21 / 28
二十一回
ノーマークだったスミリー・ディアリンーズの登場によって、さらにフロノア伯爵家の実情は明らかになった。
「スミリー嬢、ありがとうございます。大変助かりました」
「マセリーノ侯爵!スミリー嬢の言うことを信用するのですか?」
「しっかりと裏取りいたします!私を馬鹿にしないでいただきたい!」
フロノア伯爵は怯んだが、マセリーノ侯爵も一度くらいいいだろうとと思い、立ち上がりながら怒鳴りつけた。
「スミリー嬢、ユラリ嬢の物を受け取られると伺っております」
「はい、そう約束しておりました」
「エンジさん、ご案内いただけますか?」
「はい」
エンジはユラリの物を収めた物置きに案内するしかなく、申し訳ない気持ちだったが、ジスルオの目に入ると叱られるために仕方なかった。
だが、処分されていたのではないかと、積み上げられている箱にマセリーノ侯爵はエンジに問い掛けた。
「エンジさん、答えなくても構いません。伯爵はユラリ嬢の物を捨てるように言ったのではありませんか?」
エンジは小さく頷き、スミリーは鼻に皺を寄せて、怒りで首を二度振った。
「あなたは何も答えてはいません。安心してください。これが全部ですか?」
「あとは家具や寝具などになります。こちらにはユラリお嬢様がいただいた物、選ばれた物を入れております」
執事はちゃんとユラリの物を把握しているのだとは思い、マセリーノ侯爵は使用人はきちんとしていたのだろうと少しホッとした。
「スミリー嬢、お運びしますので少し見せていただいても構いませんか?」
「ええ、でもここでは見たくないです」
「そうですね……」
物置きではもちろんだが、どこか部屋を借りるのも嫌である。
「お嫌でなければ騎士団の方へいかがでしょうか」
「構いません」
スミリーは騎士団に行き、証言にサインも行い、裏取りとしてサジューレ王国にユラリから手紙をすべて取ってあるために証明できることも話した。
「エリル夫人とは親しくないのですか?」
「サジューレ王国に嫁いだのにという意味ですよね?」
「そうです」
同じ国に住んでいる貴族のはずなのに、二人に親しさはなかった。
「元々、エリルは我儘で婚約してくれる相手がいなかったのです。それで誰かいないかと母の実家、伯母上の実家でもありますから、そこから我が家に話が来て」
「紹介なさったのですか?」
エリルを嫌っているような状態なのに、ディアリンーズ公爵家が紹介するとは思えなかった。
「おすすめするわけではないと話した上で持ち掛けているのです。お相手も性格に難のある方で、厳しい方なのです。エリルも後がないと言われて、いい顔をしているのです。何かあれば切り捨てられるかもしれません」
マセリーノ侯爵はエリルには子どももいると聞いていたが、そんなことではどうにもならないだろうと感じた。
「後、ユラリからエリルだけでも離したかったのです」
「それはそうですね」
「二人も注意をされているのですよね?」
「ええ、そうです。ですが、あの二人は我儘で自分本位ですから、その場では反省している顔をしていただけだったのでしょう。フロノア伯爵家はユラリ以外、上にはいい顔をしますからね。私を呼んでいただいて良かったです。祖父母だったら、伯父様は煙に巻くばかりでしたから」
何度も注意をしてもらい、ユラリを引き取るという話も出ていたが、そんなことになれば世間体が悪いというフロノア伯爵によって難しかった。
「注意もしていたと伺っておりました」
「ええ、でもそれは抑止力ではなく、ユラリに向かったのだと思います……でも、死ぬことはなかった。それこそ、サジューレ王国の令息を紹介すれば良かった」
「はい」
「あの三人は裁かれないことは理解しております。でも許しません」
その言葉にマセリーノ侯爵は今まではユラリの家族という立場があったために、何もしなかっただけではないかと思った。
「スミリー嬢、ありがとうございます。大変助かりました」
「マセリーノ侯爵!スミリー嬢の言うことを信用するのですか?」
「しっかりと裏取りいたします!私を馬鹿にしないでいただきたい!」
フロノア伯爵は怯んだが、マセリーノ侯爵も一度くらいいいだろうとと思い、立ち上がりながら怒鳴りつけた。
「スミリー嬢、ユラリ嬢の物を受け取られると伺っております」
「はい、そう約束しておりました」
「エンジさん、ご案内いただけますか?」
「はい」
エンジはユラリの物を収めた物置きに案内するしかなく、申し訳ない気持ちだったが、ジスルオの目に入ると叱られるために仕方なかった。
