【完結】愛されて、愛されて、愛されて

野村にれ

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婚約

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 ルジエールは眠る子猫の頭を撫で、恋が始まる前の二人なら、子猫がきっかけになりそうなものだが、ただの猫好きであった。

 だが、ルジエールは今日のことで、契約結婚を申し込むことを決めた。

 二年間という話ではあるが、契約結婚でも、一度でも結婚をすれば、次の結婚を急かされることはないだろう。その相手としてフランアールは、次の結婚相手がフランアールと比べられる欠点もあるが、利点も多い。

 ビードルトラン公爵家、ヴァッサム公爵家から苦情の入ったペリル・コイゾイール伯爵令嬢についても、彼女だからこそできる対応であった。

「契約結婚を申し込みたいと思います」
「そうか」
「まあ」

 ルジエールは両親であるジスラットとマーガレットに決意を伝えた。

「父上も母上も、猫や動物は大丈夫ですよね?」
「ああ」
「猫は昔は飼っていたじゃない」
「フランアール嬢は、六匹、パーティーでの子猫も合わせると七匹の猫を飼っているそうです」
「猫の世話代くらい払える」
「まあまあ、きっと楽しくなるわね」

 マーガレットはあんなに可愛いフランアールが邸にいることに加えて、また猫がこの邸で暮らすようになるなんてと、心が躍った。

「だが、パーティーというのは?」
「フランアール嬢は動物に好かれるようで、あの日、庭で子猫に懐かれまして……マイラース殿下に確認をして、連れて帰りました」
「猫にも好かれるということなの?」
「そのようです……猫にもというのは?」
「昔ね、子どもたちが集まった時に、フランアール嬢の後ろに列を成したり、囲まれるということがあって」
「え?」

 囲まれるはともかく、列を成すってなんだろうかと、平然と話しているマーガレットに驚いたが、全く伝わっていない。

「あれは大人もいただろう」
「そうでしたわね、止めに行ったのかと思ったら、一緒になって……確か、公爵様が慌てて飛び込んでらしたわ。そうだったわ、ご苦労されたのね」
「ご苦労された様子だったものな」

 今さら思い出すことではあったが、ジスラットとマーガレットも目を見張る、幼い頃から惹きつけられる可愛さであった。

「魅了ではなかったですが……」
「聞きましたわ、教会で証明されたのでしょう?そもそも、魅了ならあなたが気付くでしょう?」

 ジスラットとマーガレットも、二人が教会に行った際に、リートルとルキュアからフランアールの事情を聞いていた。

「はい……」
「フランアール嬢はどんな様子なの?受けていただけそうなの?」
「それが、意外と……」
「まあ」

 気に入られたとまでは思っていないが、不快に思われなかったこと、ルジエールも当然と言えば当然だが、辛辣な評価をしていないことから、契約結婚でなければと思わなくもないが、そんな高望みをしてはならない。

「私を気に入ったわけではありませんが」
「当たり前じゃない、あなた自惚れ過ぎよ」
「自惚れてはおりません……」

 マーガレットも幼い頃はこれでも可愛い可愛い自慢の息子だったが、魔術にのめり込み、見た目など何の得にもならない、好きな相手一人見付けられない不甲斐ない息子になっている。

「彼女は自由に使えるお金が欲しいそうです。ですので、目的は明白ですから」
「お金なら、公爵殿が出すだろう」
「自分で手にしたお金、というのが大事だそうです」
「なるほど……」
「お金に困っているはずはないじゃない。フランアール嬢が欲しいと言えば、皆がお出しになるでしょう。私だって出しちゃうわ」
「母上……」

 近くでフランアールを見てしまったマーガレットは、すっかり邸に来たフランアールの姿を思い出しては蕩けた顔をしていることもあった。

 やっぱり何かの力かと思ったが、いくらルジエールでも心当たりがなかった。

 そもそも、国王夫妻が可愛がっているのだから、問題があるはずがない。
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