愚痴聞きのカーライル ~女神に捧ぐ誓い~

チョコレ

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第一章 霊草不足のポーション

(12)闇を暴く決意

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広場の静寂が緊張感をさらに際立たせる中、監査官の冷たい声が響く。「これは驚いたな。領主の娘様が、こんな場違いな陰謀論を展開するとは。だが君の“意見”に、果たして誰が耳を貸すだろうか?」

監査官の皮肉たっぷりの言葉に、アルマは微動だにせず、その視線をしっかりと彼に返した。その毅然とした態度に、監査官の余裕にも微かな亀裂が走る。

「私も特級ポーションの紛失を疑っていないわけではない。」監査官は冷淡な口調で続けた。「だが、それを誰かに押し付ける証拠もない。王子の側近全員の荷物を調べようものなら、不敬罪で処罰されるだろうし、私にはその権限もない。私はただの監査官だ。騒ぎを起こせば、王子の儀礼に支障をきたす。それを君が背負えるとは到底思えないが?」

その言葉に込められた挑発を、アルマは落ち着いた表情で受け止めた。「証拠がない限り、誰も動かない…つまり、そういうことですね?」

彼女はゆっくりとローブのポケットに手を伸ばした。その動作に監査官の目がわずかに鋭く光り、警戒の色を浮かべる。しかしアルマは平然とした態度で、小瓶を取り出した。その小瓶は龍の文様が彫られた美しいデザインで、中には真紅の液体が揺れている。その存在感は圧倒的で、場の空気が一変した。

「これが証拠です。」アルマの声には、冷静さと自信が溢れていた。彼女の手元には、淡い光を放つ小瓶が握られている。その光は暗闇の中で柔らかに揺れ、周囲の空気を一瞬で引き締めた。

「これは第三王子の宿で発見しました。隠蔽魔法で身を隠しながら、探知魔法を駆使してマナの流れを追跡した結果です。」彼女はその小瓶を軽く持ち上げ、監査官の視線に晒すようにして続けた。「建物内には多くのマナ反応があり、それらを一つ一つかき分ける作業は骨が折れましたが、特級ポーションのマナは際立って強かったため、案外目立っていましたよ。」

監査官の表情が一瞬で変わる。目は小瓶に釘付けになり、その顔には動揺が露わだった。アルマは一歩前に進み、小瓶を手に高く掲げた。「あなたが何を企んでいるのかは分かりません。でも、この証拠があれば話は変わりますわ。」

監査官の額に汗が滲み、手が震え始める。冷静を装おうとするが、その余裕は次第に崩れていく。「私がそんなことを…」彼の声は力を失い、言葉が続かなかった。

カーライルは少し離れた場所でそのやり取りを見守りながら、小さく呟いた。(嬢ちゃん、本当にやりやがったな。証拠を作るってこういうことだったか…。)

アルマは監査官に向かってさらに鋭い一言を放った。「第三王子の儀礼に支障をきたすのは、むしろあなたの行動次第ではなくて?ポーション工房の密造や特級ポーションの隠蔽。領主の娘として、これ以上見過ごすわけにはいきません。」

その瞬間、監査官の表情が一変した。瞳には焦りとともに何かを決意したかのような光が宿り、彼の手がゆっくりとコートの内側に伸びる。取り出したのは黒く輝く魔石だった。その魔石は周囲の光を吸い込むかのように歪んだオーラを放ち、異様な存在感を放っている。

「闇のマナが閉じ込めれた魔石…!」アルマは目を見開き、カーライルもすぐに状況を察知した。「嬢ちゃん、離れろ!」彼の警告と同時に、監査官は魔石を宙高く投げ上げた。

魔石は空中で不気味な光を放ち、周囲の空気を歪ませ始める。そして次の瞬間、黒い波動が放射状に広がり、広場全体を飲み込んでいく。その波動に触れた瞬間、アルマとカーライルは立っている感覚を失い、重力が引きずるような力に体を引き寄せられた。

「くっ…!」カーライルは抵抗しようと踏ん張るが、波動の力は強大で抗うことができない。アルマもまた、必死に体勢を保とうとするが、その力に引き込まれていく。

広場全体が黒い闇に覆われ、次第に視界が閉ざされていく。そして、二人の姿は闇の中へと消えていった。静けさを取り戻した広場には、冷たい風が吹き抜けるだけだった。監査官の姿もまた、闇とともに消え去り、そこには何事もなかったかのような静寂が漂っていた。月明かりがわずかに広場を照らす中、アルマとカーライルの行方を知る者は誰もいなかった。
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