だが、処分されていたのではないかと、積み上げられている箱にマセリーノ侯爵はエンジに問い掛けた。
「エンジさん、答えなくても構いません。伯爵はユラリ嬢の物を捨てるように言ったのではありませんか?」
エンジは小さく頷き、スミリーは鼻に皺を寄せて、怒りで首を二度振った。
「あなたは何も答えてはいません。安心してください。これが全部ですか?」
「あとは家具や寝具などになります。こちらにはユラリお嬢様がいただいた物、選ばれた物を入れております」
執事はちゃんとユラリの物を把握しているのだとは思い、マセリーノ侯爵は使用人はきちんとしていたのだろうと少しホッとした。
「スミリー嬢、お運びしますので少し見せていただいても構いませんか?」
「ええ、でもここでは見たくないです」
「そうですね……」
物置きではもちろんだが、どこか部屋を借りるのも嫌である。
「お嫌でなければ騎士団の方へいかがでしょうか」
「構いません」
スミリーは騎士団に行き、証言にサインも行い、裏取りとしてサジューレ王国にユラリから手紙をすべて取ってあるために証明できることも話した。
「エリル夫人とは親しくないのですか?」
「サジューレ王国に嫁いだのにという意味ですよね?」
「そうです」
同じ国に住んでいる貴族のはずなのに、二人に親しさはなかった。
「元々、エリルは我儘で婚約してくれる相手がいなかったのです。それで誰かいないかと母の実家、伯母上の実家でもありますから、そこから我が家に話が来て」
「紹介なさったのですか?」
エリルを嫌っているような状態なのに、ディアリンーズ公爵家が紹介するとは思えなかった。
「おすすめするわけではないと話した上で持ち掛けているのです。お相手も性格に難のある方で、厳しい方なのです。エリルも後がないと言われて、いい顔をしているのです。何かあれば切り捨てられるかもしれません」
マセリーノ侯爵はエリルには子どももいると聞いていたが、そんなことではどうにもならないだろうと感じた。
「後、ユラリからエリルだけでも離したかったのです」
「それはそうですね」
「二人も注意をされているのですよね?」
「ええ、そうです。ですが、あの二人は我儘で自分本位ですから、その場では反省している顔をしていただけだったのでしょう。フロノア伯爵家はユラリ以外、上にはいい顔をしますからね。私を呼んでいただいて良かったです。祖父母だったら、伯父様は煙に巻くばかりでしたから」
何度も注意をしてもらい、ユラリを引き取るという話も出ていたが、そんなことになれば世間体が悪いというフロノア伯爵によって難しかった。
「注意もしていたと伺っておりました」
「ええ、でもそれは抑止力ではなく、ユラリに向かったのだと思います……でも、死ぬことはなかった。それこそ、サジューレ王国の令息を紹介すれば良かった」
「はい」
「あの三人は裁かれないことは理解しております。でも許しません」
その言葉にマセリーノ侯爵は今まではユラリの家族という立場があったために、何もしなかっただけではないかと思った。
あなたにおすすめの小説
記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。
しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。
眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。
侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。
ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。
彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
【完結】あの子の代わり
野村にれ
恋愛
突然、しばらく会っていなかった従姉妹の婚約者と、
婚約するように言われたベルアンジュ・ソアリ。
ソアリ伯爵家は持病を持つ妹・キャリーヌを中心に回っている。
18歳のベルアンジュに婚約者がいないのも、
キャリーヌにいないからという理由だったが、
今回は両親も断ることが出来なかった。
この婚約でベルアンジュの人生は回り始める。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。