病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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翻意1

「私ではないんです。ミチリーアに頼まれたことなんです」
「ミチリーア・カジルスがどうしてあなたに頼むのです?」
「ミチリーアはオブレオサジュール公爵令嬢が嫌いだったんです。それで、嫌がらせをして欲しいと頼まれて、それで……」
「依頼をしたことは認めるのですか?」
「そうです……可愛いミチリーアのためですから」

 騎士団員はミチリーアから頼まれたとは思えず、呆れるしかなかったが、同席していた魔術師、女性騎士たちも同じ気持ちであった。

 しかも、今日はレルスが話を聞くために来ることになっており、どうしたものかと思っていたが、レルスととコーレイド、オリル・ゼアンラーク侯爵が到着したために、事情を話してから入室してもらうことにした。

 話を聞いたレルスも呆れたような表情を僅かに見せたが、頷いた。

「レルス殿下っ!お、とう様……」

 レルス、ゼアンラーク侯爵、コーレイドが順番に入室すると、マレアは椅子を倒れさせて立ち上がったが、ゼアンラーク侯爵もやって来たことに驚いた。

「ゼアンラーク侯爵令嬢、座りなさい」
「は、はい……」

 女性騎士が椅子を戻し、マレアが座ると、机を挟んだ椅子にレルスが座り、向かい合った。ゼアンラーク侯爵とコーレイドはその後ろに用意された椅子に座った。

「ミチリーア・カジルスに頼まれたと主張しているそうだな?」
「そうなんです……ずっと言えなくて」

 マレアは上目遣いで、申し訳なさそうな顔をしながらレルスを見つめたが、その後ろにいる父の鋭い視線が刺さり下を向いた。

「嫌いだからという理由で、依頼をしたというのか?」
「オブレオサジュール公爵令嬢の成績が上がったことが面白くなかったようで、それで悩んでいたのです」
「ミチリーア嬢は成績上位者だったのか?」
「い、いえ……」
「だったら、影響はないではないか?何の関係がある?」

 ミチリーアの成績をレルスは知らなかったが、調べればすぐに分かる。それはマレアも分かった上で、事実を話した。

「ですが、不愉快に思っていたのです。サリリーナとミチリーアとは仲が良いものですから、何かしてあげたいと思ってしまったのです。今は悪かったと思っております」
「それで、オブレオサジュール公爵令嬢を脅して欲しい、嫌われていると分かるような方法がいいと言ったのか?」
「それは言っておりません」
「では、何と言ったのだ?」
「あの……調子に乗っているのだろうと思っておりましたので、少し弁えた方がいいと思っただけでございます」
「一気に成績が上がったのだから、少しくらい調子に乗ってもいいと私は思うが?」

 むしろモリーは悪いことをしたような考えをしていることを、マレアには想像もできないのだろうと、馬鹿馬鹿しくなった。

「そんなこと!」
「そもそも、オブレオサジュール公爵令嬢はそのような素振りはなかったと聞いているが?」
「それはレルス殿下の前だけです。良く見せようとしているのです」
「そうか」

 レルスはに対してもモリーは皆と同じ対応ばかりで、やきもきするほどであった。だが、マレアはモリーも自分のように媚びを売っていると考えているのだろう。

「それで、依頼はしたが、勝手にやり過ぎたと言いたいのか?」
「そうです!レルス殿下なら分かってくれるとおもっておりました」
「だがな、ミチリーア嬢がそのようなことをする理由が見付からないのだが?」

 最初から破綻している訴えではあるが、マレアの愚かさを示すためにも付き合うことにした。

「そんなことはありません!ドレスのことも公爵令嬢のすることではないと、馬鹿にしておりましたのよ」
「そのようなことで、伯爵令嬢が公爵令嬢に喧嘩を売るのか?」
「そうです!ミチリーアはそんな子なのです」

 後ろの席で話を聞いていたコーレイドは、まるで自分のことをミチリーアのことにしような話だなと感じていた。

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