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第四章 解き放たれし影
(37)多彩な遺物
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スライムがその巨大な体を震わせる。内部には四つの遺物が浮遊していた。三角錐の遺物、正方形の遺物、球体の遺物、菱形の遺物――それらには古代文字が刻まれ、それぞれが不吉な光を放っている。その光は徐々に強まり、戦場全体を覆い尽くすように空間を震わせた。
《起動確認…マナ収束開始。構成遺物の同期を確認》
無機質な音声が、どこからともなく響く。
「どんな攻撃を仕掛けてくるのか全く予想がつかない…ならば、先手必勝だ!」
ロクスは鋭い声を上げると、炎を纏った剣を一閃させた。
「炎刃斬《ブレイズスラッシュ》!」
燃え盛る剣が巨大なジェル状の体を切り裂く。しかし、スライムは波打ちながらその衝撃を吸収し、内部に浮遊する三角錐の遺物が鈍い光を放つ。
《模倣機能、展開…対象の特性を反映》
鈍い振動とともに、スライム全体に淡い光が走る。透明な剣が次々と形成され、それらはまるでロクスの手にある剣を模倣したかのような形状をしていた。
「模倣…だと?」
ロクスが驚愕する間もなく、スライムの体内から生成された透明な剣が弾丸のように飛び出す。空気を切り裂きながら放たれる無数の剣は、凶器そのものだった。
「天剣の騎士が誇るミスリルソードを模倣するとは…!」
ロクスは剣を構え直し、迫り来る透明な剣を一閃で弾き返した。火花が散り、鋼の音が戦場に響き渡る。
「硬度は本物には及ばないが…数が厄介だ!」
次々と襲いかかる剣を捌きながら、ロクスは眉間に皺を寄せた。一方でスライムの内部では、三角錐の遺物がさらに輝きを増し、新たな剣を次々と生成している。スライムの巨大な体が膨らむごとに、剣の数は増え続け、戦場全体を覆い尽くそうとしていた。
「影で受け流す…!」
ゼフィアは低く口ずさみながら、詠唱を始めた。
「深淵の闇よ、無限の虚無よ、全てを呑み込み、虚空へ飛ばせ! 影渦空!」
詠唱の終わりと共に、漆黒の球体が戦場に出現する。その球体はスライムが放つ無数の剣を次々と吸い込み、影と共に消し去っていった。
「アルマ様が消え去った時と同じ…。」
ゼフィアはその球体を見据え、かつて目撃した異様な光景を思い出していた。その影の魔法が持つ力に希望を見出しながらも、冷静さを失わない声で続ける。
「この球体で剣を受ける限り、我々に剣は届かない。だが、これを維持するには膨大なマナが必要だ…。長くは持たない…。」
ゼフィアの歯を食いしばる音がわずかに聞こえる中、スライムの体内に漂う剣がさらに増え、戦場全体を覆い尽くすような勢いで飛び出してきた。
「相手の動きを止めるしかない!」
ロクスは即座に動き、スライムの側面に回り込むと冷気を纏った剣を振り上げる。
「氷天衝!」
鋭く冷たい刃がスライムを貫き、瞬く間に氷柱を生成していく。スライムの体が徐々に凍りつき、その中で漂っていた剣の動きも止まった。戦場は一瞬の静寂に包まれた。
「動きが止まったようだな…。」
ロクスは慎重に剣を下ろし、状況を見守る。
《補助機能起動…適応補正開始》
「いや…待て!」
ゼフィアの警戒の声が鋭く響く。次の瞬間、スライムの内部に埋め込まれていた菱形の遺物が急速に回転を始めた。それに応じるように凍りついていたスライムの体が柔軟なジェル状へと戻り始める。
「スライムの弱点を遺物で補う仕組みか…! これは手強いぞ…。」
ロクスが低く呟く間もなく、スライムは再び巨大な体を震わせ、威圧感を放った。その様子にゼフィアは斬撃が通用しないと判断し、唇を引き結んだ。
「ならば…これはどうだ!」
ゼフィアはこれまで防御に徹していた闇のマナを攻撃へと転じ、鋭い声で詠唱を始めた。
「漆黒の虚空に眠りし刃よ、冥府の息吹を纏いし鎌となれ!冥裂鎌!」
