病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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無力な公爵令嬢

『出来なかった?ふざけるな!君には失望した!』
『申し訳ございません…』

 モリーは膝をついて、相手に謝罪をした。

 その日、魔力が底をついており、今日はもう出来ないと伝えたはずだった。それなのに、連れて行かれて、倒れたのである。

『聖女の手柄も自分のものだと言っていたようだな…』
『いいえ!そのようなことは言っておりません』
『聞いた者がいる!言い訳は不要だ!人として、軽蔑する!婚約は白紙とする、お前などが婚約者だったことなど消す!私の恥だ!』

 も、横取りしていたとされることになった。

『承知いたしました…』

 あの頃の夢を見て、目が覚めると、嫌な気持ちもよみがえっていた。

 ゆっくり息を吐き、目を瞑った。

 当時は苦しい思いが頭を占拠し、すぐに何もなかったことには出来なかった。だが、一日、二日と、日が経って行く内に、大丈夫になっていく。

 人の嫌な気持ちを受け取ることが、一番疲弊していく。

 失望、誤解、嫌悪…何を間違えたのか、いや、何をしても、私という存在が駄目だったのではないだろうか。


 ーーー五年前ーーー


 一生が終わる時、何を思うのだろう。

 そんなことを考えたこともあったが、今は私の人生はいつ終わりに向かうのだろうかと考えている。

 私の人生は、また巻き戻っていた。

 プレメルラ王国に住まう公爵家のお嬢様、モリー・オブレオサジュール。

「はあ…体が小さい…」

 体を見て、手の大きさを見て、頬を触ってはみたが、動揺する様子はない。

 冷静に新聞から、今日の日付を確認した。

「10歳か…理由があるのかしら」

 戻った理由も、きっかけも分からなかった。

 亡くなった記憶がないために、もしかしたら急死した。殺されたのかもしれないが、亡くなったわけではないのかもしれない。感覚的には眠りについて、目覚めると10歳の頃に戻ったという形が、腑に落ちる。

 恐怖こそないが、今ではない記憶があり、どこか心身ともに疲れすら感じていた。

「はあ……三回目か。どうしようかしら」

 大人びてはいるが、10歳の公爵令嬢であれば、特段に驚くような様子ではない。どうされたのですか!お嬢様!なんて、使用人が飛び込んで来ることもない。

 それもそのはず、二度目の時も同じように巻き戻っており、モリーなりに「え?」「どういうこと?」「なんで?」「夢を見たの?」と、ひとしきり驚いたり、困惑したりはしたが、三回目はさすがにまた…としか思えない。

 一度目と二度目は、モリーの選択によって大きく違うために、未来を見て来たとは違う感覚である。

 昨日はなぜか、リークレア・ダンサム公爵令嬢に八つ当たりされて、その他には何もなかったと思っていた。だが、他に何かあったのだろうか。

 また、やり直しの人生…なぜ巻き戻っているのか分からない。

 二度目のモリーは、皆が戻っているのではないかも考えたが、誰もが初めての人生を歩んでいるようにしか見えなかった。

 仲間が欲しいわけではないが、答えが欲しい。

 モリー・オブレオサジュールはシルバーの髪色に、ヴァイオレットの瞳。幼い頃から聡明で、神童と呼ばれることもあり、どこか浮世離れした神秘的な存在であった。

 近寄りがたいと言われ、人との距離の近い義妹と比べられ、期待される弟の面倒を看ないと叱られる日々だった。

 だからこそ、二度目は別の選択をしたはずである。だが、また戻されてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お読みいただきありがとうございます。

他の作品も終わりに向かっているのですが、
一つ目途がついたので、書き始めたいと思います。

生まれ変わりの話ではなく、巻き戻っているお話です。

本日は1日2話、投稿いたします。
次は17時です。

よろしければ、どうぞよろしくお願いいたします。

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