神さまに嘘

１０

　だから、私はあの場所に戻ったって、見える景色は同じなんだろうって、勝手に思い込んだ。思い込むだけ思い込んで、背すじをシャキッとさせない。神さまが差し出したわずかなチャンスを、視線を逸らして見つめようともしない。それでも、神さまは礼儀正しく、どっちにするかを尋ねてくる。眠りにつきたい。そう思う気もした。深い眠りにつけば、悪いこともみんな忘れるだろう。私のちっぽけな悩み事なんて吹き飛ぶくらい、よだれを垂らして枕の中に顔をうずめていたい。つまらない。そんなことはわかっているけれども。

　時間は列車のように進む。炎の聖火ランナーが、グラウンドを一周する前に、私は決めなければならないのか。

　生き返るか、生き返らないのか、神さまはじれったく私を見つめているから、焦るよね。もう少し、時間がほしい。鼻歌交じりに、ガムでも噛んで、ストーブに火を入れて。スリッパでも履きなよ。まさか土足で入りこんではいないよね、ねえ神さま。教えて欲しい。私にどんなステキな靴をプレゼントするのか知らないけど、ちゃんと歩けるのか教えて欲しい。靴ひもは、ちゃんとちぎれずに最後まで、私を支えてくれるのだろうか。