こんな異世界望んでません!

アオネコさん

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天使救出編

皇子は想う

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 一目惚れだった。
 光り輝く未来を見たんだ。




 俺はアスキル・ジュザ・ハビリオン。
 魔導帝国と呼ばれる、大陸でも有数の大国、その皇子だ。
 小さい頃から教育を受け、外交を学び、戦闘術すらも会得した。
 父上には子供が俺しか居らず、俺は臣民のために動いてきた。


 でも彼の前では素でいたい。



 パビリオンにある学院に通う事になって暫し、外面ではあるが皆に受け入れられつつあった俺は、ある日私用で遅れて学院に戻った。
 その途中、図書室の窓から誰かがいるのが見えたんだ。
 確か時間的にはまだ授業中だったはず。
 なぜこんな時間に、と覗いた俺は。



 そこで運命をみた。



 授業が終わるチャイムがなるまで俺は目を逸らせなかった。
 我に返った俺はふらふらとした足取りで図書室の扉を開く。
 彼はジッと本を読んでいた。
 サラサラの黒髪につぶらな瞳は黒水晶のように煌めいていて更に目を奪われる。
 そしてその下にある瑞々しい唇はぷっくりとしており、その合間から息が漏れる度、えも言われぬ感情を抱かせる。
 決して彼が絶世の美貌を持つ訳ではない。
 俺自身、自分の造形がいい事は知っているし、彼と比べても俺に軍配が上がるだろう。
 でもそうじゃない。
 見た目など関係なく、俺自身の全てが彼を求めてしまっている。
 だからどうかその目に俺を映してくれ。
 そんな本を見ずに。


「おいそこのお前」


 あぁ、彼の前では自分を偽れない。
 彼の視線を奪っている本にすら嫉妬してしまっている。
 だから自然に口調が強くなってしまう。
 どうか俺を見て。




 彼――ユウトは、ハビリオンについさっき来て入学手続きをしているらしい。
 良かった。
 俺がただ、学院生活で見逃してたわけではなかったんだな、と。
 俺の事を知らないようで、そして俺の最初の態度で少し機嫌を悪くしてしまったようで申し訳ない。
 でも、感情は反動があった方が強まると聞いている。
 素の自分で、尚且つ彼からの信頼を得なければ。
 ……難しくてもやるしかない。



 ユウトは記憶喪失らしい。
 本人がそう言って苦笑していた。
 不躾な質問をしてしまったせいで半ば感情の籠らない返答になってしまったのが反省点だろう。


 しかしユウトは記憶喪失であるが、優秀であった。
 近くで見て、一緒にいてわかった。
 光属性の本を普通に読んでいる事から光系統の魔法が使える或いは知識にある事はほぼ確実。
 基本属性以外の魔法を使えるものはそう居ない。
 それだけにユウトの出生が気になる。
 記憶喪失……何か過去にあったのかもしれない。
 ユウトの助けになりたいが、ユウト自身が優秀であるが故に俺の助けがほぼ必要ない。
 そんな考えをずっと浮かべていたせいで、生徒の一人を練習試合で怪我させてしまったのは申し訳なかった。


 ユウトは俺の想像の上をいった。
 優秀という言葉では足りなかった。
 まさかダンジョンに、しかも危険度も正確にわからない場所に一人で行き、生還するほどだとは。
 どんどん俺とユウトの差が出てくる。
 俺だって優秀であるのに。
 ユウトに何かしてあげたいのに、俺自身の力が不足している。

 だがその時、俺は思いついたのだ。
 居るだけでいいんじゃないか?と。
 昔父上も、俺がいるだけで充分だとそう言っていた。
 なら決して優秀でなくても、いるだけで充分な相手になればいい。
 恋人になれば、夫婦になれば、いつでも好きな事をしてあげられるはず。

 俺は皇子だ。
 将来の皇帝である。
 なら、出来ない事など殆どないだろう。
 そう、ユウトの出生や家族を探す事も出来る。
 今は一個人であるユウトだが、俺と婚姻する事になれば帝国の権利をもって自然に出自などを調べる事が出来るはず。
 その為にはまず、身体を結ばなければ。
 俺と強く結ばなければ。


 だから俺自身経験が無い事を打ち明け、身体を結んで欲しいと頼んだ事に頷いてくれた時は歓喜した。
 ユウトが何故か会いたがっていた女という珍しい存在を盾に交渉を迫る事も視野に入れていたが、解決した。
 良かったと心の底から安堵したがその後、事件が起きた。


