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十九回
「毒についても自害したと言い出しても、誰一人悲しむ様子も、どうしてそんなことになったのかと思うこともない。家族ではなかったのですか?」
虐待の証言は集まり、裏付けは取れてはいたが、今日の様子だけでも誰一人ユラリのことを考えることもなかったのだろう。
三人の前にあるのは娘・妹が殺されて、面倒事に巻き込まれている。早く終わって欲しい、私たちは関係ないのにという思いだけだろう。
「そんなことはない」
「葬儀をして、埋葬してあげたからですか?」
「それも親としての責任だろう……私たちは殺してなどいない」
「死んで欲しいと命じたこともありませんか?」
フロノア伯爵の表情を見るために、真正面で見つめながら伝えた。
「そんなこと言ったことはない!いい加減にしてくれ!」
「ユラリ嬢の部屋を見せてください」
伝えた時の表情は怒りであり、忘れているのか、隠したいのは判断し兼ねる状況だったために部屋を再度見せてもらうことにした。
「っ、それは」
「まさか片付けたのですか?処分する必要があったということですか?」
「そうではない!」
「捨てたのですか?」
「っ」
「部屋は片付けましたが、捨ててはおりません。奥様のご家族が引き取りたいと申されておりましたので、保管しております」
エンジは慌てて答え、部屋は捜査が入った後でジスルオにすぐに片づけてるように言われていた。
「夫人のですか?」
「はい」
「交流があったのですか?」
「従姉です。全て引き取りたいと頼まれました」
夫人の実家にも話を聞きには行き、虐待の話も出ており、注意もしていたと証言を得ていた。だが従姉の話は聞いていない。
「サジューレ王国に住んでらっしゃいます」
「そういうことか、まだいらっしゃるのか?」
「はい、子爵家にいらっしゃると思います」
従姉のスミリーは母親の実家である子爵家に滞在しており、サジューレ王国はエリルの嫁いだ国でもある。
「誰か呼んで来てもらえないか」
「すぐに行って参ります」
「スミリーを呼んでどうするのですか!」
「話を聞きたいだけです」
しばらくすると、騎士たちがスミリー・ディアリンーズ侯爵令嬢を連れてやって来た。一緒に侍女と護衛もおり、母親が姉妹で、伯爵家に嫁いだが、陞爵によって侯爵令嬢となっている。
「お呼び立てしてすまないが、話を聞かせてもらいたい」
「はい、ユラリの捜査をされている方だと聞いて、私も知りたいと思っておりましたので、何でも協力いたします」
スミリーはフロノア伯爵家側とは別のソファに座り、三人には挨拶どころか見向きもしなかった。
「そうですか、ユラリ嬢とは親しかったのでしょうか」
「あまり会えることはなかったのですが、祖父母の家であったり、手紙のやり取りをしておりました」
「何か不安や心配事は聞いておりませんか?」
「はい、聞いておりますが……事件と関係あるのでしょうか」
スミリーは何でも協力する気ではあったが、質問の意図が分からず問い掛けた。
「ユラリ嬢の体から毒が見付かっております」
「毒?毒が?殴られたのですよね?それで……」
スミリーはユラリを殺した犯人の罰を見届けるまで滞在する予定にしていた。
「犯人のゼイシイ・オインが入手したとは思えません。明らかに突発的な犯行で、殴って鞄を奪って、毒を飲ませる理由はないですからね」
スミリーも説明に確かにと思い頷いた。
「ではどうして?」
「毒はこのフロノア伯爵家の温室で育てられていた」
「チュベラですか?」
「ご存知でしたか」
「はい、ユラリが伯母様が亡くなってから管理していたはずです。どうしてチュベラの毒なんか……」
スミリーは考えながら話していたが、思い至った答えにフロノア伯爵家の三人を見つめた。マセリーノ侯爵はその視線だけで、彼女は知っているのだと察した。
虐待の証言は集まり、裏付けは取れてはいたが、今日の様子だけでも誰一人ユラリのことを考えることもなかったのだろう。
三人の前にあるのは娘・妹が殺されて、面倒事に巻き込まれている。早く終わって欲しい、私たちは関係ないのにという思いだけだろう。
「そんなことはない」
「葬儀をして、埋葬してあげたからですか?」
「それも親としての責任だろう……私たちは殺してなどいない」
「死んで欲しいと命じたこともありませんか?」
フロノア伯爵の表情を見るために、真正面で見つめながら伝えた。
「そんなこと言ったことはない!いい加減にしてくれ!」
「ユラリ嬢の部屋を見せてください」
伝えた時の表情は怒りであり、忘れているのか、隠したいのは判断し兼ねる状況だったために部屋を再度見せてもらうことにした。
「っ、それは」
「まさか片付けたのですか?処分する必要があったということですか?」
「そうではない!」
「捨てたのですか?」
「っ」
「部屋は片付けましたが、捨ててはおりません。奥様のご家族が引き取りたいと申されておりましたので、保管しております」
エンジは慌てて答え、部屋は捜査が入った後でジスルオにすぐに片づけてるように言われていた。
「夫人のですか?」
「はい」
「交流があったのですか?」
「従姉です。全て引き取りたいと頼まれました」
夫人の実家にも話を聞きには行き、虐待の話も出ており、注意もしていたと証言を得ていた。だが従姉の話は聞いていない。
「サジューレ王国に住んでらっしゃいます」
「そういうことか、まだいらっしゃるのか?」
「はい、子爵家にいらっしゃると思います」
従姉のスミリーは母親の実家である子爵家に滞在しており、サジューレ王国はエリルの嫁いだ国でもある。
「誰か呼んで来てもらえないか」
「すぐに行って参ります」
「スミリーを呼んでどうするのですか!」
「話を聞きたいだけです」
しばらくすると、騎士たちがスミリー・ディアリンーズ侯爵令嬢を連れてやって来た。一緒に侍女と護衛もおり、母親が姉妹で、伯爵家に嫁いだが、陞爵によって侯爵令嬢となっている。
「お呼び立てしてすまないが、話を聞かせてもらいたい」
「はい、ユラリの捜査をされている方だと聞いて、私も知りたいと思っておりましたので、何でも協力いたします」
スミリーはフロノア伯爵家側とは別のソファに座り、三人には挨拶どころか見向きもしなかった。
「そうですか、ユラリ嬢とは親しかったのでしょうか」
「あまり会えることはなかったのですが、祖父母の家であったり、手紙のやり取りをしておりました」
「何か不安や心配事は聞いておりませんか?」
「はい、聞いておりますが……事件と関係あるのでしょうか」
スミリーは何でも協力する気ではあったが、質問の意図が分からず問い掛けた。
「ユラリ嬢の体から毒が見付かっております」
「毒?毒が?殴られたのですよね?それで……」
スミリーはユラリを殺した犯人の罰を見届けるまで滞在する予定にしていた。
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スミリーも説明に確かにと思い頷いた。
「ではどうして?」
「毒はこのフロノア伯爵家の温室で育てられていた」
「チュベラですか?」
「ご存知でしたか」
「はい、ユラリが伯母様が亡くなってから管理していたはずです。どうしてチュベラの毒なんか……」
スミリーは考えながら話していたが、思い至った答えにフロノア伯爵家の三人を見つめた。マセリーノ侯爵はその視線だけで、彼女は知っているのだと察した。
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