詠唱が終わると同時に、漆黒の巨大な鎌がいくつも戦場に顕現する。その刃は鋭い音を立てながらスライムへと降り注ぎ、一撃ごとにジェル状の体を深く削り取っていった。
しかし――
《防御機能起動…対衝撃装甲展開》
スライムの内部で正方形の遺物が淡い光を放つ。それに呼応して、スライムの表面が硬質なガラス状へと変化し、迫り来る黒い鎌を鋭い音と共に弾き返す。
「硬化するだと…!」
ゼフィアの驚愕の声に、ロクスが冷静にスライムを観察しながら口を開いた。
「このスライムにはコアのような明確な弱点がないようだ。だが、体内の四つの遺物が、その巨体を保つ鍵になっているのは間違いない。そしてジェルを削っても、遺物が補完し続ける仕組みのようだ。」
スライムは体積が減ったかに見えたが、遺物の力によって元の巨大な姿へと戻りつつあった。
「つまり、圧倒的な一撃でジェルそのものを削り切るか、内部の遺物を直接破壊しない限り、この戦いは終わらない。」
ロクスの分析に、ゼフィアは唇を噛みしめた。
「だが…召喚獣を呼び出す力はもう残されていない。」
ロクスも渋い表情でうなずく。
「私も同じだ。天剣の奥義を放つ余力はもうない。」
ゼフィアは静かに息を整えながら目を閉じ、意識を集中させた。
「ならば、私たちに残された道は一点突破だけだ。隙を突いて遺物を狙うしかない。」
ロクスは剣を握り直し、ゼフィアを見据えた。
「お前の魔法で、一点集中の攻撃を加えろ。私も剣で隙を作る。」
「承知した。」
短く返事をし、彼女は再び戦場に意識を戻した。だがその瞬間、不気味な無機質な声が部屋中に響き渡った。
『発射完了。屋上の警戒を解除します…』
その冷静な響きが却って不安を煽る。ゼフィアは小さく震える声で問う。
「…どうなった…我が里は…!」
ロクスは冷静さを保ちながら剣を構え直し、ゼフィアに向けて静かに告げた。
「アルマ様が砲撃を食い止めたと信じるしかない。今は目の前の敵を片付けることが最優先だ。」
その言葉に、ゼフィアは深く息を吐き、気持ちを切り替える。
「あぁ…承知した!」
互いに決意を固め、二人は再び目の前のスライムへと向き直った。遺物の不気味な輝きが戦場を覆う中、勝利への糸口を探し始めた。
《起動確認…マナ収束開始。構成遺物の同期を確認》
無機質な音声が、どこからともなく響く。
「どんな攻撃を仕掛けてくるのか全く予想がつかない…ならば、先手必勝だ!」
ロクスは鋭い声を上げると、炎を纏った剣を一閃させた。
「炎刃斬《ブレイズスラッシュ》!」
燃え盛る剣が巨大なジェル状の体を切り裂く。しかし、スライムは波打ちながらその衝撃を吸収し、内部に浮遊する三角錐の遺物が鈍い光を放つ。
《模倣機能、展開…対象の特性を反映》
鈍い振動とともに、スライム全体に淡い光が走る。透明な剣が次々と形成され、それらはまるでロクスの手にある剣を模倣したかのような形状をしていた。
「模倣…だと?」
ロクスが驚愕する間もなく、スライムの体内から生成された透明な剣が弾丸のように飛び出す。空気を切り裂きながら放たれる無数の剣は、凶器そのものだった。
「天剣の騎士が誇るミスリルソードを模倣するとは…!」
ロクスは剣を構え直し、迫り来る透明な剣を一閃で弾き返した。火花が散り、鋼の音が戦場に響き渡る。
「硬度は本物には及ばないが…数が厄介だ!」
次々と襲いかかる剣を捌きながら、ロクスは眉間に皺を寄せた。一方でスライムの内部では、三角錐の遺物がさらに輝きを増し、新たな剣を次々と生成している。スライムの巨大な体が膨らむごとに、剣の数は増え続け、戦場全体を覆い尽くそうとしていた。
「影で受け流す…!」
ゼフィアは低く口ずさみながら、詠唱を始めた。
「深淵の闇よ、無限の虚無よ、全てを呑み込み、虚空へ飛ばせ! 影渦空!」
詠唱の終わりと共に、漆黒の球体が戦場に出現する。その球体はスライムが放つ無数の剣を次々と吸い込み、影と共に消し去っていった。
「アルマ様が消え去った時と同じ…。」
