天子は輪廻で夢を見る

りん

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第参章 ハジマリを創り出す者

3

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   「真衣、おはよう。」

 背中越しに掛けられた声に少しばかりの疑念を抱きながら真衣は振り向いた。

   「ん、おはよ。藍。」

 最近、真衣に対する藍の声が、表情が、態度が固くなっている事に気が付いた。
勿論だがそれは、微妙な変化であり、真衣以外の者が見ても気付くどころか違和感すら感じないであろう。
 先日、心配してどうしたのか聞いたのだが、「少し疲れてるだけ。」と、何でも無い様に笑って返されるだけであった。
 それが嘘だと言うことに真衣が気付いた様に、藍も真衣がそう思っている事には気付いていた。

 その日を堺に、より一層藍の態度が余所余所しく、そして、言葉を選ぶ様に喋るようになった。

  そんな藍を見る度に真衣は疑う心を持ってしまう。


   『彼女は貴女を欺いている。』

空兎の言葉が胸の奥で反芻し重りの様に募る度に疑惑、信頼、憤然……様々な想いがせめぎ合う。
 そしてその思いも

      (藍が私を騙すはずがない)

と無理矢理打ち消した。


   「真衣?」

 隣に立った藍が訝しげに真衣を見つめる。

   「ごめん、何でもない。」

 果たして藍は、その声が震えていた事に、その声に信条が込められていた事に気付いただろうか。




  まだ、胸の濁りは消えぬまま。
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