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ゼアンラーク侯爵夫妻2
「いいえ、知りません」
「モリー・オブレオサジュール公爵令嬢のことは何か聞いていないか?」
「それは……」
ハーミラは眉を下げて、困惑した表情をした。
「何か言っていたか?」
「成績が上がったとは聞いておりました」
「成績が?」
夫妻の子どもであるフレオとマレアは高等部を卒業し、弟であるカートは中等部であるために、モリーの成績など知りようもなかった。
「はい、前は成績上位者に入っていなかったのに、高等部の三年生になって急に入るようになったと」
「マレアはなんて言っていた?」
「王子殿下の婚約者を狙っているのかと言ってはおりましたが、あの子があのように言うのはいつものことですので……」
マレアは自分こそがレルス王太子殿下に相応しいと思い、一番近い存在だと話していた。ゆえにレルス殿下に媚びを売る令嬢や、近付く令嬢を非難することはいつものことだった。
「焦ったのだろうと言われていたな……」
「それは、公爵令嬢ですから」
「オブレオサジュール公爵令嬢は、これまで手を抜いていたが、レルス殿下の婚約者が内々に決まって、本気を出しただけではないか?」
「そんな、卑怯ではありませんか。マレアはずっと努力をして来たのに」
「そうだとしても、元より治癒術がある。昨日、今日、ましてや三年生になってから分かったことではない。あの子は魔術すら使えない。条件だけでも、天秤に乗せるまでもないだろう」
まずは魔力があること、魔術が使えること、そして治癒術が使えること。どれも、マレアにはなかったものである。
しかも、モリーは水魔法である。火魔法を持つレルス殿下とは相性もいいだろう。
「そんなことありませんわ!マレアはレルス殿下と一番親しかったのですよ」
「本当にそうか?話しているのを聞いたことがあるが、レルス殿下は皆と同じような様子だったぞ?」
「レルス殿下は弁えてらしたからですよ」
「今さら何を言っても、あの子がレルス殿下の婚約者になることはない」
既に決まってしまったのだから、誤解だと分かったとしても、覆ることはない。
「そんな……誤解だと証明されれば、まだ」
「私もお前もマレアが王太子妃になれるようにと思っていたが、もう無理なのだと理解しなさい」
「ですが」
「これからは家を守る行動をしなければならない。マレアもいい大人だ、罪を犯したのならば、自分で責任を取らなければならない」
「見捨てるのですか!」
ハーミラはオリルが結局はどうにかしてくれるものだと思っていた。
「依頼をしていたら、どうするんだ?」
「あの子がそんなことをするとは思えません……」
「だが、あの子はレルス殿下に執着していただろう?」
「でも、それは婚約者候補だったのですから」
オリルもマレアが一番王太子妃に近いと思っていた。だから、白紙になってからも国王陛下にも幾度となく、どうなっているかと売り込んで来た。
魔術は使えないが、使えなくても王太子妃になれないわけではない。
同級生で、婚約者候補で、親しいとまでは思ってはいなかったが、嫌われてはいないと思っていた。
それなのに、婚約者が決まり、婚約できていたとしても王太子妃ではなかったと一瞬考えたが、そのような依頼をしていたのなら、自分のこれまでの行為も踏みにじることであった。
ゼアンラーク侯爵邸に到着し、オリルはハーミラに告げた。
「これからは冷静に行動するように」
馬車から降りると、待っていたのはハーミラの生家であるキーノド伯爵家の馬車であった。オリルに気付いた、ハーミラの兄で、現伯爵であるコールエが降りて来た。
「お話を確認して置きたく、待っておりました」
「そうか」
「お兄様」
「邸で話そう」
オリルはコールエを促して邸に入り、ハーミラも慌ててついて行った。応接室で執事に誰も通すなと言い、三人だけになった。
「モリー・オブレオサジュール公爵令嬢のことは何か聞いていないか?」
「それは……」
ハーミラは眉を下げて、困惑した表情をした。
「何か言っていたか?」
「成績が上がったとは聞いておりました」
「成績が?」
夫妻の子どもであるフレオとマレアは高等部を卒業し、弟であるカートは中等部であるために、モリーの成績など知りようもなかった。
「はい、前は成績上位者に入っていなかったのに、高等部の三年生になって急に入るようになったと」
「マレアはなんて言っていた?」
「王子殿下の婚約者を狙っているのかと言ってはおりましたが、あの子があのように言うのはいつものことですので……」
マレアは自分こそがレルス王太子殿下に相応しいと思い、一番近い存在だと話していた。ゆえにレルス殿下に媚びを売る令嬢や、近付く令嬢を非難することはいつものことだった。
「焦ったのだろうと言われていたな……」
「それは、公爵令嬢ですから」
「オブレオサジュール公爵令嬢は、これまで手を抜いていたが、レルス殿下の婚約者が内々に決まって、本気を出しただけではないか?」
「そんな、卑怯ではありませんか。マレアはずっと努力をして来たのに」
「そうだとしても、元より治癒術がある。昨日、今日、ましてや三年生になってから分かったことではない。あの子は魔術すら使えない。条件だけでも、天秤に乗せるまでもないだろう」
まずは魔力があること、魔術が使えること、そして治癒術が使えること。どれも、マレアにはなかったものである。
しかも、モリーは水魔法である。火魔法を持つレルス殿下とは相性もいいだろう。
「そんなことありませんわ!マレアはレルス殿下と一番親しかったのですよ」
「本当にそうか?話しているのを聞いたことがあるが、レルス殿下は皆と同じような様子だったぞ?」
「レルス殿下は弁えてらしたからですよ」
「今さら何を言っても、あの子がレルス殿下の婚約者になることはない」
既に決まってしまったのだから、誤解だと分かったとしても、覆ることはない。
「そんな……誤解だと証明されれば、まだ」
「私もお前もマレアが王太子妃になれるようにと思っていたが、もう無理なのだと理解しなさい」
「ですが」
「これからは家を守る行動をしなければならない。マレアもいい大人だ、罪を犯したのならば、自分で責任を取らなければならない」
「見捨てるのですか!」
ハーミラはオリルが結局はどうにかしてくれるものだと思っていた。
「依頼をしていたら、どうするんだ?」
「あの子がそんなことをするとは思えません……」
「だが、あの子はレルス殿下に執着していただろう?」
「でも、それは婚約者候補だったのですから」
オリルもマレアが一番王太子妃に近いと思っていた。だから、白紙になってからも国王陛下にも幾度となく、どうなっているかと売り込んで来た。
魔術は使えないが、使えなくても王太子妃になれないわけではない。
同級生で、婚約者候補で、親しいとまでは思ってはいなかったが、嫌われてはいないと思っていた。
それなのに、婚約者が決まり、婚約できていたとしても王太子妃ではなかったと一瞬考えたが、そのような依頼をしていたのなら、自分のこれまでの行為も踏みにじることであった。
ゼアンラーク侯爵邸に到着し、オリルはハーミラに告げた。
「これからは冷静に行動するように」
馬車から降りると、待っていたのはハーミラの生家であるキーノド伯爵家の馬車であった。オリルに気付いた、ハーミラの兄で、現伯爵であるコールエが降りて来た。
「お話を確認して置きたく、待っておりました」
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