?」
チェルシーはほとんど前置きすらなく、話してしまっているが、ベイクは洩らすようなことをするつもりはないが、聞いても良かったのだろうかと、焦り始めていた。
「助けて欲しいのよ!子どもには会いに来るから、私に育てて欲しいって言うの!だから、色々いるでしょう?」
「えっ?助けるのは構いませんが、納得されたのですか?」
結婚しないどころか、子育てもしないとなれば、突かれているのも当然だろう。
「物凄く話し合ったのよ!でもメイジーは子育てなんて出来ないって、したことないし、絶対に向いてないって、私だって子どもはいないのに」
「でも、されていましたよね?子育て」
学園の頃から、まるで父のように、母のように、今日はメイジーの、今日はリサールのという言葉を、ベイクは死ぬほど聞いていた。
「そんなことないわ!授乳だってしていないし…あれ?」
「それ以外、全部、しているのではありませんか?」
授乳は確かに出来ないだろうが、話を聞く限り、乳母の様な生活をしており、出産と授乳以外は全て経験済みなのではないかと考えていた。
「あれ?本当ね」
ミルクを作ってあげたり、離乳食を作って食べさせたり、おしめを作って交換したり、寝かしつけたり、歩く練習をしたり、言葉を教えたり、勉強を教えてあげたり、学園に保護者として行ったり、お金を払ったり…思い出すだけでも、両親は何をしていたのだろうかという有様である。
「ほぼ、やっているわね」
「はい、したと言ってもいいと思います」
「そうみたいね…両親は何をしていたのかしら?」
「ご愁傷さまです」
何もしていないからこそ、チェルシーが子育てをしているのである。
「まあ、もう生まれてくるのは待ってくれないから、腹を括ったのだけど」
「ご協力は惜しみませんよ」
「ありがとう!本当に頼るわよ?でもね、両親が常時いなくて、辛い思いをさせるのではないの?って言ったのだけど」
「あっ」
長い付き合いのベイクは、気付いてしまった。
「気付いた?私も両親なんていなかったわって言われてしまって、お姉様に育てて欲しいって、私の生き甲斐を思ってくれたのかもしれないと、思うことにしたわ」
「それもあるかもしれませんね」
チェルシーは再婚する気が本当にない。毎夜、ロインに今日あったことを語り掛け、眠ることを日課にしているとも言っていた。
仕事もあり、不満はなくとも、このまま一生を過ごすより、張り合いにしては過激ではあるが、悪い話ではないのかもしれない。
「ええ、破天荒だけど、優しい子だから」
「はい」
特別優しいのはチェルシーだからだろうが、ベイクは野暮なことは言わない。
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