 四天魔道士様の一人が敵対し、大きな騒動が起きたのだ。
 他の四天魔道士様達やユウトが居なければどうなっていた事か。

 ユウト。

 俺と共に【叡智の部屋】へ行き、敵の一人と戦ったのだが、俺は気付いたらベッドに寝かされていた。
 確かユウトが敵に飛ばされて、そこから俺が敵を剣で斬りかかった事までは覚えているが……。
 ユウトはどうなったのか、父上の心配よりも先に心を占めた。



 ユウトが無事だと聞いて部屋へと走る。
 周りの者達が驚いて道を開けてゆく。
 早く、早く無事な姿を見なくては。
 部屋へ入り、仕切りのカーテンを開くとユウトが眠っていた。
 顔や見える部分に傷のようなものは無い。
 だが、ユウトは昏睡状態らしく俺が来ても喋りかけても起きる様子が無い。
 数日もすれば起きるだろうと聞かされたが、心配な事に変わりはない。
 一日、二日……と、皇子として現在の帝国の諸々の処理を行いながら部屋と通う。
 ユウトの寝顔は、不思議とずっと見ていられるほど愛らしい。
 その顔の輪郭に沿って指を滑らせていく。
 目尻、頬、顎……そして少し上に移動すれば、柔らかな唇に辿り着いた。
 カサつきを知らぬ瑞々しい唇に自然と顔が吸い寄せられ。



 口付けで愛する者を目覚めさせる、古い話を思い出したのは唇に温かい感触が触れた時だ。




 気付いた時には俺は自室にいた。
 どうやって戻ってきたのか、記憶が曖昧で、でも、唇の感触はやけに生々しく残り。
 意識の無い者に俺はなんて事を、と頭を抱えたくなるが、視界に入るのは自身のベッド。
 先程の事で下腹部に溜まった熱を発散させようと、ベッドへと上がった。
 その時に頭に浮かべたのは、やはり彼であった。






 翌日、カーテンを開けた時に目覚めていたユウトを見て、再び昔話が頭を過ぎった。
 確か、あの後二人は結ばれたはず。
 だから俺とユウトも……。


 目覚めたユウトにいくつか説明をして、ハティオ様達にユウトが目覚めた事を説明する為、一度部屋を出た。
 ハティオ様が一緒に行くと言い出した時は何故だと思ったのだが、ユウトと俺はハティオ様と実戦授業を受けた事を思い出して納得した。
 あの授業は最近の事だったのに、既に昔の事のように思えてしまうほど、最近の出来事が濃すぎたのだと、笑ってしまう。
 そのまま部屋に行き、ユウトが居なかった事でそんな気持ちは吹き飛んだが。



 勝手に出歩いて食堂に行ったユウトを見つけ、心配だったと怒る。
 まだユウトは体調が戻っていないだろうに、一人で行動するなんて問題外だ。
 俺はそんな事を考えながら説教していたのだが。



「……良かった」


 その言葉を、声を聞いた瞬間理解する。
 ああ、同じだ、と。
 意識を向ければ、ハティオ様がユウトを見ている所だった。
 あの顔は、そう、親しい者を心配するような顔だ。
 でもそれだけじゃない、俺も同じだからわかる。
 あれは恋する者のそれだ。
 心の中で何かが燃え始める。
 相手がハティオ様だとしても負けるつもりは無い。
 ユウトの視線がハティオ様に向けられているのが無性に苛立たしく、声をかけて意識をこちらに向けさせたのは今出来るせめてもの抵抗だった。







 ユウトはモテる。
 本人はあまり気付いていないかもしれないが、魅力的過ぎるのだ。
 周りの者の目線が自然にユウトの尻に集まっているのは見ていればわかる。
 立ち上る色香は周囲を魅了し、引き寄せる。


 そしてそれが戦いから目覚めて更に強くなった。
 まるで息をするように周りの男を求めている。
 身体の全てがこちらを誘惑するように蠢いているようで。
 このままでは誰かに奪われる。
 そんな焦燥感に襲われた。



 だから気持ちを整え、準備をし、ユウトを迎えに行った。
 向こうから歩いてくるユウトは少し前にあったはずなのに、さらに色気が増し、危機感が更に募った。
 本来ならもう少し時間をかけたかったが、既に約束はしているし、今日でも構わないだろう。
 部屋に行き、今日繋がる事を伝えると驚かれた。
 それはそうだろう、俺だってそう思っていた。
 だが、ユウトだって望んでいるはずだ。
 あれだけの魅力を振りまいていながら望んでいない訳は無い。
 あれは俺へのアピールではあると思うが、少し周りに振り撒きすぎだ。
 だが、周りに影響させてしまうほど強くなる欲求を満たしてこそ男だ。
 俺の全てをユウトに与えよう。



