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エルソン・ツーラン4
セーブルは執事であるオーリンに憧れており、エルソンが問題を起こしたからではなく、元よりオブレオサジュール公爵家ではなくとも、執事になりたいと希望していた。オーリンにとってはエルソンが失格となり、有り難いくらいであった。
オーリンには嫁いだ娘とエルソンしかいないが、シーン男爵家は子沢山で、長男、次男、長女、次女、三男、四男がおり、セーブルはまだ23歳である。
ゆえにエルソンよりも年下で、学園を卒業後、語学や知識のために留学をして、戻ってから執事の学校に通っていたのであった。
「父上」
オーリンとルマスが二人がお茶を飲んでいたところに、顔を出したのはエルソンであった。いつもならちゃんとやっているかと尋ねるところだが、今日は聞かなくてはならないことがある。
「後で少し、話をしたい。お前の執務室で待っていてくれ」
「はい……」
エルソンはオーリンにはきちんとした態度を取っており、それはルマスにもであった。気付けなかった落ち度と言われればそれまでだが、反省をした。
「何かあったのか?」
ルマスはオーリンの憂いを含んだ目が気になり、問い掛けた。
「叔父上にはエルソンは失礼な態度は取りませんでしょう?」
「ああ、ここへ来て、真面目にやっていると思うが?」
ルマスもどうして領地を手伝うことになったかは、王家とオブレオサジュール公爵家が関わっているために、公言することはないが内々に聞かされていた。
「ですが、モリー様には取っていたようなのです……」
「はあ?いや、誤解ではないのか?」
ルマスはモリーの名前だけを知っており、会ったこともなかったが、オブレオサジュール公爵家のご令嬢というだけで、自然に背筋を伸びる相手である。
「私もあの自称デザイナーについてはおかしいと思いました。ですが、どうしてあのようなことをしたのかについてはオブレオサジュール公爵家のためだと言っておりましたが、その向こうにモリー様を下に見るようなことがあったとしたら?」
「あり得ないだろう……?仕えている家のお嬢様だぞ?」
「私もそう思い、目が曇っていたとしか言いようがありません」
どうして気付かなかったかについては、まさにあり得ないことだったからであった。確かに執事見習いの際はモリーが幼いことやコアナとマキュレアリリージュのことで、家族も混乱の中にあった。
エルソンとモリーが関わっているところも見ることはなかった。
「ですが、モリー様はそのように感じてらしたのです」
「それは無視できないな」
「はい。ロレイン様にも念のため伺いましたが、あまり関わっていない。特に馬鹿にされている感じはしなかったと伺っております」
オーリンはツーラン子爵領に戻る前に、ロレインにもエルソンが失礼な態度を取っていないか話を聞いた。だが、エルソンはブレフォスとおり、ロレインはカリーナとおり、接点があまりなかった。
「ではお嬢様だけに?」
「そうなのかもしれません……いえ、もしかしたらお二人にということもあるかもしれません」
「そうか。お嬢様の王子殿下と婚約だけでも驚いたが、治癒術を使えるのだろう?ここでもオーリンが執事している家だとは知られているから、領でも素晴らしいことだと話に上がるさ」
ツーラン子爵領の領民はエルソンが執事を務めていたよりも、先代やオーリンが執事を務めている家という認識が強く、エルソンが執事見習いになったことは知っている者も多かった。
だが、領で補佐になった際は問題を起こしたのかというよりは、執事は向いていなかったのではないかという認識であった。
そして、セーブルが執事見習いになることも知られているために、エルソンも落ちこぼれたと思われないようにしっかり努めていた。
オーリンには嫁いだ娘とエルソンしかいないが、シーン男爵家は子沢山で、長男、次男、長女、次女、三男、四男がおり、セーブルはまだ23歳である。
ゆえにエルソンよりも年下で、学園を卒業後、語学や知識のために留学をして、戻ってから執事の学校に通っていたのであった。
「父上」
オーリンとルマスが二人がお茶を飲んでいたところに、顔を出したのはエルソンであった。いつもならちゃんとやっているかと尋ねるところだが、今日は聞かなくてはならないことがある。
「後で少し、話をしたい。お前の執務室で待っていてくれ」
「はい……」
エルソンはオーリンにはきちんとした態度を取っており、それはルマスにもであった。気付けなかった落ち度と言われればそれまでだが、反省をした。
「何かあったのか?」
ルマスはオーリンの憂いを含んだ目が気になり、問い掛けた。
「叔父上にはエルソンは失礼な態度は取りませんでしょう?」
「ああ、ここへ来て、真面目にやっていると思うが?」
ルマスもどうして領地を手伝うことになったかは、王家とオブレオサジュール公爵家が関わっているために、公言することはないが内々に聞かされていた。
「ですが、モリー様には取っていたようなのです……」
「はあ?いや、誤解ではないのか?」
ルマスはモリーの名前だけを知っており、会ったこともなかったが、オブレオサジュール公爵家のご令嬢というだけで、自然に背筋を伸びる相手である。
「私もあの自称デザイナーについてはおかしいと思いました。ですが、どうしてあのようなことをしたのかについてはオブレオサジュール公爵家のためだと言っておりましたが、その向こうにモリー様を下に見るようなことがあったとしたら?」
「あり得ないだろう……?仕えている家のお嬢様だぞ?」
「私もそう思い、目が曇っていたとしか言いようがありません」
どうして気付かなかったかについては、まさにあり得ないことだったからであった。確かに執事見習いの際はモリーが幼いことやコアナとマキュレアリリージュのことで、家族も混乱の中にあった。
エルソンとモリーが関わっているところも見ることはなかった。
「ですが、モリー様はそのように感じてらしたのです」
「それは無視できないな」
「はい。ロレイン様にも念のため伺いましたが、あまり関わっていない。特に馬鹿にされている感じはしなかったと伺っております」
オーリンはツーラン子爵領に戻る前に、ロレインにもエルソンが失礼な態度を取っていないか話を聞いた。だが、エルソンはブレフォスとおり、ロレインはカリーナとおり、接点があまりなかった。
「ではお嬢様だけに?」
「そうなのかもしれません……いえ、もしかしたらお二人にということもあるかもしれません」
「そうか。お嬢様の王子殿下と婚約だけでも驚いたが、治癒術を使えるのだろう?ここでもオーリンが執事している家だとは知られているから、領でも素晴らしいことだと話に上がるさ」
ツーラン子爵領の領民はエルソンが執事を務めていたよりも、先代やオーリンが執事を務めている家という認識が強く、エルソンが執事見習いになったことは知っている者も多かった。
だが、領で補佐になった際は問題を起こしたのかというよりは、執事は向いていなかったのではないかという認識であった。
そして、セーブルが執事見習いになることも知られているために、エルソンも落ちこぼれたと思われないようにしっかり努めていた。
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