病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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直談4

「オルトには会ったことは?」
「一方的に見たことがあるだけでございます」
「婚約したいと思うか?」
「っ」

 モリーにとって記憶にある二人の婚約者。

 グラスかオルトかと言われれば、絶対にグラスを選ぶほど、オルトとの婚約は避けたいことであった。

「ハッキリ言ってくれていい」
「恐れながら、なりたくありません」
「そうか……正直、私も二人は合わないと思う。モリー嬢も何か理由があるのか?何を言われても、黙っておくから心配しなくていい」

 モリーも三回目のことを話すわけにはいかないが、レルスに伝えておくのは大事かもしれないと思い、伝えておくことにした。

「上昇志向の強い方とお見受けしますので、黙っているような私とは会わないだろうと思っただけでございます」
「そ、うか」
「なぜ、そう思われるんですか?」

 コーレイドはそのように思ったこともなかったために、思わず声を上げた。

「私は直接話をしたことはありませんので、お話を聞く限り、そうではないかと思っただけです」
「そうですか……」
「コーレイドはそう思ったことがないようでな」

 コーレイドは貴重な鑑定ができる魔術師であるために、利用ができそうな相手ではあるが、それは自分よりも弱い立場の人間にしか高圧的な態度は取りませんからねとは言えず、微笑んで誤魔化すしかなった。

 だが、親しくもないはずのモリーとオルトが、レルスには合わないと思ってくれることは、無理矢理に婚約者にということは阻止してくれる可能性を願った。

「あの、他に同じの世代に治癒術を使える方はいないのですか?」
「コーレイド、いるのか?」
「今のところおりません」

 モリーも先のことは戻る前までのことしか、分からない上に、治癒術を使える方は魔術師の中にはいたのかもしれないが、教会にはいなかったことしか分からない。

 どう転んでも、王子妃がピッタリだったのだろう。

「黙っていることはできるが、ずっとは無理だと思って欲しい」
「はい、私も覚悟はしておりますので、王太子殿下が明かさなければならないと判断されたのであれば、そうなさってください」
「いいのか?」
「はい、ただ私も父にだけでも話はしておいた方がいいかと思いますので、一報をいただけると助かります」
「そうだな、約束する。聞きづらいが、お母上にはいいのか?」
「母とは、顔を合わせれば挨拶はしますが、それだけです。興味もないと思いますので、必要なら父が話すでしょう」
「そうか……」

 全く会わないというわけではないので、稀に遭遇することはあり、挨拶をするが、わざと不満な顔をして無視するというのが恒例である。

 まるで仇のような態度を取られるが、正直、関わって来られるよりは楽なのでこのままでいいと考えている。

 ロレインも当然のようにカリーナが、モリーについて吹き込んでいるのだろうと、挨拶もしなければ、目も合わせようともしない。

 これまでも姉と弟として親しくしていたこともないために、寂しいという気持ちを持てないほどである。

「恐れながら、私も質問をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ」
「王太子殿下、王子殿下の婚約は決まりそうということはないのでしょうか?」
「決まっていない。オルトも話は聞いていない」

 モリーとしては王太子妃はあり得ないために、レルスよりもオルトに婚約が決まって欲しいと願っていた。

「だが、結局はそうだよな、婚約が決まればいい話なのか……分かった、両親に話をしてみようと思う」

 レルスはモリーのことは明かさずに、両親に話をしようと覚悟を決めた。

「またテイズの名前で連絡を取らせてもらうことになると思う」
「承知いたしました」

 その日は解散になったが、ペイリーはモリーに聞きたいことが沢山あった。

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