おっさんは異世界で焼肉屋する?ー焼肉GOD

ちょせ

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偽りの国 1

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彼が、ショウヘイが見つからないまま1週間が過ぎた

その間当然なにもしなかったわけではない
ただ一向に捜索が進まないまま、ただ時間だけが過ぎたのである


だが、以外な所から突破口は見つかる

「ミナリさんですね?」

「そうだけど、あなたは?」

胡散臭い緑色のスーツに身を包んだ男は、サングラスを外し胸ポケットにしまい込む
その流れで、一枚の紙をポケットから人差し指と中指で挟んでピッと取り出した

「私はタナカと申します。あ、これ名刺です」

丁寧に、名刺を渡される
ただ、名前が書いてあるだけのシンプルな名刺だ・・・
しかしこれだけで既に、相手が日本人だと言うことが分かる

「あ、これはご丁寧にどうもって名刺ですか?」

ミナリはおそらく、このタナカが一連の事件にかかわっていると直感する
だが確証はまだないと言うよりは今は困惑している

「こんな所まで、その格好で来たんですか?かなりお強いんですね」

こんな所と言うのは、ダンジョン30階層だ
ミナリはこの辺りで、ショウヘイの目撃情報があったと聞いて色々調べていたのだ
そこに、なんの装備もなさそうなまるでサラリーマンのタナカが汚れ一つなく現れたのだから困惑もする

「ええ、それが私の特技でして」

タナカはそれが当たり前だと言わんばかりに、ニヤリと笑う

薄気味悪いー

ミナリの第一印象はそれであった

「それで、何の用ですか?もしかしてショウヘイさんの居場所を教えてくれるとか?」

ここでミナリはカマをかける
そしてそのミナリが予想した答えはー

「ええ、その通りです。お話が早くて助かります。今ショウヘイさんはとある賊に囚われていましてね、一緒に助けに行って頂ける同志を集めているのです」

額に、うっすらとかいた汗をハンカチで拭いながらタナカはチラリとその腕にした時計を見た

ミナリの、予想通りの回答がきた。

内心、とぼけられる可能性もあったがそれはされなかった
まず、ショウヘイの目撃情報が入ったのは昨日の話
カンザキは未だ留守で、通常通り焼肉ゴッドで店を開けていた際に聞いた客の噂話だ
次に、その客はどうやら日本人に見えたとユキが言っていたこと
そして今日、その目撃情報の場に着いて程なくしてタナカは現れたのだ

「時間、無いんですか?」

タナカが時計を見る仕草ー
それはおそらく、嘘をついている
やはり罠かー

だが、他に手がかりはない。
カンザキからの連絡で、ダイダロスのミタニも現在行方不明だと聞いている

事はかなり深刻だった

他に手はないか考えていた1週間だった

カンザキの連絡も、二日前から既に途絶えていた

ミナリは決める。罠だろうが、飛び込んで突破すると
きっとカンザキやキャサリンならそうするはずだ


「はぁ、それでどうしたらいいのかしら?」

この際本当に罠でも飛び込むでもしなきゃ先に進まないか・・・

「ありがとうございます。商談成立ですね」

タナカのニヤリとする顔が、ミナリには不吉にしか思えなかった

タナカは再びサングラスを取り出してかけた
太陽も無いダンジョン内でのサングラスは違和感しかないが、ミナリはもしかしたら何らかのマジックアイテムかも知れないと思った

