病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
171 / 332

候補者

 他国の王女も誰でもいいわけではなく、国内でも後ろ盾として強く、本人もいくら優秀でも、人柄で脱落していったのである。

 人は誰しも、欠点はあることも分かっているが、ケリーには不愉快が勝る令嬢ばかりであった。

 ある意味、レオーラが早々に決まったのは、礼儀正しさと王女という点もあり、ケリーのお眼鏡に叶った存在であったためである。

「オルトはどうなんですか?」
「オルトは、あなたが決まってからと思っていたから」
「オルトは何か言っていませんか?」
「他国の王女を希望しているわ」
「やはり、そうですか」
「私としてはあの子は国内でいいと思うのだけど」

 国内の令嬢で良いと思える子がいないという理由であったが、ケリーは今はまだ早いのかもしれないくらいにしか思っていなかった。

「オルトは王太子になりたいのですよ」
「っん」
「えっ?どういうことなの?あなた、知っていたの?」
「自分も優秀なのにと思っているとは、感じていた……ケリーにも話したよな?」
「でも、あなたまだ子どもの言うことだからって」

 ファリスは幼いからと本気に考えなかったのもあるが、レルスを王太子と定めていたために、考えないようにしていたのか。

「私は妹しかいなかったからな、気持ちを分かってはあげられないが……だから、王女を望んでいると、レルスは考えているのだろう?」
「そう思います」
「レルスはどう思っているの?」
「教育も受けているのですから、私はオルトが本気ならいいと思っています」
「んー」

 ファリスもあり得ない、王太子はレルスだと言うことではないとは考えている。

 第一王子で問題がないのなら、王太子にすることは当然で、間違いだったと思ったこともない。

 だが、オルトが王太子になりたいと考えたままで、レルスがいいと言っているのなら、オルトにした方が燻った思いを残すより良いのかもしれない。

「オルトにも意向を聞くことも必要ではあるが、もし希望したとしても、王太子に相応しいかどうかも検討しなくてはならない」
「はい、それは理解しております」
「柔軟な対応ができるのはレルスで、決断力があるのはオルトだと、私は思っている。一人しかなれないのだから、正当に争うことは悪いことではないだろうが……」

 相手を蹴落とすようなことをするなら問題ではあるが、お互いが高め合うのではあれば悪いことではない。

 こうなると、王太子は定めない方が良かったかと、ファリスは考え込んだ。

 その様子に気付いたケリーも、婚約者の話かと思えば、王太子の話になるとは思わなかった。

「オルトをスペアだなんてことは思っていないけど、でもね……」
「オルトに王女の婚約者は可能なのですか?誰かいらっしゃいますか?」
「率先して探してはいませんでしたからね」

 オルトはレルスよりも三歳年下であるために、レルスの相手とは年下ならいいが、年齢の範囲が少し差がある。

 丁度いい相手がいれば違ったかもしれないが、思い浮かばなかった。

「レルスはどうするつもりなんだ?」
「それは婿入りすべきなのか、王家に残るかによるかと思います」
「まあ、それはそうだな……」

 考えることは必要ではあるが、二人とも婚約者がいない状態の今の方がいいのは確かである。

「もし、オルトが王太子に問題なく、なりたいと言うことだったら、一度、王太子の指名は白紙にした方がいいかもしれないな」
「そうですね……」
「レルスの気持ちは分かった、オルトにも話をしてみよう。ただ、まだ王太子ではなくなるなどと言う話は出すな」
「承知しております」

 まずは白紙というのは、これからのために望ましい案だと思った。

「婚約のことは、また話そうではないか」
「分かりました」

 レルスが退出すると、ファリスとケリーは顔を見合わせて、ふぅと息を吐いて、首を捻って唸った。

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。 番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

花嫁は忘れたい

基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。 結婚を控えた身。 だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。 政略結婚なので夫となる人に愛情はない。 結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。 絶望しか見えない結婚生活だ。 愛した男を思えば逃げ出したくなる。 だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。 愛した彼を忘れさせてほしい。 レイアはそう願った。 完結済。 番外アップ済。

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。