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症例:白雪姫①

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 一目惚れだった。

 ツヤツヤな髪に青い瞳、芸能人のように整った顔立ちに優しい笑顔。

 深山妃みやまきさきは、中学校の入学式の時、同級生の東宮聖とうぐうせいに恋をした。

 ふわふわの栗色の髪に聖と同じ青い瞳。雪のような白い肌の妃は、小さい頃から可愛いと褒められて育ってきた。どんな人でも妃を見れば「可愛い」と言って褒めてくれるし、妃が笑えば男の子たちはなんでも言うことを聞いてくれた。

 妃は幼い時に自分は物語の主人公なんだと分かってしまった。





 だから聖ももちろん自分のことを好きになると思っていた。
 こんなに可愛らしい妃が告白してきて断るはずがない。きっと嬉しそうに頬を赤く染めて「俺も好きだよ」と笑ってくれるはずだと。




 けれども違った。

「ごめん。妃の気持ちは嬉しいけど、俺、幼馴染のお世話をしないといけないから。」


 幼馴染?


 こんなに可愛い私より幼馴染を優先するの?


 その幼馴染が男の子なら許せた。けれど女の子だった。



(私の方がずっと可愛いのに!!)


 主人公の自分を差し置いてあんな子が愛されるはずがない。



「だってこの世で一番美しいのは私なんだから!」



 本気でそう思っていた。



 けれど、聖が幼馴染の真凛を見つめる目を見て気付いた。






(脇役が私なの?)
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