「ひとまずはこのタナカに着いてきて頂ければと思います」

「わかった、でも準備したいから明日でもいいかしら?」

タナカは少しムッとした表情になったかと思えば、気のせいだと言わないばかりにまた、ニヤニヤとした表情になる

「ええ、わかりました。それでは明日また同じ時間に、そうですね北門の所でお待ちしております」

「わかった」

ミナリがそう言うと、タナカはそれではまた明日と、去って行った




「って事があったのよ」

ミナリは焼肉ゴッドに戻ると、キャサリンとシアが帰って来ていたので一部始終を話した

「シア、あんたの所に上がって来てた話と近いわね、今の」

「そうですねお姉さま。タナカ、という名前までは無かったですが緑色の服を着た怪しい男が暗躍しているのは同じです」

「ミナリ、1人でいける?実はユキも居なくなっててね」

確かにーユキがいない
ユキはユキで調査をすると言ってふた手に別れて、調べていたのだが

「ミナリさん、実はユキさんが手紙を置かれていまして、これなんですが失礼ですが中を見させて頂きました」

シアはミナリに手紙を手渡すそれには、こう書いてあった

ミナリさん、先に日本に行きます・・と

「はぁ!?あのバカもしかして」

「もしかしなくてもそうでしょうね」

このパターンは、そうとしか思えない

「ミイラとりがミイラになっちゃったの・・」

「何です?それ」

「まあ、ことわざみたいなものよ。」

「もしかしたらミナリみたいに、罠に飛び込んだ可能性はあるけど・・・」

「キャサリン、あとお願いできる?」

「できる・・って言いたいけど難しい。とりあえずお店は一時休業ね」

「だよねぇ・・まあ、それは仕方ないか。それにしてもお兄ちゃんどこいってんのよ・・・」


カンザキも、ナートとあちこちを調査しているらしい。
ナートからソシアへの報告によれば嘘か本当か、ダンジョンを踏破するまで行って、今は地上を探していると言うことだった。
どんなスピードなのか・・・

ただ、ここ数日の報告が止まっているあたり何らかの手がかりを得ていてもおかしくはない

ミナリとキャサリン、シアは今日までは信じて待っていたがどうにも時間が無くなってきていたような所に舞い込んだこの話だ

「タナカなんてありふれた名前偽名だと思うけど・・明日行ってくる。」

ミナリは決意して行動を開始する

「お姉さまは?国の方はお父様と私で見ておきますが」

「シアは分かってるね~私も行くよ。ただ、ちょっとどうにも胡散臭いからすぐには動きたくないかな・・もうすこし待ってみることにするよ、みんなの報告を」

一同の意見はこれでまとまった。



その頃、カンザキはというと



「よっしゃ、ナートそっち頼むわ」

「はーい、お待たせしました~肉盛り合わせです」

取り出した肉をスライスしつつ、盛り付ける

「うわ・・これ美味いですね!」

冒険者風の男たちがわいわいと屋台に集まり、そして肉を焼いて食べている

「すごいな・・・この旨味は・・このタレがポイントか・・・」

感心したように、納得しながら食べている者もいる

「今日獲れたてのモンスター肉ですよー。なかなか食べれるものじゃないですよ!」

ナートはそう言いながら客引きをしているようだった

「お兄さん、この肉は何の肉なんだい?モンスターの肉ってのはこんなに美味いものだったとは知らなかったよ」

客の一人が、カンザキに言った

「だろ?みんな食わず嫌いなんだよ。でもまぁ、美味いやつだけじゃないから気を付けろよ。毒もちとか不味い奴とかいろいろいるからな」

「ああ、見直したっていうか、驚いたよ!こりゃ今度からあいつらの見方が変わるな!」

「それな!」

「んでアンちゃん、昨日もここで店出してたみたいだけど、いつまで出してるんだい?」

「あー、ここのダンジョンでいろいろ獲れたもんだからつい店をだしちまったけど、そうさな明日か明後日だな」

「そうか、そりゃ残念だな・・ナートの嬢ちゃんも可愛いし、気に入ってるんだが」

「ウルグインに本店があるんだ、そっちにきてくれよ。こんな屋台じゃなくてちゃんと壁も屋根もあるからさ」

「ウルグイン?・・・ってそこは何処なんだ?聞いたこともないが・・。長旅だったろう?」

「いやー・・・そうでもないさ」

「カンザキさーん、こっちお酒下さい~」

「はいよ」

ナートに酒瓶を渡しながら話を続ける

「ここガラニカと、ウルグインはダンジョンで繋がっているからな」

ウルグインは、所謂中央大陸に位置する
近くにはダイダロスもある
その北には、シルメリアの故郷でもあるグラニア山脈、ロースノイアの街
さらに北にいけば魔族領となる。
西に目を向けるとキトラの村がありロサの国がある
南に行けばそこはラスクロの街があり、東にはスロウ。

