誕生日

誕生日

side 桜子
『桜子へ
お誕生日おめでとう。最近は話せてないよね。…私がいじめられてるから。
 大丈夫だよ。桜子は悪くないし恨んでもないから。
でも、でもね、昔みたいに戻りたいよ。
今日だけでもいいから。
放課後、裏庭に来て。まってるから。』
<元>親友の優奈からの手紙。今日は私の誕生日。お祝いをするつもりなのかな…？
ーーでも私は…優奈の事をいじめてたのに…？
優奈がいじめのターゲットになったのは中二の頃だった。本当に突然だった。
そして私はー…いじめのターゲットになるのが怖くて優奈から離れたんだ。
それが続いて、私達は中三になった。
半年前の裏切りを…許してくれるの…？
ずっと。ずっと罪悪感で潰されそうだった。私は、放課後、裏庭へと…行った。

優奈side
「桜子…来てくれるカナ…？」
私は今、裏庭ーーではなくて学校の屋上にいた。裏庭の真上。裏庭が良く見える。裏庭を眺めていると人影が…桜子が来た。
何故屋上に居るのか。それは、桜子に誕生日プレゼントをわたすためだった。
とってもとってもステキなプレゼント。
ーー私は桜子の裏切りを忘れはしない。
確かに半年間辛かった。無視されたり物がなくなったり、歩いていると足を出されたり…。でも私はそんなのどうってことなかった。
半年前。いじめが始まった時から私はずっとこの日を待ち続けた。
この日のために生き続けた。

桜子side
「あれ…？優奈いない……やっぱ来ないよね…」
少しガッカリした。でもホッとした。
だって、こんな所見られたら私までハブられるし。罪悪感は…今でももちろんある。でも、それよりも恐怖の方が大きかった。
ーーー優奈みたいにはなりたくない。
           それが本当の、本当の言葉だった
ごめんね優奈。私汚れてんだ。…私は友情よりも自分が大事なんだ…。ごめんね…。
でも、来ないとしても、もう少し待ってみようと思った。
少しでも優奈に傷つけられて罪悪感を減らすために。

優奈side
「桜子…来てくれたんだ。ありがとう。……誕生日おめでと。」
桜子…私ずっと辛かったよ。恨んでた。ずっと。
手紙に書いた恨んでない。なんて嘘。
本当はずっとずっとずっと恨んでた。
ねぇ知ってる？私が1番辛かったのは桜子が私のことを裏切ったときだったんだよ。
大好きで信じてた桜子が私を裏切った時。苦しかったよ。ねぇ、この気持ちわかる？辛くて辛くて……
「あー…嫌なこと思い出しちゃったよ…桜子…酷いなぁ…ずっと信じてたのに…」
でももう明日からは、いや、1時間後にはもう恨みなんてないからさ。
桜子……仲良しに戻ろうよ…
誕生日おめでとう……！！！

桜子side
裏庭に来てから5分がたった。せめて30分は待とうって決めてる。アラームをセットした。今から25分。来るかな…。
アラームが残り23分をさした。

優奈side
「桜子どのくらいいるんだろうな～。愛を試されてる？！……なんちゃって。笑える。……ははっ、」
私は屋上の柵を超えた。
私は桜子の事を愛していた。友人としてじゃなくて恋愛的な方で。
でも、言えなかった。怖かった。
「桜子…私は今でも桜子のことがすきなんだよぉ……？笑うと目が少しタレ目になるとことか喧嘩した時の顔とかも…全部が愛おしかったの……！ねぇ！！！」

桜子side
アラームが残り15分をさした。
やっぱり来ないのかな…？どうなんだろ…とりあえずあと、15分のことだ…。

優奈side
「桜子……桜子が持っているのは罪悪感じゃないんだよ…。気づかないの…？私を裏切った時の顔、いじめを見てる時の顔…笑ってたんだよ…？あははっ…でも、そんなとこも…好きなんだよ…ぉ？」

桜子side
私は無意識でうちにアラームに目をやった。
……早く帰りたい。そう思った。
そう思ってしまった。
残りはあと5分だった。

優奈side
「はっぴぃばぁすでぇとぅゆーぅ
    はっぴぃばぁすでぇとぅゆーぅ
    はっぴぃばぁずでぇ桜子ぉ～🎶」
笑いがこみあげる。すると、涙も出てきた。なんでだろ。泣き笑い状態。悲しいのに嬉しい。辛いのに、楽しい。
「プレゼントだよ、桜子。誕生日おめでとう。」
私は1歩踏み出した。
落ちる、落ちる。ぐるぐるふんわり宙に浮く。軽いのに重くって、変な感じ。
「桜子おめでとう。」
涙がでてきた。そして、なんでかな、勝手に「ごめんね、さよなら」っていっちゃった。

桜子side
嫌な予感。なんでだろ。私は数歩前に出た。上を見上げると優奈がいた。
柵超えてる…？なんデ…？
「優奈？！」って叫びたい。叫べない。
どうしてだろう。
身体中が固まって、喉が閉まった。
私は目を閉じようとした。
その時優奈が、1歩踏み出した。
優奈の身体が宙に浮いた。綺麗。とびたった優奈は美しく見えた。
涙が流れてきた。
私の右側でガサガサという音がして木の葉が舞った
頑張って首を動かした。優奈だった。
赤色が広がっていった。
涙が止まらないくらいに美しかった。
恐怖よりも感動が大きかった。
喉が震えた。

優奈side
あれ…？失敗したみたいだな…ぁ。桜子が泣いてる…
どう？？欲しいものあげられたよね…？
桜子は他の子とは違っていた。
例えば、子猫が引かれた時。
皆は気味悪がったり哀れんだりしていたけど桜子はわらってた。驚いた。
けど、すんなり受け入れられた。
……桜子喜んでる…？