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第四章 ドラゴンハンター04 本田敦也
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「やっぱりぼくがおとりになる」
敦也は祐太に言った。
「ぼくの弟を助けるためだもん。祐太を危険な目に合わせられないよ」
敦也は、祐太から下敷きを奪い取った。
辺りは薄暗くなってきている。これなら静電気を起こせば、火花がはっきりと犯人にも見えるに違いない。
建物から、塾生たちが一斉に出て来た。
敦也は電信柱の陰に隠れて、思い切り下敷きで頭をこすった。
そのまま塾生に紛れ込むようにして、歩き出す。歩きながら、手で髪を触る。パチッと指先に痛みが走る。だが、ドラゴンに寄生された子どもの火花と比べたら、かなり弱い。
(こんなことでうまくいくのかな)
塾生たちが、バイバイと手を振りながら帰っていく。ほとんどの子が、親が車で迎えに来ていた。
歩いて帰る子どもは、敦也の他にあと二人くらいだ。周りに人がいる間はなにも起こらなかった。
他の二人が、角を曲がる。圭吾は真っ直ぐ歩き続けた。髪におこした静電気も、すっかりおさまってしまった。
(もうあきらめようか)
そう思った瞬間、何者かに後ろから口をふさがれた。
驚いて、思わず声を上げる。だが、口を手で押さえつけられていて、くぐもった声しか出ない。
敦也はその手を跳ね飛ばし、後ろを振り返った。昼間見たのと同じ、全身黒ずくめでマスクをした男が立っていた。思わず逃げ出しそうになる。
だが、逃げてはだめだ。うまく誘拐されなければ隼人の居場所にたどり着けない。
敦也は素早く辺りを見回した。大丈夫だ。柱の陰に隠れるようにして、圭吾と祐太、美鈴が後をつけてきている。
男に腕をつかまれた。不審に思われないように、少しだけ抵抗する。
辺りが急に明るくなる。車のライトだ。後ろから車が走ってきて、敦也の横で止まった。
後部座席のドアが開けられる。敦也は背中を強く押された。突き飛ばされるようにして、車に乗せられた。
ドアが閉まる音。出発しろ、という男の低い声。後部座席に顔を押しつけられる。あっという間に、男に両手を後ろで縛られた。
車が急発進する。
(まずい。みんながついてこられない)
冷や汗が出て来た。
(落ち着け、落ち着け。こういう時のための作戦があるじゃないか)
耳の奥でドクドクと脈がなる。敦也はじっとこらえた。
敦也は祐太に言った。
「ぼくの弟を助けるためだもん。祐太を危険な目に合わせられないよ」
敦也は、祐太から下敷きを奪い取った。
辺りは薄暗くなってきている。これなら静電気を起こせば、火花がはっきりと犯人にも見えるに違いない。
建物から、塾生たちが一斉に出て来た。
敦也は電信柱の陰に隠れて、思い切り下敷きで頭をこすった。
そのまま塾生に紛れ込むようにして、歩き出す。歩きながら、手で髪を触る。パチッと指先に痛みが走る。だが、ドラゴンに寄生された子どもの火花と比べたら、かなり弱い。
(こんなことでうまくいくのかな)
塾生たちが、バイバイと手を振りながら帰っていく。ほとんどの子が、親が車で迎えに来ていた。
歩いて帰る子どもは、敦也の他にあと二人くらいだ。周りに人がいる間はなにも起こらなかった。
他の二人が、角を曲がる。圭吾は真っ直ぐ歩き続けた。髪におこした静電気も、すっかりおさまってしまった。
(もうあきらめようか)
そう思った瞬間、何者かに後ろから口をふさがれた。
驚いて、思わず声を上げる。だが、口を手で押さえつけられていて、くぐもった声しか出ない。
敦也はその手を跳ね飛ばし、後ろを振り返った。昼間見たのと同じ、全身黒ずくめでマスクをした男が立っていた。思わず逃げ出しそうになる。
だが、逃げてはだめだ。うまく誘拐されなければ隼人の居場所にたどり着けない。
敦也は素早く辺りを見回した。大丈夫だ。柱の陰に隠れるようにして、圭吾と祐太、美鈴が後をつけてきている。
男に腕をつかまれた。不審に思われないように、少しだけ抵抗する。
辺りが急に明るくなる。車のライトだ。後ろから車が走ってきて、敦也の横で止まった。
後部座席のドアが開けられる。敦也は背中を強く押された。突き飛ばされるようにして、車に乗せられた。
ドアが閉まる音。出発しろ、という男の低い声。後部座席に顔を押しつけられる。あっという間に、男に両手を後ろで縛られた。
車が急発進する。
(まずい。みんながついてこられない)
冷や汗が出て来た。
(落ち着け、落ち着け。こういう時のための作戦があるじゃないか)
耳の奥でドクドクと脈がなる。敦也はじっとこらえた。
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