病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
250 / 332

誕生祭5

「お声が少し大きいようですよ、落ち着きませんか」
「っな」

 マレアとリークレアも婚約者候補というライバル関係で、親しいわけではないために、さらにリークレアは苛立つことになった。

 マレアはまたサリリーナ、ミチリーアと一緒にいた。

「ちょっと、熱くなってしまっただけよ」
「まあ、そうでしたか。お二人は同級生ですものね」
「ええ、そうよ。だから話をしていただけよ。そうよね?」
「ええ、そうですわね」

 リークレアがキャンキャン鳴き、噛み付いていただけではあるが、話をしていたことは事実である。

 そして、モリーがマレアに会うのは、あの呼び出された以来であった。

「オブレオサジュール公爵令嬢は、お久し振りですね」
「そうでございますね」
「ご連絡があるかと考えていたのですけど、お気持ちは変わりませんか?」

 リークレアに加えて、マレアもかと思ったが、近付いて来るならどちらかではないかと思っていたために、驚くことはない。

「ええ、変わりませんわね。ダンサム公爵令嬢にお話はされたのですか?」
「っえ」
「有益だとおっしゃっていたので、同級生で同じ公爵令嬢ですから」
「何の話ですの?」

 モリーはマレアに向かって、話したらいかがですかと言うように、にっこりと微笑んでみた。

「いいえ」
「私よりもダンサム公爵令嬢の方が関わりがあるのではないかと思うのですけど」

 どちらが長い付き合いかと言えば、明らかにリークレアだろう。

「何ですの?」
「このようなところで話すようなことではありませんわ」
「何よ、言いなさいよ」

 モリーはリークレアならば、直接問いただすと思い、わざと伝えたのである。おそらくリークレアはモリーを煽り、揉めている二人を自分が取りなせば、評価が上がるくらいに思ってやって来たのだろう。

 リークレアは睨み付けていたが、マレアは口を開こうとはしなかった。

「そうですね、内容は分かりませんが、私たち三人の共通点と言えば……結婚していないということくらいでしょうか?」
「あなた、卒業して随分経つのに、まだ結婚していないの?」

 リークレアもマレアが結婚をしていないことは知っているが、わざと馬鹿にしたように言い放った。だが、マレアは気持ちのまま怒ったりはしない。

「ご縁がないだけですわ」
「まさか、まだ王太子妃に選ばれると思っているのではないの?年齢を考えた方がいいわ」

 二歳しか違わないが、それでも高位貴族で、特別な理由がないマレアは結婚していて当然の年齢ではある。

 マレアはそれもこれも王太子が白紙になったからだと思っているのだろうが、顔を歪ませたら負けだと思ったのか、表情は変えなかった。

「もしかして、お話って王太子妃のことだったのですか?」
「やっぱりまだ狙っているの?図々しいとは思わないの?」

 リークレアは思ったままを口にするために、マレアは苦手であった。ゆえにマレアはそっとサリリーナに視線をやった。

「恐れながら、図々しくなどありません」
「どうして?もう二十歳でしょう?」
「年齢よりも中身ではありませんか、マレア様には相応しい相手は限られますから」

 モリーは相応しい相手があなたの兄じゃないの?と、笑いそうになったが、唇を噛んで堪えた。

「例えば誰だって言うの?それが王太子妃だって言うの?それって、ゼアンラーク侯爵令嬢が決めることなの?随分、偉い方なのね?」
「サリリーナ、私はそんな立場ではないわ」
「失礼しました」

 モリーはこんな風に使っているのだろうなと思う反面、それでその人の兄と婚約するなんて、お互いどんな気分だったのだろうかと考えていた。

「オブレオサジュール公爵令嬢も王太子妃になるつもりではないわよね?」
「いいえ、私は王太子妃にはなりませんよ」

 その言葉に視線を動かしたのは、マレアとサリリーナ、ミチリーアの方であった。三人の目が一斉にこちらを向き、やはり王太子妃のことだったと言っているようなものであった。

あなたにおすすめの小説

花嫁は忘れたい

基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。 結婚を控えた身。 だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。 政略結婚なので夫となる人に愛情はない。 結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。 絶望しか見えない結婚生活だ。 愛した男を思えば逃げ出したくなる。 だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。 愛した彼を忘れさせてほしい。 レイアはそう願った。 完結済。 番外アップ済。

全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ

霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」 ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。 でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━ これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。 ※なろう様で投稿済みの作品です。 ※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!