おっさんは異世界で焼肉屋する?ー焼肉GOD

ちょせ

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建国祭3日目 3 神々の宴

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抜けた天井からはパラパラと破片が降っ来る
まるで雨音を聞いているかの様だった

「なぜ・・・私は生きているの・・かしら」

シャインとシャイニーはぐるぐる巻にされて床に転がされている

まだ意識は戻っていないようだ

ウルグインの王は口からブクブクと泡を吹いて倒れたままで、拘束まではされていないがあれはきっと当分目を覚まさないし覚ました所で動けないだろう

ヴァネッサは先程目を覚ました

そこで出た言葉が先程のなぜ生きているのか?である

「ん、起きたか。見ての通り弟さんは拘束させて貰ってるし、あんたもーもう打つ手はないだろ?何故こんな事になってるか教えて貰おうか」

「あなた方、トールはどうしたの?」

呼び出したはずのトールが居ない事に気づく
気を失う前の記憶では確かに呼び出したはずで・・・

「はんっ!あんな雑魚カンザキがワンパンだったわよ!」

キャサリンがシャドウボクシングしながら言った
なんかテンションアップしてるな・・

「なんで、あんな不完全な召喚なんてしたんだ?死ぬところだったろ」

カンザキはポータブル猫印コンロでお湯を沸かしてコーヒーを淹れている
彼女は実際には召喚で死んでいたのだが、それはショックが大きいので伏せておく

「不完全・・・そうなのね。使えば命が無くなるとしか思ってなかったわ」

ヴァネッサはキャサリンとカンザキをじっと眺める
二人には傷一つ、汚れ一つついていない

きっと本当に一撃だったのだろうと納得してしまう
信じられない話だが

「あなた達、逃げたほうがいいわよ。トールとは比べ物にならない程の召喚魔法がまだこの国には存在しているわ。それにこの計画が失敗しちゃったってことはもう議会はわかってるから出てくるわよ」

「どうせ逃げても一緒なんだろ?だったらここで食い止めなきゃな」

「いいえ、あなた方の国まではいかないはずよ。それはこの・・・ウルグインの王の娘とシャインとシャイニーが結婚していたら・・出ていけたでしょうけどそれももうきっとないわね」

テンションの上がったキャサリンがヴァネッサの前に立つ

「こっちはお礼言わないとだけどねっ」

「「え?」」

カンザキとヴァネッサがキャサリンを見る

「計画第一段階完了よ。ウルグインの王は倒したわ」

倒してない・・こともない
未だ起き上がらない王をちらりと見る

「次の計画はね、ラスクロ議会、倒させてもらう」

ニコニコが止まらないキャサリン

ドキリとする笑みだ

「あなた、ウルグインの王女でしょう?何を考えているの?」

「それは後からのお楽しみだぜ!」

キャラがおかしい・・

「まぁいいさ。ほら起きろ、コーヒーでも飲んでみろ」

そう言ってカンザキは今淹れたコーヒーをヴァネッサに手渡す
それをヴァネッサは黒い・・・と言いながら訝しげに一口飲んだ

「砂糖多めにしといたから初めてでも飲めるだろ?」

「なにこれ・・美味しい・・」

「世界にゃいろんなもんがあんのよ。それを知らずして死ぬことなんてないぜ。ほらこれも食ってみろ。燻製にしてみたんだけどけっこう美味いぜ?」

「ん・・・なに・・これ・・・美味しいなんてもんじゃないわよ・・」

そういってヴァネッサはポロポロと涙を流し始める
味よりなによりも、その優しさに心が喜んでいるのだ

「まぁ気にすんな。キャサリンの計画とかは関係なく今回は俺も怒ってる・・・だからついでにあんた達の根幹もちゃんと取り除いてやる」

「あり・・がとう・・・」

「人の命が・・・かかってる、それだけで十分だ」



ウルグインの王の作戦もとい、婚活大作戦の概要は簡単に理解できた
アホとしか言いようがないがそれでも他に妙案はなかったのだろう、だがきっとお仕置きは盛大なものになるだろう