だが世界はそこだけではない。船や飛行機のあまり発達をしていないこの世界において、その「外側」にも大陸は存在するのだ

ここはガラニカの街
ウルグインを中心とすると、南に位置する。ラスクロのさらに南と言うわけだ
だが、仮にあの大陸をウルグイン大陸と名付けたとするならば
今カンザキのいる場所はただの南と言うわけではない
ガラニカ大陸ーそう呼ばれるべき陸地だ
ウルグイン同様に「巨大なダンジョン」があり、そこを中心にして出来た国だ
冒険者ギルドも存在していて、ダンジョン産の資材やアイテム、諸々の取引や到達階層管理やSクラス冒険者の認定など、さまざまな業務を行っている

大きく違う処といえば、ガラニカの街はさほど大きくはない。
それどころか、その周りにある国や街のほうが大きいのだ。
理由は至極簡単
ダンジョンを皆の財産とし、いかなる個人や国の独占を禁じているからだ。中立地帯であり、資産というわけである

そしてウルグインと同様、モンスター肉はあまり食べられてはいなかった
地上にいる動物などで動物性タンパクは足りていたし、敢えて危険なモンスターを食用として考える事などなかった

その理由はガラニカのさらに南の国にあった
古く、そして今やそこでしか見られない文化と古代遺跡だ
そこでは魔法が発達していたらしき文化
さらに強烈なまでの女神信仰があった。そこでモンスターは闇の神の使いとされていて、むろん食べることなど禁じられていた。
その名残がガラニカ大陸、ウルグイン大陸まであったと思われる
つまり世界最初の文化発祥の地であり、国がそこにあったのだ。現在は小さな街だが、かつてはそこに全ての人が暮らしていたとそう伝承が残っている

今ではその信仰の禁止されていたことなど、誰も覚えてはいない。
だが、心の底で・・どこかで、食べることなど考える事ができなかったのだ

カンザキはその事を知らずにモンスター専門の焼肉屋を始めたのである




「また来てくれよあんちゃん。この焼肉・・スゲェうめぇし、力がでるからよ」


「ああ、またいつかな。」




屋台をたたんで、カンザキとナートは再び旅に出る
毎日来てくれていた最初の客に手を振りながら、歩き出していた
この街にいた期間は4日程だ

「カンザキさん大分寄り道しちゃいましたねぇ」

「ああ、情報は手に入らなかったけどな」

「世界って広いんですねーまさかこんな遠方まで人類が分布していたとは・・」

「むしろ、こっちが本流って気がしないでもないけどな」

「そうですねー文化に違和感がありません。それどころか、ちゃんと魔王とか勇者とか居ましたし。」

「戦争もしているしなぁ・・・そりゃモンスター攻めてきてたら食べようとかも思わないよな・・」

実際は違う理由なのだが、カンザキはまだ知らない

「今のウルグインまわりの事とか、ショウヘイさんの事にしても・・・何かがおかしいですよ」

「ま、情報は無いが手掛かりはあった」

「え?!そうなんですか?」

「・・・・ナート、お前さん、なにしてたんだよ・・」

「ええっと・・店員?」

「そうだな・・店員だな」

カンザキは、はぁ、とため息をつき
それでも仕方ないかと思った
ガラニカの北の街から輸入されていると言う、ある食料品・・
それは

「納豆なんて名前で輸出してるとか・・・わかりやすいにも程があるな」

カンザキの手に持っているのは、納豆と、そして御守りだ。そしてお札の様なもの

「出雲大社とか・・・なんの冗談だよ」


カンザキはその手の御守りを見つめぼそりとつぶやいた
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