【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

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復讐5

「風蓮さんも光峯さんも、止めなかった。光峯さんはこんな紛い物、消え失せた方がいいと特に煽っていたわね」
「っ」

 光峯は記憶にないことだったが、確かに涼希に対して今、そう思っていたことから、心当たりがあった。

「そして、その時も、涼ちゃんは笑っていたわ。何で笑えたの?答えてくれない?私、あの時の大口を開けて、笑うあなたが忘れられないのよ」
「そ、そ、れ、は……」
「楽しかったのでしょう?それが本性なのよね、ああ怖い」

 涼希は詠の言う通りに記憶は蘇っていたが、全て事実であることも苦しいほど理解していたために、何もかも答えられるるような精神状態ではなく、何とか言葉は出たが、それ以上は過呼吸になる寸前であった。

「でも、私も狂っていたわ。私は天宮さんを殺そうとしたの、でも逆に殺されたの……」
「英仁様に殺された、のですか?」
「そんなッ!」

 そんなことをするはずがないと言わんばかりに英仁は声を上げたが、光峯はこれまでの話を聞く限り、事実だろうことは察していた。

「天宮さんに滅多刺しにされたの。でも、どうでも良かったわ、むしろ死ねて良かったの。それなのになかったことになって、絶望したわ」

 詠にとって、また同じことが繰り返される方が絶望であった。

「でも夫と子どもに会える、少しでも一緒にいれることだけで、毎日が本当に楽しかったわ……本来、幸せとはこういうものだったの」

 詠は愛する桐人と頼の顔を思い出し、少し穏やかな気持ちになった。

「涼ちゃんも幸せだったのでしょう?僅かでも良かったわよね?私、良いことしたかもしれないわね」

 なかったものより、あったものの方が突き落とす時に効果的でも、僅かでも幸せなら良いことをした気分であった。

「感謝してくれてもいいのよ?」
「感謝だなんて、だったら……」

 美里はこのような状況で感謝などという詠に、要らないのなら涼希が欲しがっているのだから、くれればいいと、そういう話ではないのに、考えてしまっていた。

「何?だったらずっと、涼ちゃんを運命の相手にしてくれたらと?」
「……そうよ、あなたは夫と子どもがいるじゃない」
「私もそうしたかったわ、でもこれが涼ちゃんが受ける報いだから、母親としてしっかり支えてあげればいいじゃない」

 詠は同じことをしただけで、責められることなどない。

「でも、これから大変よね。社会的にも涼ちゃんは、妖を騙したことになるの。私が紛い物とされたように、批判されることになるでしょうね。もしかしたら、慰謝料だって請求されるかもね。涼ちゃんいくら使ったの?全部返さなきゃ」

 詠は歯を見せて笑い、可笑しくてたまらない様子であった。

「税理士に聞けば、いくら使ったか分かるわ。請求書を待つといいわ」
「……そんな」

 お金のことで絶望したのは、美里であった。

「私は贅沢はしなかったけど、オシャレな涼ちゃんは贅沢をしたのでしょう?」

 服も靴もバックも、化粧品も、食事も最高級品を惜しみなく購入しており、田生家で支払えるレベルではない。だが、涼希はそれどころではなかった。

「私でも勝手なプレゼントや家族からの要求、すべて払ってもらうと言われたもの。きっと同じようになるでしょう?使ったんだから、返してしっかり詫びないとね」

 実際に請求されるかどうかなどはどうでもいいが、妖たちは涼希を恨むことになるだろう。いくらお金があっても、要求して苦しめるような考えを持っているだろう。

「さて、皆様は帰って頂戴。ここからは妖・さ・まとの話になるわ」
「っな、詠、まだ話は終わっていない」
「記憶を戻して、文句を言えなくしてあげるから、呪いのことは涼ちゃんから聞いたらいいわ」

 これから涼希の地獄は始まるだろう。

 詠はまず、郁と拓実の前に立ち、ごめんなさいねと言いながら掌を合わせた。

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