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不愉快な男爵令嬢
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「何だと?」
「まあ、不愉快だこと」
「その通りです!ザッハンデル殿とヨルレアンが真摯に向き合って、解読したことは明らかなのに」
エルドールは僅かに関わっただけではあったが、訪ねた際にザッハンデル邸で二人が作業をしていた部屋に通されていた。
そこには本や辞書、文献に画集などが積み重ねられているのを見て、何が手掛かりになるのか分からない、仮説を立てたり、軌道修正したり、調べ続ければいずれ分かるというものでもない。答えもなく、途方もない作業なのだと感じていた。
ゆえに、調べ物をしても、ヨルレアンに感謝されても、手伝ったと口にすることが非常に烏滸がましいと理解していた。
誰も信じないような嘘だったとしても、怒りを露わにしていた。
「カイロスがあの渡された意味の分からないヴァイオリンの資料で、手伝ったと思っているのではないかと言っていて」
「は?」
「馬鹿じゃないの!」
ダズベルトは酷く低い声が、オーバンは怒りに満ちた声を上げた。
「私が解読したわけでもないので、理解に苦しむのですが、なぜかそのように思っているのか。ただ自分を優秀だと思わせたくて、ただ嘘を付いているのか分かりませんが、気味が悪いです」
いくら考えても理解は出来なかったが、ただ優秀だと思われたくて、嘘がバレない相手にだけ嘘を付いたのかもしれないと考えていた。
「エルドールは、トドック男爵令嬢とは距離を取ったままなのよね?」
「勿論です、話すのは生徒会のことだけです。気味も悪いですが、ずっと腹を立てているのです」
ふんふんと怒りに滾るエルドールに、オーバンはこの様子ならと頭を巡らせた。ダズベルトはこういった問題は苦手であるために、怒りはあるが、オーバンの考えを聞こうと黙っていた。
「事実じゃないのだから、放って置けばいいのではないかしら?」
「ですが」
「不愉快であることは違いないけど、あなたは下手に関わってはいけないことは分かるわね?」
「それは、はい…」
エルドールはオマリーを問い詰めようかと思っていたが、また間違ってはいけない思い、両親に相談することにした。
「当たり前だけど解読には一切、関わっていないのだから、嘘であることは明らか。勘違いでしたでは済まないことよ?でも、怒っていいのはザッハンデル前伯爵、ヨルレアン嬢だと思うわ」
「…それはそうですね、二人が成し遂げたことですから」
「これは意を組んで避けたいけど、万が一の時はザッハンデル前伯爵とヨルレアン嬢に許可を得て、解読したことを発表させて貰いましょう」
取材などの煩わしさを避けることもあるが、まだ続きがあるはずだからと、二人は公にはしないで欲しいと申し出ていた。
「はい!」
そのような噂が出ることだけでも、腹立たしいが、エルドールが代わりに怒るのも、違うような気がして来ていた。
「もしもあなたを手伝ったことだった思い込んでいたとしても、トドック男爵令嬢がヨルレアン嬢に関わっていないことは明らかなのですから」
「そうですね」
「巷にもオールエドリレットの子孫だと言っている者がいるそうなのよ」
「え?」
モデルがオールエドリレットだと分かった今、先祖に歌い手がいたと聞いたことがある、似ていると言われていたと、子孫なのだと言い出す者がいるという。
『振り返る女』に似ているというのは、美人だという認識であったために、女性は特に嬉しい言葉であった。
「彼女が子どもを産んだような記録もないし、両親はおらず、きょうだいもいなかったのだから、あり得ないけど…昔のことですからね。ただ、実害が出れば別よ」
「詐欺とかですか?」
「ええ、想定していなかったわけではないけど、だからこそ情報を絞ったの」
解読されたオールエドリレットの情報は、全て公開されたわけではない。
「まあ、不愉快だこと」
「その通りです!ザッハンデル殿とヨルレアンが真摯に向き合って、解読したことは明らかなのに」
エルドールは僅かに関わっただけではあったが、訪ねた際にザッハンデル邸で二人が作業をしていた部屋に通されていた。
そこには本や辞書、文献に画集などが積み重ねられているのを見て、何が手掛かりになるのか分からない、仮説を立てたり、軌道修正したり、調べ続ければいずれ分かるというものでもない。答えもなく、途方もない作業なのだと感じていた。
ゆえに、調べ物をしても、ヨルレアンに感謝されても、手伝ったと口にすることが非常に烏滸がましいと理解していた。
誰も信じないような嘘だったとしても、怒りを露わにしていた。
「カイロスがあの渡された意味の分からないヴァイオリンの資料で、手伝ったと思っているのではないかと言っていて」
「は?」
「馬鹿じゃないの!」
ダズベルトは酷く低い声が、オーバンは怒りに満ちた声を上げた。
「私が解読したわけでもないので、理解に苦しむのですが、なぜかそのように思っているのか。ただ自分を優秀だと思わせたくて、ただ嘘を付いているのか分かりませんが、気味が悪いです」
いくら考えても理解は出来なかったが、ただ優秀だと思われたくて、嘘がバレない相手にだけ嘘を付いたのかもしれないと考えていた。
「エルドールは、トドック男爵令嬢とは距離を取ったままなのよね?」
「勿論です、話すのは生徒会のことだけです。気味も悪いですが、ずっと腹を立てているのです」
ふんふんと怒りに滾るエルドールに、オーバンはこの様子ならと頭を巡らせた。ダズベルトはこういった問題は苦手であるために、怒りはあるが、オーバンの考えを聞こうと黙っていた。
「事実じゃないのだから、放って置けばいいのではないかしら?」
「ですが」
「不愉快であることは違いないけど、あなたは下手に関わってはいけないことは分かるわね?」
「それは、はい…」
エルドールはオマリーを問い詰めようかと思っていたが、また間違ってはいけない思い、両親に相談することにした。
「当たり前だけど解読には一切、関わっていないのだから、嘘であることは明らか。勘違いでしたでは済まないことよ?でも、怒っていいのはザッハンデル前伯爵、ヨルレアン嬢だと思うわ」
「…それはそうですね、二人が成し遂げたことですから」
「これは意を組んで避けたいけど、万が一の時はザッハンデル前伯爵とヨルレアン嬢に許可を得て、解読したことを発表させて貰いましょう」
取材などの煩わしさを避けることもあるが、まだ続きがあるはずだからと、二人は公にはしないで欲しいと申し出ていた。
「はい!」
そのような噂が出ることだけでも、腹立たしいが、エルドールが代わりに怒るのも、違うような気がして来ていた。
「もしもあなたを手伝ったことだった思い込んでいたとしても、トドック男爵令嬢がヨルレアン嬢に関わっていないことは明らかなのですから」
「そうですね」
「巷にもオールエドリレットの子孫だと言っている者がいるそうなのよ」
「え?」
モデルがオールエドリレットだと分かった今、先祖に歌い手がいたと聞いたことがある、似ていると言われていたと、子孫なのだと言い出す者がいるという。
『振り返る女』に似ているというのは、美人だという認識であったために、女性は特に嬉しい言葉であった。
「彼女が子どもを産んだような記録もないし、両親はおらず、きょうだいもいなかったのだから、あり得ないけど…昔のことですからね。ただ、実害が出れば別よ」
「詐欺とかですか?」
「ええ、想定していなかったわけではないけど、だからこそ情報を絞ったの」
解読されたオールエドリレットの情報は、全て公開されたわけではない。
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