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【真樹視点】第一章
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揺れるカイヅカイブキの音で目が覚めた。
寝ぼけた頭に遅れて、景色をさらうかのように窓の外で暴れる風の音と、乾いた暖房の音が流れ込んでくる。
昨日、何してたっけか。コンビニでほろよいを2缶買って帰ってきたら暖房が点けっぱなしだったことは覚えている。目がゴロゴロしたまま立ち上がり、スカートの裾を申し訳程度に触って伸ばしたところで、帰宅の勢いそのままに寝てしまっていたことに気付いた。
何かを踏んでしまわないように床を探りながら冷蔵庫までたどり着いて開けると、冷えた匂いとオレンジ色の灯りが夜明け前の深い青と混ざり合った。時計を見ると、午前5時。
中途半端に残っていたペットボトルのお茶で喉を潤してから、私はベッドへ戻り毛布を抱きしめた。言葉を絞り出そうとしても鳴き声のようなものしか出てこない。頭にくっきりと“さびしい”が浮かんで、ほの暗い部屋の中を回遊する。
窓から見える、寝ぐせでぼさぼさの頭みたいな植物の名前は、俊くんに教えてもらった。
「初めてこれの説明を受けた時、真樹みたいな植物だなって思ったんだ」
そう言って笑う俊くんの目は、朝日をいっぱい吸い込んだかのように優しかった。あの眼差しを受けられないと息をするのも難しく思えてしまうほどに。
20分ほど布団と格闘した後、今日の予定を反芻する。まずは床にコンビニのごみが散らばっているこの惨状をなんとかする。17時には俊くんがバイトを終えて家に来るから、そのギリギリにシャワーを浴びる。何度だってそうしてきた、彼がこの部屋を訪れる際の私のルーティン。
この部屋は、彼のためだけに息を吹き返すから。
未来を少しだけ想像する。新しく教えてもらったことを楽しそうに語る、木の粉で少しざらついた声。腹ペコで帰ってきた彼がかき込むように食べる私のカレー。テーブルに映り込みそうなほどまぶしい笑顔。
よどんだ空気の中では飲み切れなかったチューハイの匂いと、半開きの中扉の向こうから漂う冷えたカレーの匂いが混ざり合っている。
私はまだ顔をはっきりと覗かせない朝日をじれったく思いながら、ようやっと重い腰を上げた。
寝ぼけた頭に遅れて、景色をさらうかのように窓の外で暴れる風の音と、乾いた暖房の音が流れ込んでくる。
昨日、何してたっけか。コンビニでほろよいを2缶買って帰ってきたら暖房が点けっぱなしだったことは覚えている。目がゴロゴロしたまま立ち上がり、スカートの裾を申し訳程度に触って伸ばしたところで、帰宅の勢いそのままに寝てしまっていたことに気付いた。
何かを踏んでしまわないように床を探りながら冷蔵庫までたどり着いて開けると、冷えた匂いとオレンジ色の灯りが夜明け前の深い青と混ざり合った。時計を見ると、午前5時。
中途半端に残っていたペットボトルのお茶で喉を潤してから、私はベッドへ戻り毛布を抱きしめた。言葉を絞り出そうとしても鳴き声のようなものしか出てこない。頭にくっきりと“さびしい”が浮かんで、ほの暗い部屋の中を回遊する。
窓から見える、寝ぐせでぼさぼさの頭みたいな植物の名前は、俊くんに教えてもらった。
「初めてこれの説明を受けた時、真樹みたいな植物だなって思ったんだ」
そう言って笑う俊くんの目は、朝日をいっぱい吸い込んだかのように優しかった。あの眼差しを受けられないと息をするのも難しく思えてしまうほどに。
20分ほど布団と格闘した後、今日の予定を反芻する。まずは床にコンビニのごみが散らばっているこの惨状をなんとかする。17時には俊くんがバイトを終えて家に来るから、そのギリギリにシャワーを浴びる。何度だってそうしてきた、彼がこの部屋を訪れる際の私のルーティン。
この部屋は、彼のためだけに息を吹き返すから。
未来を少しだけ想像する。新しく教えてもらったことを楽しそうに語る、木の粉で少しざらついた声。腹ペコで帰ってきた彼がかき込むように食べる私のカレー。テーブルに映り込みそうなほどまぶしい笑顔。
よどんだ空気の中では飲み切れなかったチューハイの匂いと、半開きの中扉の向こうから漂う冷えたカレーの匂いが混ざり合っている。
私はまだ顔をはっきりと覗かせない朝日をじれったく思いながら、ようやっと重い腰を上げた。
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