病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
258 / 332

拘束

「始めは成績が上がったモリーに焦ったのだろう?だから忠告、動揺させるために危害を加えようとした」

 始まりは成績が上がったことだったが、魔術までも使えると知って、さらに焦ったと思われた。

「違います!これは誤解です!お父様っ!」
「事実ではないのだよな?」

 ゼアンラーク侯爵は、淡々と説明されるが、事実なのか。事実ではないとしても、証拠がある口振りにどう振舞えばいいのか判断し兼ねていた。

 マレアの表情を見ても、誤解があるのかもしれないが、レルス殿下に固執していたことは知っていたために、そのせいではないかとも感じていた。

 だが、このままではゼアンラーク侯爵家としても、問題でしかない。

「そうです!私がそのようなことをするはずないではありませんか」
「ああ、分かっている……」

 娘を信じたい気持ちはあるが、盲目的に信じられない気持ちになっていた。

「ならば、魔術のこと誰から聞いた?」
「それは、覚えていないのです」
「では、モリーの水魔法が使えることを知っていた者はいるか?手を上げてくれ」

 ブレフォス、ペイリー、コーレイドを含む数人の魔術師、数人の騎士たちが手を上げた。実行犯を捕まえた際に、居合わせた者たちである。

「その中でゼアンラーク侯爵令嬢に伝えた者はいるか?伝えていない者は手を下げてくれ」

 すると、皆、手を下げた。

「モリーの治癒術ではなく、魔術も一部しか知らない。ゼアンラーク侯爵令嬢に伝えた者はいない。誰に聞いたのか、説明してくれ」
「……忘れましたが、聞いたのです」

 マレアは水魔法が使えると聞いて、知らない振りをしなければならないと思いながらも、自分が使えないことで、さらに焦りを感じていたために、思わず口にしてしまったのである。

 そして、知っている人は知っているのだろうと考え、覚えていないと、うやむやにすればどうにかなるとも考えていた。

 抜かりない令嬢に見えていたが、実は詰めが甘い。それがマレアであった。

「では、先程の中に伝えた者がいるのだな?」
「っえ、いえ」

 マレアも全員は把握できなかったが、接点がある人間はいそうになかったために、否定するしかなかった。

「では思い出しておくように。まあ、時間は沢山ある」
「え……それは」
「これから取り調べとなる」
「そんな、お父様……」

 マレアはこの場で助けを求められるのは父親しかいなかったが、ゼアンラーク侯爵もこのような場でファリスが何もなくここまで言うとは思えない。

「否定したいのなら、しっかりすればいい。こちらには証拠があるのだから。連れて行け。ゼアンラーク侯爵も付いて行くといい」
「はい……」
「待ってください!誤解です!このような場で、私がこのようなことになれば、事実ではないのに、問題になります!」

 マレアはこのままでは潔白が証明されても、騒ぎになったことで、これから自分がどうなるのか。ここできちんと立ち回らなくては終わってしまうと、どうにか悪あがきをするしかなかった。

「事実だろう?」
「っ、ですが、オブレオサジュール公爵令嬢は、レルス殿下の婚約者に相応しくありません!」
「レルス?王太子妃のことを言っていたのではないのか?」
「あ……の」

 レルスとは口にしていなかったために口籠ったが、きちんと伝えないといけないと思い叫んだ。

「王子殿下たちの婚約者候補も、家のことで外されていたではありませんか!」
「そなたには関係ないことだろう!」

 いよいよ怒鳴られて、マレアは引っ張って連れて行かれることになった。茫然と様子を見ていた侯爵夫人も、さすがに残ることはできず、慌ててついて行った。

「騒がせたな。今日、発表する気はなかったが、さすがに目に余った。詳しいことは、また発表する」
「陛下、おめでたい席で申し訳ありませんが、関わりのあることですので、少しお時間をいただいてもよろしいですか」
「構わない」

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

騎士の妻ではいられない

Rj
恋愛
騎士の娘として育ったリンダは騎士とは結婚しないと決めていた。しかし幼馴染みで騎士のイーサンと結婚したリンダ。結婚した日に新郎は非常召集され、新婦のリンダは結婚を祝う宴に一人残された。二年目の結婚記念日に戻らない夫を待つリンダはもう騎士の妻ではいられないと心を決める。 全23話。 2024/1/29 全体的な加筆修正をしました。話の内容に変わりはありません。 イーサンが主人公の続編『騎士の妻でいてほしい 』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/96163257/36727666)があります。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。