ドラゴンハンター

ことは

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第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾

1-1

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 戸井圭吾が最初にソレを見つけたのは、ペットショップの中だった。

 駅前のショッピングセンターの片隅にある、ペットショップ「ワクワクランド」。その奥にある爬虫類売り場は圭吾の大好きな場所だ。

 7月の第二土曜日。小学5年生の圭吾は、そこでソレに出会った。

「結衣を見ていてくれる?」

 ショッピングセンターの入り口でそう言い残して、お母さんは買い物に行ってしまった。

「チェッ、まだ返事もしてないのに」

 圭吾は真っ黒に日焼けした顔を、不満げにゆがめた。

 圭吾は、妹の結衣の手を取った。結衣は、幼稚園の年長だ。お気に入りのピンクのワンピースを着て、髪をツインテールにしている。

「お兄ちゃん、あっちに行ってもいい?」

 結衣が、圭吾の手を離す。圭吾はあわてて後を追う。迷子になられたら大変だ。

 結衣のお目当ては、ペットショップ「ワクワクランド」。結衣は、犬や猫が並ぶ壁際のガラスケースを見つけたとたんに、大はしゃぎだ。他の客を上手によけながら、ポップコーンがはじけるみたいに走っていく。

「結衣! 走るな、危ないっ」

 結衣は、ほとんど体当たりするようにして、ガラスのケースに顔をぺったりと張り付けた。

 圭吾は結衣の後ろで立ち止まると、大きなため息をついた。ガラスの向こうでは、茶色いチワワがしっぽを振っている。

「かわいい~」

 結衣は頬を赤く染め、目を輝かせている。

 せまいケージの中を走り回っているトイプードルや昼寝中のペルシャ猫。圭吾は、それらを眺めながら歩いた。犬や猫の左側には、ウサギやインコなどの小動物がいた。

 さらに奥には、蛇やトカゲなどの爬虫類がいる部屋。そこだけ別世界のように、ガラスの壁で仕切られている。圭吾は犬や猫より、爬虫類が見たかった。

 結衣は、犬や猫を夢中で見ている。

「しばらくは放っておいてもよさそうだな」

 圭吾は、爬虫類売り場に足を踏み入れた。

 目の前にあるプラスチックケースに、圭吾の目は釘付けになる。

 ケースには、何本かの止まり木が、からみあうように立てかけてある。一番太い止まり木に、20センチくらいの、青みがかった緑の生き物がいた。

 大型トカゲの『ウォータードラゴン』だ。

「すげー、かっこいい」

 圭吾はケースの前にしゃがみ込み、ウォータードラゴンを見つめた。

 青、緑、エメラルドグリーン、白、黒、オレンジ、ターコイズブルー。その体は、見れば見るほど、たくさんの色が混ざり合って、美しく輝いている。

 圭吾は前に一度、ウォータードラゴンを飼いたいと両親に言ったことがある。

 お父さんは、お母さんがいいと言えば飼ってもいいと言った。お父さんは決まり文句のように、どんな時でもそう言う。

 だが、お母さんと結衣からは猛反対された。トカゲを飼うなんて気持ち悪いと。圭吾がどんなに熱心に説明しても、ウォータードラゴンのかっこよさをわかってもらえなかった。

「こんにちはー」

 後ろから、明るい女性の声がした。高音の透き通るような声。どんな人なのか見てみたいと思わせる声だった。圭吾は思わず立ち上がった。

 振り向くと、20代くらいに見える女の人が立っていた。清潔感のある白いブラウスにベージュのスカート。髪をすっきりと後ろで束ねている。

 女の人は、店の奥をのぞきこむようにしている。脇に茶封筒をはさみ、胸には20センチ四方くらいの小さなガラスケースを抱えていた。

 ガラスケースの中身は、女の人の手が邪魔してよく見えない。ウォータードラゴンのケースに入っているような止まり木が、チラリと見えただけだ。

「はーい」

 奥からオレンジ色のエプロンをした女性店員が出てきた。

「お忙しいところすみません。例の物を持ってきました。今日から置いていただけますか」

 女の人が微笑むと、店員もつられたように、にっこりうなずいた。

「場所はえーっと」

 店員が店内を見回す。

「この辺りでよいかしら」

 店員が圭吾の前を指さす。

「とてもいい場所だわ」

 女の人は満足そうに言うと、ウォータードラゴンの隣にガラスケースを並べた。まるで宝物を扱うみたいに、そうっと置いた。

(なにが入っているのかな)

 圭吾はウォータードラゴンを見るふりをして、横目でガラスケースを盗み見ようとした。

 だが、女の人が覆いかぶさるようにしていて、中身が全く見えない。

 女の人は脇に抱えた茶封筒から、白い紙を取り出した。それをガラスケースの上に置いた。その紙には、青いポップな字体でこう書かれていた。

『ドラゴンがいるよ!』
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