12 / 29
12 ガレス
しおりを挟む
貴族の令息、令嬢は必ず学園に通わなければいけないなどと、平民の俺は知る由もなかった。
長い者で6年、短い者で3年通うらしい。といってもほとんどの者が王都の6年制の学園に13歳から通うらしい。
だが、ココや近隣のご令嬢たちは16歳から修道院に附属する女学園に通う者が多いとか。そして、その女学園は王都ほど遠くはないが通うほど短い距離ではない為、寮生活になるという。
・・・3年も、ココに会えなくなるのか。がくり、と力が抜けて跪きそうになった。──いや、今も会えてはいないのだが。コレットを通して勝手にココを近くに感じていたのだ。
それに、確かにコレットの心配も頷ける。
大げさでなく箱入り中の箱入りのお嬢様のココに、大勢の他人と朝も昼も夜も一緒とか、そんな事ができるのか。
コレットの話に、嫌な汗をかいた。
その後、俺は将軍の執務室に駆け込んだ。
「将軍!俺を、お嬢様の護衛にしてくれ!」
「──急になんだ」
将軍は呆れたように、護衛二人と第1部隊隊長を体にくっつけたまま目の前まで来た俺を見やった。
脳筋に呆れられるとは屈辱だ。
「俺がお嬢様の護衛に付く。そして、お嬢様が安心して、いつでもどこにでも行けるようにするんだ!」
「お前、そこまでお嬢様のことを・・・?」
俺の両腕を後ろで拘束中の第1部隊隊長が呟いた。
そこまでどころか、どこまでも俺の頭の中はココでいっぱいだ。
「──もういいぞ、離してやれ」
「「「はっ」」」
将軍の一声で、ようやくごつごつとした筋肉の固まり達から解放された。
「・・・直情型の脳筋は厄介だな」
「俺をあんたと一緒にするな」
「むむ、──以前お前にココの護衛を頼んだら断ったじゃないか」
「状況が変わったんだ。お嬢様は外に出たがっている。──今度こそお嬢様に、世界は美しくて優しくて、お嬢様の味方なんだと教えてやりたい。安心させてあげたいんだ」
「・・・そうか。わかった。ココの護衛はガレス、お前に頼もう」
「将軍!脳筋は話が早くて助かるぜ!」
ドカッ、足を瞬時に蹴られ、床に転がった。直ぐに立ち上がったが、めちゃくちゃ痛い。
「言葉が過ぎるぞガレス!私の将軍に!」
蹴ったのは第1部隊隊長のアッシュだ。
「・・あー、私はお前だけの将軍ではないがな」
「はっ、失礼しました。つい心の声が」
「・・・・・そうか」
第1部隊隊長のアッシュが将軍に入れ込んでる、という噂は本当だったようだ。俺には関係ないが。
「だが、どうやってココに護衛を受け入れてもらうかな、私ともようやく食事を共にしてくれるようになったばかりなのだ」
「そこは、俺に任せてくれ。一つ考えがある」
そう、ずっと温めてきた案があるのだ。
「それと将軍、もう一つ頼みがあるんだ」
ココの為のもう一つの頼みを願い出た。
その頼みとは、ココの為の部隊を作ること。護衛が一人、二人いても完璧にココを守ることはできないからだ。
だが、これには将軍は難色を示した。
「兵は国の為のもの。一個部隊を娘に割くことはできない」
「国の為?軍学校も兵の運営も、一切国から金は出てないと聞いたぞ?」
「・・・確かにそうなんだが、その分、税金をかなり免除されているんだ」
どうも国との駆け引きがあるようだ。
「だったら遊撃部隊を作ってくれ。助っ人部隊だ。どこかの部隊が人手を必要とした時に駆け付ける部隊だ」
「・・・なるほど。考えてみよう」
「ああ、そもそも真っ正直に生きているアンタのシワ寄せが娘に来てるんだ。それを忘れるな」
ぱこん、と第1部隊隊長に後頭部を引っぱたかれた。
将軍の苦しそうな表情に、確かに言い過ぎた、と反省した。
だが、ココが連れ去られたあの事件が俺は忘れられないんだ。
間一髪で助け出すことができたが、あれは奇跡だった。
何度も繰り返し見る悪夢の中では、何度もココの泣き叫ぶ声を聞いた。
あれを現実にしてはならない。
その後、隊員10人の遊撃部隊が第6部隊として編成され、俺が隊長に抜擢された。ココの護衛とかけ持ちだ。
それはつまり、遊撃部隊は主にココを守る為の部隊だ、ということだ。
そして、護衛として任務に着くため、将軍に連れられ屋敷の3階にあるココの部屋に入った。
この時、ココは14歳。
初めて鍛錬場で出会ってから6年が、中庭のあの事件があってから4年が経っていた。
ココは出会った頃より背が伸びていた(当たり前だ)。そして、小さな顔にスラリとした四肢、燃えるような紅い髪と同じ色の大きな瞳。
ココは、まるで咲き始めの薔薇のように美しかった。
だが真っ白な顔色で、今にも倒れそうに、がたがたと震えている。
男に対し、恐怖を覚えてしまうのだ。俺の体型も、軍学校に入ってから筋肉ムキムキになってしまったから、なおさらだろう。
ぐら、とココがよろけた。
俺はすかさず前に出てココを受け止めた。
そして、言ったのだ。
「んもう!危ないじゃないのよう!お嬢様ったらドジっ子なのねえ!」
オネエ言葉、ってヤツだ。
ココも将軍も、ポカンと呆気に取られていたが、ココが先に立ち直った。
そして、笑顔でよろしく、と言ってくれた。最高の笑顔だった。
反して、将軍はなかなか顔が戻らなかったな。考えがあるって言っておいただろうに。
長い者で6年、短い者で3年通うらしい。といってもほとんどの者が王都の6年制の学園に13歳から通うらしい。
だが、ココや近隣のご令嬢たちは16歳から修道院に附属する女学園に通う者が多いとか。そして、その女学園は王都ほど遠くはないが通うほど短い距離ではない為、寮生活になるという。
・・・3年も、ココに会えなくなるのか。がくり、と力が抜けて跪きそうになった。──いや、今も会えてはいないのだが。コレットを通して勝手にココを近くに感じていたのだ。
それに、確かにコレットの心配も頷ける。
大げさでなく箱入り中の箱入りのお嬢様のココに、大勢の他人と朝も昼も夜も一緒とか、そんな事ができるのか。
コレットの話に、嫌な汗をかいた。
その後、俺は将軍の執務室に駆け込んだ。
「将軍!俺を、お嬢様の護衛にしてくれ!」
「──急になんだ」
将軍は呆れたように、護衛二人と第1部隊隊長を体にくっつけたまま目の前まで来た俺を見やった。
脳筋に呆れられるとは屈辱だ。
