【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

文字の大きさ
58 / 196

離縁の余波1

しおりを挟む
「王太子殿下にも驚いたが、アンドリュー様も離縁されたのか…?」
「そのようでございます」

 マクローズ伯爵家では、ジェフが執事から、アンドリュー・ズニーライの離縁を聞き、驚いた。

「オリビア元王太子妃のせいで、離縁されたのか?」
「分かりません」

 オリビアが不貞を犯して、出戻ったことで、離縁したのかとジェフは考えていた。

「お子様は、下の三人だけお連れになって、離縁されたそうです」
「そうか」

 下の子はまだ幼かったか?まあ、上の子より小さいのは確かだろうから、順当なところということなのだろうか。

 ジェフは今日、王太子殿下が離縁して、初めて会うことになっている。

「久し振りだな」
「はい」
「離縁したことに驚いたか?」
「はい…」

 離縁するのはジェフとシャーリンの方だと思っていた、それがジェフは一応は離縁しないままである。

「さすがに見過ごすことは出来ないからな。正直、楽になった。オリビアがしていたことは、子どもたちがやってくれており、余程効率がいい」

 オリビアも何もしなかったわけではない、だがオリビアに誘われることがなくなって、息がし易くなった。

「そうですか」
「ジェフのところはどうだ?ちゃんと働きに行っているのか?」
「はい、行かなければ離縁だと言っておりますので」

 シャーリンは不満を洩らしながらも、工場に通っている。

 親世代であれば、恥ずかしいことではあったが、減り続ける資産に、さすがに公爵家の方はいないが、侯爵家の方でも工場ではないが、働いている方もいる。

 シャーリンも子爵家であったために、他の方よりも耐性があるだろうと思ったが、私はこんなことをする人間ではないと言っている。

「そうか」

 そこまで言えば、オリビアも違ったのかと思ったが、バトワスは無意識にオリビアを排除するように誘導したように思う。

 だが、後悔はしていない。

「アンドリュー様も離縁されたそうで、オリビア元王太子妃殿下のせいですか?」
「きっかけはそうだな」
「きっかけ、ですか?」

 夫人がオリビア元王太子妃のせいで、離縁を申し出たのではないのか?

「ああ、ミカエラー夫人もオリビアと同じで、不貞だよ。オリビアのこともあって、わざわざ公にはしていないが、アンドリュー殿から報告を受けている」

 アンドリューは謝罪と共に、離縁の報告を行っていた。

「不貞…?」
「ああ、下の三人はアンドリュー殿の子ではなかった」
「な…そんな…ことが…てっきり、まだ幼いからと思っていました」
「そんなに幼い年ではない。一番上で10歳だから、十年以上前から不貞行為をしていた証拠になっている」
「十年…自分の子どもか、お調べになったのですか?」

 アンドリュー様の夫人は大人しそうな方だったはずだが、十年も騙されていたということなのかと、驚愕した。

「そうらしい。今まではオリビアのことがあるから、黙認していたようなもので、だがオリビアのことで、ハッキリさせようと思ったそうだ。正直、他にもいるかもしれない。お前のところは大丈夫か?」

 アンドリューは自分と同じ様に疑っている夫や、黙認している夫がいるかもしれないと告げていた。

「それは…ないと思いますが」
「夫人たちが集まって、男娼や令息を呼んで、性行為を行っているそうだ」
「っな」
「ジェフのところは違うのか?」
「何が、でしょうか?」
「夫人の性欲が強い、ということはないか?」

 ジェフは目を見開き、そのような話を誰ともしたことがなかったので、どうして知っているのかと驚き、声を上げそうになった。

「私も他の者のことは知らなかった。そのような話をすることもないからな。だが、たまたま聞く機会があり、そういった夫人は多いそうだ。ジェフのところも、子どもが多いだろう?」
「…はい、その、妻もそうです」
「やはりそうか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...