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エルソン・ツーラン7
オーリンは恥を忍んで、エルソンを知っている使用人にも改めて聞くことにした。すると、モリーの言っていたことを感じていたものはいた。
コアナとマキュレアリリージュが本邸に入り込むのを、使用人も相手は平民であるためにきちんと止めていた。だが、エルソンは気付いても止めることはしなかった。
そして、モリーのドレスが邸に飾られていた時、使用人の間でも素晴らしいと話になっていたが、エルソンはどこか不満そうな様子であった。
どうしてなのだろうかと思っていたが、公爵令嬢がドレスを作っていることが不満だったのだろうかと思われていた。
それでも使用人にもエルソンのせいでモリーを軽んじてもいいと影響を受けたものはいた。だが、周りの使用人が注意をしていたそうだ。オーリンは申し訳ないと、数年越しにもう一度謝罪することになった。
「どうして馬鹿にできたのだ?」
「違うのです……あの、本当に」
「私は事実を尋ねている、でなければ心から謝罪ができない。そうは思わないか?」
「いえ……あの」
「どうせ怒られるのだ。事実を話した方が楽になれるだろう?お前はモリー様に二度と会うことはない」
エルソンは堪らず項垂れたが、そのままポツリと話し始めた。
「申し訳ございません……」
「自覚もあるのだな?」
「はい……」
ようやく認めたことで、オーリンは口調を少し柔らかくした。
「なぜ、そのような態度を取れた?」
「魔術が……使えないことで……」
「それで軽んじたのか?」
「はい……成績も家庭教師からもあまり勉強ができないとも聞いておりまして」
その言葉にオーリンは魔術を使えなくとも、成績が良くなくても、どの立場で馬鹿にすることができたのかと思うが、話を聞かなくてはならない。
「誰かと比べたのか?」
「ロレイン様です……」
「自分ではないのか……」
「はい、そうです……」
オーリンもエルソン自身と比べたとは思えなかったが、ロレインだったのかと思っても納得はできず、小さく息を吐いた。
「モリー様の魔術のことは知っているな?水魔法と治癒術が使えることを最近まで隠してらした」
「か、隠して……」
エルソンは自分だけが敢えて教えられていなかったのだと解釈していたが、隠していたなどと考えたこともなかった。
そして、ようやくオーリンを見るために彼は顔を上げた。
「そうだ、面倒なことに巻き込まれたくなかったのだ。どうしても良くも悪くも目立ってしまうからな」
「それは……父上も知らなかったのですか?」
「ああ、知ったのは一年くらい前のことだ」
「そうだったのですね、お考えがあったのでしょうね……」
「そうではない。エルソンのせいで、私は信用されていなかったのではないかと思っている」
「申し訳ございません……」
エルソンはまた下を向くしかなかった。
オーリンはモリーが明かさなかったのはブレフォスには自分がついているために、エルソンの態度から不信感があったのではないかという気持ちを拭えなかった。
「使用人としても、執事としても、お前はやってはならないことをした」
「はい、そう思っております」
「どうしてロレイン様と比べるようなことをした?」
「カリーナ様がロレイン様を優秀だとおっしゃっておいででしたので、姉であり、ロレイン様よりブレフォス様に似てらっしゃるモリー様が劣っていてはならないという思いがありました」
「そういうことか」
モリーはただ嫌いだったとも言っていたが、その理由ではオーリンは納得ができなかった。
確かにカリーナは嫡男になるだろうからとロレインにべったりで、こんなことができた、こんなこともできるとブレフォスに自慢をしていた。
だがブレフォスも妻にも子どもたちにも距離を取っていたために、モリーだけが孤立していることはオーリンも気にはなっていた。
コアナとマキュレアリリージュが本邸に入り込むのを、使用人も相手は平民であるためにきちんと止めていた。だが、エルソンは気付いても止めることはしなかった。
そして、モリーのドレスが邸に飾られていた時、使用人の間でも素晴らしいと話になっていたが、エルソンはどこか不満そうな様子であった。
どうしてなのだろうかと思っていたが、公爵令嬢がドレスを作っていることが不満だったのだろうかと思われていた。
それでも使用人にもエルソンのせいでモリーを軽んじてもいいと影響を受けたものはいた。だが、周りの使用人が注意をしていたそうだ。オーリンは申し訳ないと、数年越しにもう一度謝罪することになった。
「どうして馬鹿にできたのだ?」
「違うのです……あの、本当に」
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「いえ……あの」
「どうせ怒られるのだ。事実を話した方が楽になれるだろう?お前はモリー様に二度と会うことはない」
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「はい……」
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「魔術が……使えないことで……」
「それで軽んじたのか?」
「はい……成績も家庭教師からもあまり勉強ができないとも聞いておりまして」
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「ロレイン様です……」
「自分ではないのか……」
「はい、そうです……」
オーリンもエルソン自身と比べたとは思えなかったが、ロレインだったのかと思っても納得はできず、小さく息を吐いた。
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「か、隠して……」
エルソンは自分だけが敢えて教えられていなかったのだと解釈していたが、隠していたなどと考えたこともなかった。
そして、ようやくオーリンを見るために彼は顔を上げた。
「そうだ、面倒なことに巻き込まれたくなかったのだ。どうしても良くも悪くも目立ってしまうからな」
「それは……父上も知らなかったのですか?」
「ああ、知ったのは一年くらい前のことだ」
「そうだったのですね、お考えがあったのでしょうね……」
「そうではない。エルソンのせいで、私は信用されていなかったのではないかと思っている」
「申し訳ございません……」
エルソンはまた下を向くしかなかった。
オーリンはモリーが明かさなかったのはブレフォスには自分がついているために、エルソンの態度から不信感があったのではないかという気持ちを拭えなかった。
「使用人としても、執事としても、お前はやってはならないことをした」
「はい、そう思っております」
「どうしてロレイン様と比べるようなことをした?」
「カリーナ様がロレイン様を優秀だとおっしゃっておいででしたので、姉であり、ロレイン様よりブレフォス様に似てらっしゃるモリー様が劣っていてはならないという思いがありました」
「そういうことか」
モリーはただ嫌いだったとも言っていたが、その理由ではオーリンは納得ができなかった。
確かにカリーナは嫡男になるだろうからとロレインにべったりで、こんなことができた、こんなこともできるとブレフォスに自慢をしていた。
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