栄滅大戦記

タマイト

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序章 ~プロローグ~

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    「ピピピピ。ピピピピ。…チャカ。」
上体を起こして、眩しさに目を瞑りながら、左手で目覚ましのタイマーを切り、右手で目をこする。
しばらくして、一つため息を付き、勢いをつけて、流れるように起き上がる。いつもの調子で、着替えを済まし、洗面所で洗顔、歯磨き。寝ぼけながら、食事の並ぶ机の椅子に腰掛ける。まだ眠い。そう思いながら、朝食を食べ終わった。
そして、迷いなく玄関へと向かい、今日という名の始まりの門を開ける。
その時の決まり文句と来たら、「気をつけて行ってらっしゃい。」だ。
あの冷たくも暖かい日常を感じることは、俺にはもうできないのであろうか。。。。
    未知なる世界、不可解な事象。ここは、宇宙の誕生するはるか昔の世界。大宇宙人の知らない物語が、ここにはあるのであった…

【創始】
    AMC(魔暦前)600000年、そこは、人間も、動物もいない、植物たちの楽園。すべての始まりは、この雲一つかからない、生命の凪の夜に始まったのだ。
ここはとある草原。1面が緑に染まり、風が大自然のオーケストラを奏でている。前遠くには、大きな一枚岩が見え、その真上には、満月が浮かんでいた。三千世界に煌めく星が、宝石のように魅惑的に見える。綺麗だ。しかし、世界を変える大きな出来事が起こらんとしていたのである。
宇宙の彼方から、光色と闇色の二つの隕石が、こちらに向かってきている。それぞれ「力」を秘めたいしであり、二つの石は、同じ距離を保ち続けている。まるで、二人三脚のように。速さは目では見えないくらい。しかし、その二つが放つ強烈な光によって、近づいてきた隕石を目視できた。周りの星の輝きを消してしまうくらいの。やがてこの星の大気圏に入り、大気の摩擦によって、炎を帯びる。闇色は命を運ぶ不死鳥の如く、光色は、優雅に天に昇る龍の如く。二つの違う場所に降り立った。しかし、衝撃波が全く来ない。何故だ。何故だ。恐る恐る見てみると、なんと自己のエネルギーで浮遊している。まとっている炎の中で、傷一つつかずに。300000年後、人類が二つの石を発見し、触れたものは、大いなる力を使えるようになることがわかり、人々は、「神の欠片」と崇め、産まるる人々が石に触れることを、習慣とした。光色は命の力を。闇色は、宇宙の力を、触れたものに分け与えていたのである。
さらに200000年後、人々は、この力に大いに頼り、遂には直接力を取り出す方法を見出した。生活は今まで以上に豊かになり、人々に平和が訪れた。身体に力が定着し、自ずと力を持つようになると、そこから、力は遺伝を始めた。その力を生成する能力。人々は、[力を使いこなす者]になったのであった。
そして、M・C0年、突然二つの石にヒビが入った。エネルギーは暴走し、世界の9割を焼け野原、破滅状態にし、二つの隕石は破裂した。と同時に、光色の玉と、闇色の玉が、それぞれどこかへ飛んでいった…再びまた出会う約束をしたかのように…

【学校】
    M・C(魔暦)2020年、兎の期の半ば(四月)、桜が最も美しく咲く頃。花が一生懸命開花するが如く、夢を携えた青年達は、今開かんばかりと、気合を入れて入学してきた。青春が輝く瞳で周りを見渡し、在校生に見て見られて、緊張する。拍手に挟まれる中、鼓動が高鳴り、ブカブカの制服を着て、自分のために用意されたレッドカーペットを歩いて、歓迎席まで行進する。中学卒業式に学んだこの時の為の作法を思い出しながら。
今俺の視野に入るのは、派手に飾られた舞台ではなく、自分と同じように受かった人たち。自分より上か、したか。そんなことは分からない。ただ、仲良くしないといけないのは確かだ。もちろん中には、「受かった」と、ひとり興奮してる人もいることだろう。
しばらくすると、全員が席に座った。緊張のせいか、ざわめきが少ない。舞台袖やその近くには、先生が沢山。多少の重圧も感じる。先生と言っても、新人から還暦近くの人までと、幅広い。あちこち眺めてる間に、校長先生の「とにかく長い話」が始まろうとした…

【スタート】
    新歓や挨拶が終わり、今度はクラスの方へ行く。俺が入学したこの学校は、「レベル」中間に当たる。一学年の人数は、1000人。クラスの数は25クラス、敷地面積は、縦横1kmの正方形である。校舎の並び方は、正六角形のそれぞれの角に向かって伸びている。アスタリスクと同じ形。食堂、多目的教室、運動施設、自然、自販機。何でも揃っている。逆に不安になってきそうなくらいに。
校訓は、〈正義は己の自由なり〉だ。教育の方針は、基本的な誠意と忠実心、平均的な能力を保つということ。
つまりこの学校は、未来の選択肢の増加が目的だ。
授業については、

共認語、体育、技術、理論、科学

の五教科が基本である。
共認語とは、どこでも通じる共通言語。
体育とは、主に体技をメインとする訓練。
技術とは、力を操る技術の育成
理論とは、力の由来と種類、構成。など。
科学とは、力を混合させる際に、最も適した方法、度合、角度、距離など、力の性質を追求する。
これらを習得した後、レベル別の「アカデミー」へと進学する。
この世界は、大きく二つの「大陸」に分かれる。それぞれ[ヴァルア大陸]と、[シルア大陸]と呼ばれ、力のことをそれぞれ[魔法]と[妖術(忍術)]と呼ぶ。アカデミーは、二つの大陸をつなぐ、[陸門橋(りくもんきょう)]の中間地点にそびえ立っている。両大陸からはっきりと見えるくらい大きいのである。橋の上に、浮かんでいる。まるで、超未来の浮遊要塞のように。
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