病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
133 / 206

流行り病(プレメルラ王国11)

しおりを挟む
「あのドレスはお前の体形には合わないだろう。いい加減にしなさい」
「調整すれば大丈夫です」
「あれは大人の女性が着るもので、子どもが着る様なものではないそうだ」

 ペイリーのようなメリハリのある体形という意味だが、そういう言い方では良くないだろうという判断であった。

「そんなことないわ、私は大人っぽいって言われるのよ」

 何の凹凸もない体に、どこがだと思ったが、モリーのドレスがここにあっても盗まれることはなかったが、心情的にケリーに預けていて良かったすら思っていた。

「別邸から引っ越してもらおうか、約束だからな」
「ごめんなさい!」

 さすがのマキュレアリリージュも、不味いと思い、頭を下げて謝った。

「ドレスを盗む気だったのか?」
「いえ、異母姉様にお願いをしようと思って……」
「今回は許すが、二度とモリーにも関わるな。次はない。いいな?」
「はい……」

 マキュレアリリージュはオーリンによって、別邸に連れて行かれて、コアナにも説明をして、二度目はないと言われることになった。

 コアナはマキュレアリリージュを怒鳴り付けた。

「何てことをしてくれたの!引っ越しになったら、学園にも通えないわよ!」
「そんな!」
「当然でしょう?王都にいれるわけがないじゃない!ドレスなんて何でもいいでしょう!もういい加減にして」
「でも、ドレスをディナーパーティーに必要なの!」

 ディナーパーティーに着て来て欲しい、着て行くと言ってしまったために、何も分かっていないと苛立った。

「別のドレスで行けばいいじゃない」
「あのドレスでって言われたの……」
「はあ?何それ!だったら、行くのを止めなさい。体調が悪いと休めばいいわ、ブレフォス様に怒らせないで」

 コアナはカリーナやモリーにライバル心を燃やしてはいるが、ブレフォスを怒らせないことが前提であり、怒らせてまで押し通す気はない。

「でも、困るのよ!」
「困るのは私たちだって言っているでしょう!」

 いい加減にしてと言いながら、コアナは部屋に戻って行ってしまい、マキュレアリリージュはどうしたらいいのかと、地団太を踏んだ。

 だが、そんなことをしてもどうにもならない。

 しかも、ドレスはここにはないと言われ、学園にあるのかもしれないが、高等部に入れてはもらえない。モリーを捕まえてドレスを渡してもらうのが一番だが、コアナの言うように体調が悪いと言うしかない。

 まだ戻っていないモリー会えるはずもなく、庭をうろうろしたりもしていたが、帰ってきたところを捕まえても、周りに誰かいるので、上手くいくはずもない。

 結局、どうにもならず、マキュレアリリージュは二日前から学園を休んで、クルージ伯爵令嬢には熱が出たと手紙を出して、断るしかなかった。

 折角、誘ってくれたのに中等部と高等部で離れたことで、学園で会えなくなったせいだと、モリーを恨むことになった。

 そんなこととは知らないモリーは、パークスラ王国でレオーラ王女にデザインを選んでもらい、既にドレスを作っており、完成間近となっていた。

 流行り病も重症化している患者にはモリーが直接、治癒術を行う予定だったが、重症化していても、モリーの咳止めで落ち着くことになった。

 残念ながら元々あった持病の合併症で亡くなった方はいたが、最小限に留められたと思われる。

 そして、流行り病はEP71という名前の感染症となり、治療薬も完成した。

 そろそろ、入出国禁止も解除される話し合いも行われ始めている。

「モリー様、本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いいえ、少しでもお役に立てたのならば、良かったです」

 レオーラとジーアは働きっぱなしというわけではないが、本当に休みなく働くモリーに感謝していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

顔がタイプじゃないからと、結婚を引き延ばされた本当の理由

翠月るるな
恋愛
「顔が……好みじゃないんだ!!」  婚約して早一年が経とうとしている。いい加減、周りからの期待もあって結婚式はいつにするのかと聞いたら、この回答。  セシリアは唖然としてしまう。  トドメのように彼は続けた。 「結婚はもう少し考えさせてくれないかな? ほら、まだ他の選択肢が出てくるかもしれないし」  この上なく失礼なその言葉に彼女はその場から身を翻し、駆け出した。  そのまま婚約解消になるものと覚悟し、新しい相手を探すために舞踏会に行くことに。  しかし、そこでの出会いから思いもよらない方向へ進み────。  顔が気に入らないのに、無為に結婚を引き延ばした本当の理由を知ることになる。

執着のなさそうだった男と別れて、よりを戻すだけの話。

椎茸
恋愛
伯爵ユリアナは、学園イチ人気の侯爵令息レオポルドとお付き合いをしていた。しかし、次第に、レオポルドが周囲に平等に優しいところに思うことができて、別れを決断する。 ユリアナはあっさりと別れが成立するものと思っていたが、どうやらレオポルドの様子が変で…?

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

待ってください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。 毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。 だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。 一枚の離婚届を机の上に置いて。 ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。 ※短編連作 ※この話はフィクションです。事実や現実とは異なります。

七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。

木山楽斗
恋愛
幼少期から魔法使いとしての才覚を見せていたラムーナは、王国における魔法使い最高峰の役職である聖女に就任するはずだった。 しかし、王国が聖女に選んだのは第一王女であるロメリアであった。彼女は父親である国王から溺愛されており、親の七光りで聖女に就任したのである。 ラムーナは、そんなロメリアを支える聖女補佐を任せられた。それは実質的に聖女としての役割を彼女が担うということだった。ロメリアには魔法使いの才能などまったくなかったのである。 色々と腑に落ちないラムーナだったが、それでも好待遇ではあったためその話を受け入れた。補佐として聖女を支えていこう。彼女はそのように考えていたのだ。 だが、彼女はその考えをすぐに改めることになった。なぜなら、聖女となったロメリアはとてもわがままな女性だったからである。 彼女は、才覚がまったくないにも関わらず上から目線でラムーナに命令してきた。ラムーナに支えられなければ何もできないはずなのに、ロメリアはとても偉そうだったのだ。 そんな彼女の態度に辟易としたラムーナは、聖女補佐の役目を下りることにした。王国側は特に彼女を止めることもなかった。ラムーナの代わりはいくらでもいると考えていたからである。 しかし彼女が去ったことによって、王国は未曽有の危機に晒されることになった。聖女補佐としてのラムーナは、とても有能な人間だったのだ。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

処理中です...