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ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません
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「それで、婚約を解消したいという話になったのだな?」
「ええ、婚約解消を考えなくてはならないかもしれないとおっしゃいましたわ」
ダリーツも殿下はそこまで言うつもりだったのかは分からないが、解消を匂わせたことは、間違ないということかと理解した。
「これからこちらの一筆を付けて、ぜーんぶ送り返します。そのために書いて貰ったんですもの、ふふっ」
ダリーツはようやくなぜこのような、意味もなさそうな一筆を書いて貰ったのかと思ったら、そういうことだったのかと理解し、一気に焦りを感じた。
「だが、それは…」
「じゃあ、お父様やります?」
「そ、それは…」
「王子殿下の婚約者なのですから、王子妃になられる方なのですからと言われて、押し付けられたようなものでしたが、だからこそ、きちんとやっておりました」
「それは分かっている」
ヨルレアンは母親に似て、非常に責任感が強い。
だからこそ、投げ出すこともなく、寝ずに行っていたのだろう。皆が頼りにしているのは勿論だが、手一杯という状態なのに、押し付けたのだろう。
「それが、ちょっと怒鳴っただけで、相応しくない?そんなもの、もうやるはずないでしょう!私はここ1週間、2~3時間寝れればいい方で、一昨日昨日と横になっただけで寝ておりませんの!」
「そんなに…」
心なしか目が血走っているヨルレアンの気迫に、ダリーツは慄いた。言ってもまだ1時間しか寝ていない、ヨルレアンはまだ沸点が低い。
いつもならもっと簡潔に説明が出来るところが、思ったまま口にしている。
「こんな自分だけが頑張っている、辛い目に遭っている、寝れないほど忙しいみたいな言い方は、したくありませんのよ!まるで、構って欲しいのか、自分に酔って自慢しているのかと思われては堪りませんからね」
「あっ、ああ…」
ヨルレアンがそんなことで気を引きたいなどと考えるはずがない、相当寝ていないことが堪えていると、ダリーツも感じていた。
「それでも人としての限界はございます!私はゆっくり何も考えず、寝たいのです!ご飯も美味しく落ち着いて食べたいのです!」
「あ、ああ…だが」
それでもヨルレアンが担っている作業を、投げ出されるのは困る。だが、ヨルレアンに押し付けているのも事実である。
しかも、寝る暇がないほどに、人としての生活が出来ていないほどに。
「それとも、お母様に言った方がいいかしら?」
その言葉にダリーツも、陛下と話をしなければならないと、覚悟を決めた。
「わ、分かった。陛下と話をしてみる。だから、送り返すのは…」
「じゃあ、お父様がやればいいわ。出来ないことではないのだから」
「…それは」
確かに出来ないとは言えないが、出来ないに等しい上に、やりたくない。頑張ろうと思っても、すぐに心が折れることは、経験済みである。
「よろしくお願いいたします。ご期待に沿えず、誠に申し訳ございませんとお伝えくださいませ。私はしばらく休みます」
「分かった」
ここまで限界の娘に、頑張ってくれなどとは言えず、承諾するしかなかった。
「よっしゃ!これで思う存分寝れるわ」
そう言いながら去って行った娘を見つめることしか出来ず、あの一筆は複製されて、混乱を招くことだろう。
陛下に連絡するよりも、あちらから慌てて連絡が来るのではないか?