問題はラスクロの議会

どうやら8人の老師と呼ばれる者達で成っており、中には齢1000年を数える者もいる
それが長老と呼ばれる議長だ

彼らの思惑はヴァネッサですら知らされていないが、おそらくはろくな事じゃないだろう

カンザキは魔法陣を描き始める

「とりあえず、王様とこいつらをウルグインに送り付けとくか」

「そんな・・・!まさか!?」

ヴァネッサが驚く

「ああ、あんたはこの国の行く末みなきゃな。残るだろ?」

「そ、その転移の魔法陣・・!」

「便利だろ?」

「そうじゃなくて!何処で覚えたの!?しかも・・知らない!似ているけど、私が知っているのと違うわ!?」


カンザキは魔法陣を起動させると、ウルグインの王、シャインとシャイニーを放り込む。行先はウルグイン王宮前だ
おそらく大騒ぎになっているだろう

転送が終わると魔法陣はキュンと消える

「そうか?効果が同じなら問題ないだろ」

「失われた技術を当たり前に使いこなすなんて・・・」

今カンザキが使用した転送陣は明らかに失われた技術である
なぜならそこで転送陣を使用した形跡が既にないからだ

ラスクロで用いられている転送陣は固定式で、1度書けばしばらくは使える
だが逆に残り続ける為に誰でも使用出来てしまう

使われた転送陣が消える。
そのメリットは確かにあるが、誰も使えない

だがカンザキは使えたのだ
しつこくしつこくヴァネッサはカンザキを問いただした結果

「猫さんに教えて貰った」

と、教えてくれたのだ
ヴァネッサはこの件が終わったら・・・教えて貰いに行こうと決意して
気づいた

私・・死なないと思ってる?

今からラスクロの議会に乗り込むのに普通であれば無事に帰れるはずはない
だがカンザキとキャサリン、一緒にいると不思議と不安はなくなっていた



城の地下には議会への直通巨大転送陣がある
およそ1000人が同時に転移可能な魔法陣だ
だが欠点もある
使用される魔力がとてつもない量が必要だったのだ
約100人
それが最低でも必要な人数
だが議会のメンバー達は僅か3人居れば転移してしまう
それ程に魔力が違うのだとヴァネッサは言いたかったのだがー

「これがその巨大魔法陣か。確かに魔力を吸いそうなサイズだなぁ・・・おーいキャサリン。ちょっとこれに魔力通してみてくれるか?」

「ほいよ。」

キャサリンが魔法陣の上に乗る
そして体の回りにふわりと金色の魔力が舞う

キンッ

物凄い高い音と共に一瞬にして魔法陣が輝く

「うそ・・」

ヴァネッサの声と共に転送された


「お?あんまり魔力要らないじゃん」


そんなキャサリンを尻目にヴァネッサがうなだれる

「な、何なの・・・・その魔力・・・化物?」

なんか失礼な事が聞こえるから補足してやるかな

「キャサリンは勇者ってやつだ」

「勇者?」

うわぁ。目が虚ろだなぁ

「そう、魔王を倒すために産まれるウルグインの勇者。まあ、今代の魔王は無害だから倒すとかにはならなかったが」

「ま、魔王!?そんなのお伽噺じゃない!?南より来る魔王、天の血を系譜に持つ勇者に討ち滅ぼされたってやつでしょ?小さい子くらいしか信じてないわよあんなの」

耐えきれず吹き出すヴァネッサ

「ん?なんか違う気がするが、まあ天の血を引きしは正しいか?」

「確かに魔力は凄いみたいだけど、そんな事があるわけないわよ。って言うか勇者の証明なんて出来ないでしょう」

「あー証人なら多分居る。その勇者に力を与えた女神がな」

「どこにいるのよどこに」

「家に。女神ミニューだったか、今うちの店で働いてるよ」


信じられるわけないじゃない!

なんて大声が出るあたり、元気になって来たと見える
先程の不安そうな顔などどこへやらだ


「ねーカンザキ」

「なんだキャサリン。なんかあったか?」

「そこに居たんだけど、襲いかかって来たからとりあえずボコったんだけど」

そう言って一人の男を指さすキャサリン
人を指さしてはいけません!

「って、議会の長老!!」

ヴァネッサが青ざめてる。

「とりあえずキャサリン縛って置いてくれ」

「あいよ」

「サリニ長老じゃないの、これ?超武闘派な筈なのに・・」

「なんか召喚魔法を唱えようとしていたからとりあえず殴りました」
てへっとキャサリンが舌を出す

「ひとまず、コイツに詳しい事聞くか」

カンザキは右ほほの腫れた男を見ながらそう言った


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