ゼフィアはその球体を見据え、かつて目撃した異様な光景を思い出していた。その影の魔法が持つ力に希望を見出しながらも、冷静さを失わない声で続ける。
「この球体で剣を受ける限り、我々に剣は届かない。だが、これを維持するには膨大なマナが必要だ…。長くは持たない…。」
ゼフィアの歯を食いしばる音がわずかに聞こえる中、スライムの体内に漂う剣がさらに増え、戦場全体を覆い尽くすような勢いで飛び出してきた。
「相手の動きを止めるしかない!」
ロクスは即座に動き、スライムの側面に回り込むと冷気を纏った剣を振り上げる。
「氷天衝!」
鋭く冷たい刃がスライムを貫き、瞬く間に氷柱を生成していく。スライムの体が徐々に凍りつき、その中で漂っていた剣の動きも止まった。戦場は一瞬の静寂に包まれた。
「動きが止まったようだな…。」
ロクスは慎重に剣を下ろし、状況を見守る。
《補助機能起動…適応補正開始》
「いや…待て!」
ゼフィアの警戒の声が鋭く響く。次の瞬間、スライムの内部に埋め込まれていた菱形の遺物が急速に回転を始めた。それに応じるように凍りついていたスライムの体が柔軟なジェル状へと戻り始める。
「スライムの弱点を遺物で補う仕組みか…! これは手強いぞ…。」
ロクスが低く呟く間もなく、スライムは再び巨大な体を震わせ、威圧感を放った。その様子にゼフィアは斬撃が通用しないと判断し、唇を引き結んだ。
「ならば…これはどうだ!」
ゼフィアはこれまで防御に徹していた闇のマナを攻撃へと転じ、鋭い声で詠唱を始めた。
「漆黒の虚空に眠りし刃よ、冥府の息吹を纏いし鎌となれ!冥裂鎌!」
詠唱が終わると同時に、漆黒の巨大な鎌がいくつも戦場に顕現する。その刃は鋭い音を立てながらスライムへと降り注ぎ、一撃ごとにジェル状の体を深く削り取っていった。
しかし――
《防御機能起動…対衝撃装甲展開》
スライムの内部で正方形の遺物が淡い光を放つ。それに呼応して、スライムの表面が硬質なガラス状へと変化し、迫り来る黒い鎌を鋭い音と共に弾き返す。
「硬化するだと…!」
ゼフィアの驚愕の声に、ロクスが冷静にスライムを観察しながら口を開いた。
「このスライムにはコアのような明確な弱点がないようだ。だが、体内の四つの遺物が、その巨体を保つ鍵になっているのは間違いない。そしてジェルを削っても、遺物が補完し続ける仕組みのようだ。」
スライムは体積が減ったかに見えたが、遺物の力によって元の巨大な姿へと戻りつつあった。
「つまり、圧倒的な一撃でジェルそのものを削り切るか、内部の遺物を直接破壊しない限り、この戦いは終わらない。」
ロクスの分析に、ゼフィアは唇を噛みしめた。
「だが…召喚獣を呼び出す力はもう残されていない。」
ロクスも渋い表情でうなずく。
「私も同じだ。天剣の奥義を放つ余力はもうない。」
ゼフィアは静かに息を整えながら目を閉じ、意識を集中させた。
「ならば、私たちに残された道は一点突破だけだ。隙を突いて遺物を狙うしかない。」
ロクスは剣を握り直し、ゼフィアを見据えた。
「お前の魔法で、一点集中の攻撃を加えろ。私も剣で隙を作る。」
「承知した。」
短く返事をし、彼女は再び戦場に意識を戻した。だがその瞬間、不気味な無機質な声が部屋中に響き渡った。
『発射完了。屋上の警戒を解除します…』
その冷静な響きが却って不安を煽る。ゼフィアは小さく震える声で問う。
「…どうなった…我が里は…!」
ロクスは冷静さを保ちながら剣を構え直し、ゼフィアに向けて静かに告げた。
「アルマ様が砲撃を食い止めたと信じるしかない。今は目の前の敵を片付けることが最優先だ。」
その言葉に、ゼフィアは深く息を吐き、気持ちを切り替える。
「あぁ…承知した!」
互いに決意を固め、二人は再び目の前のスライムへと向き直った。遺物の不気味な輝きが戦場を覆う中、勝利への糸口を探し始めた。
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