「俺がお嬢様の護衛に付く。そして、お嬢様が安心して、いつでもどこにでも行けるようにするんだ!」
「お前、そこまでお嬢様のことを・・・?」
俺の両腕を後ろで拘束中の第1部隊隊長が呟いた。
そこまでどころか、どこまでも俺の頭の中はココでいっぱいだ。
「──もういいぞ、離してやれ」
「「「はっ」」」
将軍の一声で、ようやくごつごつとした筋肉の固まり達から解放された。
「・・・直情型の脳筋は厄介だな」
「俺をあんたと一緒にするな」
「むむ、──以前お前にココの護衛を頼んだら断ったじゃないか」
「状況が変わったんだ。お嬢様は外に出たがっている。──今度こそお嬢様に、世界は美しくて優しくて、お嬢様の味方なんだと教えてやりたい。安心させてあげたいんだ」
「・・・そうか。わかった。ココの護衛はガレス、お前に頼もう」
「将軍!脳筋は話が早くて助かるぜ!」
ドカッ、足を瞬時に蹴られ、床に転がった。直ぐに立ち上がったが、めちゃくちゃ痛い。
「言葉が過ぎるぞガレス!私の将軍に!」
蹴ったのは第1部隊隊長のアッシュだ。
「・・あー、私はお前だけの将軍ではないがな」
「はっ、失礼しました。つい心の声が」
「・・・・・そうか」
第1部隊隊長のアッシュが将軍に入れ込んでる、という噂は本当だったようだ。俺には関係ないが。
「だが、どうやってココに護衛を受け入れてもらうかな、私ともようやく食事を共にしてくれるようになったばかりなのだ」
「そこは、俺に任せてくれ。一つ考えがある」
そう、ずっと温めてきた案があるのだ。
「それと将軍、もう一つ頼みがあるんだ」
ココの為のもう一つの頼みを願い出た。
その頼みとは、ココの為の部隊を作ること。護衛が一人、二人いても完璧にココを守ることはできないからだ。
だが、これには将軍は難色を示した。
「兵は国の為のもの。一個部隊を娘に割くことはできない」
「国の為?軍学校も兵の運営も、一切国から金は出てないと聞いたぞ?」
「・・・確かにそうなんだが、その分、税金をかなり免除されているんだ」
どうも国との駆け引きがあるようだ。
「だったら遊撃部隊を作ってくれ。助っ人部隊だ。どこかの部隊が人手を必要とした時に駆け付ける部隊だ」
「・・・なるほど。考えてみよう」
「ああ、そもそも真っ正直に生きているアンタのシワ寄せが娘に来てるんだ。それを忘れるな」
ぱこん、と第1部隊隊長に後頭部を引っぱたかれた。
将軍の苦しそうな表情に、確かに言い過ぎた、と反省した。
だが、ココが連れ去られたあの事件が俺は忘れられないんだ。
間一髪で助け出すことができたが、あれは奇跡だった。
何度も繰り返し見る悪夢の中では、何度もココの泣き叫ぶ声を聞いた。
あれを現実にしてはならない。
その後、隊員10人の遊撃部隊が第6部隊として編成され、俺が隊長に抜擢された。ココの護衛とかけ持ちだ。
それはつまり、遊撃部隊は主にココを守る為の部隊だ、ということだ。
そして、護衛として任務に着くため、将軍に連れられ屋敷の3階にあるココの部屋に入った。
この時、ココは14歳。
初めて鍛錬場で出会ってから6年が、中庭のあの事件があってから4年が経っていた。
ココは出会った頃より背が伸びていた(当たり前だ)。そして、小さな顔にスラリとした四肢、燃えるような紅い髪と同じ色の大きな瞳。
ココは、まるで咲き始めの薔薇のように美しかった。
だが真っ白な顔色で、今にも倒れそうに、がたがたと震えている。
男に対し、恐怖を覚えてしまうのだ。俺の体型も、軍学校に入ってから筋肉ムキムキになってしまったから、なおさらだろう。
ぐら、とココがよろけた。
俺はすかさず前に出てココを受け止めた。
そして、言ったのだ。
「んもう!危ないじゃないのよう!お嬢様ったらドジっ子なのねえ!」
オネエ言葉、ってヤツだ。
ココも将軍も、ポカンと呆気に取られていたが、ココが先に立ち直った。
そして、笑顔でよろしく、と言ってくれた。最高の笑顔だった。
反して、将軍はなかなか顔が戻らなかったな。考えがあるって言っておいただろうに。
36
あなたにおすすめの小説
【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました
えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。
同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。
聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。
ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。
相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。
けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。
女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。
いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。
――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。
彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。
元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?
梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。
そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。
何で!?
しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に?
堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる