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十二回
エジュリーは他国の公爵令息と婚約をしていたが、向こうから性格の不一致で婚約を解消したいと申し出があった。
他国であることからあまり会っていないはずなのに我儘だからかとジェラルドは思ったが、手紙でも会ってみても質問に答えがない、話が嚙み合わないとのことであった。手紙で質問を送ったのに答えが書いてなければ、あちらも困るだろう。
エジュリーは自分本位なことがあるために、こまめに返事などができなかった。
そのような状態になったために、ジェラルドの婚約も急ぐことではなかったために、しばらくしてからにしようということになっていた。
「だったらどうして事件を調べたの!」
「彼女には幸せな人生を歩んでくれたらと思っていたんだ。クローサー殿も穏やかそうな方で、いい夫婦になるだろうと思っていた。それが亡くなったと聞かされて、じっとしていられなかっただけだ」
「それだけじゃないはずよ!」
「それはお前が勝手に思っただけだろう!」
エジュリーはジェラルドが婚約者のいる相手に認めないと思ったために聞くことはしなかった。だからこそ、クローサーがきちんと婚約を解消してから、「婚約解消したそうよ」と話すつもりであった。
「ああ……ああ……そんなことで……どうして」
ジェラルドは片手で頭を抱えて項垂れた。
クローサーも肩を落としたままで、まだ力があったのはエジュリーだけであった。
「そんなことって、事件が起こるなんて思っていなかったの!ユラリ様とお兄様のためにと思って、犯人が悪いんじゃない!」
「事件にも関わっているとは言い出さないだろうな?」
「そんなこと、私は邸にいたでしょう」
あの日のエジュリーのことなど覚えていないが、関係があったとまでは思っていなかった。それでも苛立ちから口にしたくなった。
「お前たちはやってはいけないことをしたんだよ!」
「っ」
「ど、どういう意味ですの?」
「フロノア伯爵令嬢は父親から『アルターク侯爵令息との婚約が駄目になったら死ぬように』と言われていたんだよ」
これはモルフィー教会のシスターから聞いたことであった。
シスターはどこか疲れた様子のユラリに話を聞くと、婚約が解消になるかもしれないと話していた。シスターは事情までは聞けなかったが、不誠実な方ならと話したが、父親に駄目になったら死ぬように言われているとこぼした。
だが次の瞬間には『そのくらいの意気込みでということですよね、優しい方で良いご縁だとも分かっているんですよ。もっと頑張らないといけませんね』と微笑んでいたが、ひどく心配していたそうだ。
「え?」
「そんなこと」
エジュリーは驚いたが、クローサーは動揺を抑えて冷静に問い掛けた。
「待ってください……犯人は捕まりましたよね?」
「公になるかは分からないが、フロノア伯爵令嬢から毒物が見付かった」
「毒……?」
「フロノア伯爵家の温室からその毒の元である植物が発見された。毒物も出回っているような物でもなかった」
ノイジーから死因がどちらかは分からないが、騎士団としては念のためにチュベラの毒が出回っていないかと、フロノア伯爵家を調べることになり、温室からチュベラの鉢植えがいくつか見付かった。
チュベラの毒は蒸発しない限りは、三年くらいは持つことが分かった。
自死するのに持っていたとして、即死でない毒を用いたのはユラリの近くにある毒はチュベラしかなかったのだろうという見解だった。
「どうしてフロノア伯爵令嬢は毒なんて持っていたんだろうな……彼女はお前たちのことを聞いて、クローサー殿に婚約解消したいと言われるかもしれないと思っていたのかもしれない」
「っ、そんな……」
クローサーの大きな目からぼろぼろと涙が零れ落ち、顔色も真っ赤になっていた。
他国であることからあまり会っていないはずなのに我儘だからかとジェラルドは思ったが、手紙でも会ってみても質問に答えがない、話が嚙み合わないとのことであった。手紙で質問を送ったのに答えが書いてなければ、あちらも困るだろう。
エジュリーは自分本位なことがあるために、こまめに返事などができなかった。
そのような状態になったために、ジェラルドの婚約も急ぐことではなかったために、しばらくしてからにしようということになっていた。
「だったらどうして事件を調べたの!」
「彼女には幸せな人生を歩んでくれたらと思っていたんだ。クローサー殿も穏やかそうな方で、いい夫婦になるだろうと思っていた。それが亡くなったと聞かされて、じっとしていられなかっただけだ」
「それだけじゃないはずよ!」
「それはお前が勝手に思っただけだろう!」
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「ああ……ああ……そんなことで……どうして」
ジェラルドは片手で頭を抱えて項垂れた。
クローサーも肩を落としたままで、まだ力があったのはエジュリーだけであった。
「そんなことって、事件が起こるなんて思っていなかったの!ユラリ様とお兄様のためにと思って、犯人が悪いんじゃない!」
「事件にも関わっているとは言い出さないだろうな?」
「そんなこと、私は邸にいたでしょう」
あの日のエジュリーのことなど覚えていないが、関係があったとまでは思っていなかった。それでも苛立ちから口にしたくなった。
「お前たちはやってはいけないことをしたんだよ!」
「っ」
「ど、どういう意味ですの?」
「フロノア伯爵令嬢は父親から『アルターク侯爵令息との婚約が駄目になったら死ぬように』と言われていたんだよ」
これはモルフィー教会のシスターから聞いたことであった。
シスターはどこか疲れた様子のユラリに話を聞くと、婚約が解消になるかもしれないと話していた。シスターは事情までは聞けなかったが、不誠実な方ならと話したが、父親に駄目になったら死ぬように言われているとこぼした。
だが次の瞬間には『そのくらいの意気込みでということですよね、優しい方で良いご縁だとも分かっているんですよ。もっと頑張らないといけませんね』と微笑んでいたが、ひどく心配していたそうだ。
「え?」
「そんなこと」
エジュリーは驚いたが、クローサーは動揺を抑えて冷静に問い掛けた。
「待ってください……犯人は捕まりましたよね?」
「公になるかは分からないが、フロノア伯爵令嬢から毒物が見付かった」
「毒……?」
「フロノア伯爵家の温室からその毒の元である植物が発見された。毒物も出回っているような物でもなかった」
ノイジーから死因がどちらかは分からないが、騎士団としては念のためにチュベラの毒が出回っていないかと、フロノア伯爵家を調べることになり、温室からチュベラの鉢植えがいくつか見付かった。
チュベラの毒は蒸発しない限りは、三年くらいは持つことが分かった。
自死するのに持っていたとして、即死でない毒を用いたのはユラリの近くにある毒はチュベラしかなかったのだろうという見解だった。
「どうしてフロノア伯爵令嬢は毒なんて持っていたんだろうな……彼女はお前たちのことを聞いて、クローサー殿に婚約解消したいと言われるかもしれないと思っていたのかもしれない」
「っ、そんな……」
クローサーの大きな目からぼろぼろと涙が零れ落ち、顔色も真っ赤になっていた。
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(他「エブリスタ」様に投稿)
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