それ以上に自分たちが押し付けた癖に、どういうことかと、王家と我が公爵家にも問い合わせが殺到するだろう。
むしろ、あのような状態でよく作業が出来たとすら思うが、ヨルレアンは秀才ではなく、天才の部類で、ゆえにこんなことになってしまっているのである。
「さて、凡人は対応に当たるしかないな」
ヨルレアンは複製されたエルドールの一筆と、預かっていた文献を全て送り返し、学園を休み、勝手な休暇に入った。
「どういうことだぁ!!」
青筋を立てて、怒り狂ったのはコーランド王国、ダズベルト国王陛下であった。
「ええ、婚約解消を考えなくてはならないかもしれないとおっしゃいましたわ」
ダリーツも殿下はそこまで言うつもりだったのかは分からないが、解消を匂わせたことは、間違ないということかと理解した。
「これからこちらの一筆を付けて、ぜーんぶ送り返します。そのために書いて貰ったんですもの、ふふっ」
ダリーツはようやくなぜこのような、意味もなさそうな一筆を書いて貰ったのかと思ったら、そういうことだったのかと理解し、一気に焦りを感じた。
「だが、それは…」
「じゃあ、お父様やります?」
「そ、それは…」
「王子殿下の婚約者なのですから、王子妃になられる方なのですからと言われて、押し付けられたようなものでしたが、だからこそ、きちんとやっておりました」
「それは分かっている」
ヨルレアンは母親に似て、非常に責任感が強い。
だからこそ、投げ出すこともなく、寝ずに行っていたのだろう。皆が頼りにしているのは勿論だが、手一杯という状態なのに、押し付けたのだろう。
「それが、ちょっと怒鳴っただけで、相応しくない?そんなもの、もうやるはずないでしょう!私はここ1週間、2~3時間寝れればいい方で、一昨日昨日と横になっただけで寝ておりませんの!」
「そんなに…」
心なしか目が血走っているヨルレアンの気迫に、ダリーツは慄いた。言ってもまだ1時間しか寝ていない、ヨルレアンはまだ沸点が低い。
いつもならもっと簡潔に説明が出来るところが、思ったまま口にしている。
「こんな自分だけが頑張っている、辛い目に遭っている、寝れないほど忙しいみたいな言い方は、したくありませんのよ!まるで、構って欲しいのか、自分に酔って自慢しているのかと思われては堪りませんからね」
「あっ、ああ…」
ヨルレアンがそんなことで気を引きたいなどと考えるはずがない、相当寝ていないことが堪えていると、ダリーツも感じていた。
「それでも人としての限界はございます!私はゆっくり何も考えず、寝たいのです!ご飯も美味しく落ち着いて食べたいのです!」
「あ、ああ…だが」
それでもヨルレアンが担っている作業を、投げ出されるのは困る。だが、ヨルレアンに押し付けているのも事実である。
しかも、寝る暇がないほどに、人としての生活が出来ていないほどに。
「それとも、お母様に言った方がいいかしら?」
その言葉にダリーツも、陛下と話をしなければならないと、覚悟を決めた。
「わ、分かった。陛下と話をしてみる。だから、送り返すのは…」
「じゃあ、お父様がやればいいわ。出来ないことではないのだから」
「…それは」
確かに出来ないとは言えないが、出来ないに等しい上に、やりたくない。頑張ろうと思っても、すぐに心が折れることは、経験済みである。
「よろしくお願いいたします。ご期待に沿えず、誠に申し訳ございませんとお伝えくださいませ。私はしばらく休みます」
「分かった」
ここまで限界の娘に、頑張ってくれなどとは言えず、承諾するしかなかった。
「よっしゃ!これで思う存分寝れるわ」
そう言いながら去って行った娘を見つめることしか出来ず、あの一筆は複製されて、混乱を招くことだろう。
陛下に連絡するよりも、あちらから慌てて連絡が来るのではないか?
それ以上に自分たちが押し付けた癖に、どういうことかと、王家と我が公爵家にも問い合わせが殺到するだろう。
むしろ、あのような状態でよく作業が出来たとすら思うが、ヨルレアンは秀才ではなく、天才の部類で、ゆえにこんなことになってしまっているのである。
「さて、凡人は対応に当たるしかないな」
ヨルレアンは複製されたエルドールの一筆と、預かっていた文献を全て送り返し、学園を休み、勝手な休暇に入った。
「どういうことだぁ!!」
青筋を立てて、怒り狂ったのはコーランド王国、ダズベルト国王陛下であった。
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