 そうして俺はユウトをベッドへと優しく押し倒し、その日俺達は初めて繋がった。




 ゆっくりと目を開ける。
 陽の光が部屋に入ってきているので朝なのだろう。
 昨日のお昼辺りから結構な時間が経ってしまっているな、と自身の執着具合に苦笑する。
 視線を横に向けると、眠るユウトが視界に入る。
 すうすうと寝息を立てるユウトは陽を浴びて、まるで芸術品のような美しさで。


 ……初めてはもう少しカッコよく決めたかったのに、まるで動物のようにがっついてしまった。
 最初に繋がった時の醜態は一生忘れないほど後悔している。
 でもそこからは、まさに至福の時間だった。
 愛しいユウトと繋がり合い、そして自身の種を注ぐ。
 ユウトの中はまるで俺を歓迎するかのように吸い付き離さない。
 ユウトは記憶喪失なので性経験があるかどうかわからないが、あの感じは確実に俺と同じく初めてだろう事はわかった。
 だからそれが更に嬉しくて、ユウトを満足させようと頑張り、そのせいでユウトが気絶してしまったのは反省点だ。
 これからゆっくり一緒に頑張っていこう。
 気絶しないように今夜から毎日調整していけば大丈夫だろう。
 俺は再び兆しを見せ始めた下腹部を感じながらユウトが目を覚ますのを待つのだった。





 「……もう行ってしまったのか」


 城の廊下に俺の声が零れた。
 目の前の兵士からユウトが出て行った事を報告されたからだ。


 あの後、ユウトとの婚約が父上から止められた。
 記憶喪失で、ユウト自身の身の上がわからないのに、勝手に婚約するのはダメだと。
 ユウト自身もまだやる事があるのだと言っていた。
 やっと繋がれたというのに、なんて悲劇なのだろう。
 だが、諦める訳にはいかない。
 これは俺が越えなければいけない試練なのだと、そう言い聞かせる。
 俺が皇帝になれば、ユウトを万全の体制で迎えてやれる。
 記憶喪失も魔法帝国の威信をかけて治してみせよう。
 例え、それで婚約者がいるという事を思い出しても、俺に振り向かせてみせよう。
 絶対にユウトを離すものか。
俺は―――




「仕方ありませんよ、皇子様」


 俺の思考を遮るように声がした。
 隣から聞こえた声は柔らかく少し高い。
 俺達とは違う身体の仕組みを持つ珍しい存在。
 ユウトが会いたいと言っていたから最後に会わせてやろうと思っていた。
 だが、もうユウトは行ってしまった後。
 残念ではあるがまた今度の機会でもいいだろう。


 「そうですね、また今度……会える機会が出来たら、ですね」

 「ええ、楽しみに待っていますね」


 隣に向かって微笑むと、向こうもゆっくりと頷く。
 そして俺達は踵を返して部屋に戻っていく。
 次に会う時はもっと成長した自分を見せたい。
 ユウトを必ず自分の物にすると決意し俺は前を向いた。






「あ、良いところにおりましたぞ殿下」

「ウィアベル老師?」

「ユウト君がどこにいるか知らんかのぅ」

「もう既に城を出ましたが……何か?」

「なんと!いやぁ、ハティオから本を預かっておっての?それをユウト君に渡そうと思っておったんじゃがすっかり忘れておってのぉーいやぁ、ワシうっかりさん!」

「そうでしたか」





―――――――――――――――――――


皆さんお久しぶりですアオネコさんです!


なんか、一年以上更新していないという悪夢を見たんですが気の所為ですよね?ね?
……はい、申し訳ありません。
やっとの更新、なのに本編ではないという!
大丈夫です、本編もゆっくりと執筆しております!
なので、悪夢は忘れましょう!ええ!


遅ればせながら報告を一つ!
お気に入り件数が1800件を超えております!
ありがとう!ありがとうございます!
こんな更新してない作者に対して申し訳ないです!
そしてありがとうございます!

今後も不定期更新ではありますが、どうか皆様見守って、ついでに読んで下さると嬉しいです!
そして今年の皆様の健康をお祈りしております!
では!


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