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だから、わたしの手をとって3
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「おとうさん…?」
そのボロボロの少女が、そう言った
「なんじゃ坊主、隠し子か?」
「そんなわけ無いだろう」
慌てる素振りも無くそう言うという事は、心当たりもないらしい
アイエテスは妻一筋の男だったのだから本当に無実である
だが、少女はおとうさんと言った
しかしアイエテスは否定しない
それが少女に対する優しさだと、思ってしまったのだろう
「お前、何故ここにいる?」
「おとうさん、待ってた。あのね、お母さんが、ここで待っててって、おとうさん、帰ってくるから待っててって」
そう嬉しそうに少女は言った
きっと待っていた父が来たからだろう、ようやく、帰って来たからと
「それで、お前の母は?何処にいる?」
まさか捨てたのかとアイエテスは怒る
それがこの親子にとってしょうが無かったとしても、だとは言え、アイエテスは怒るのだ
親が、子を捨てるなどと
「えっと、お母さんは待ってる間に動かなくなっちゃったの、おとうさん、お母さん治せる?」
そう言って少女はフラフラとしつつ、倒れていた近くに案内する
嫌な予感がした
「坊主、こりゃあ……」
「ああ……」
しかし予想外のものがそこにはあった
それは、人形であった
それを、母とこの少女は言った
死体がそこに無かったのは良かったと言える。だがそれ以上にアイエテスは衝撃をうけた
この少女は、既に壊れているのだと悟ったからである
◇
「ふむ、粉の乳か。なかなか良いらしいのう」
粉末状の乳、それはかなり高価な品であるがダンジョンなどでは重宝される。
ショウヘイの牧場で取れるそれは魔法によって水分が飛ばされており、粉状にて販売されている
本人は乳飲み子向けのつもりで開発したのだが、その利便性はダンジョンにこそあった
お湯でそれを溶き、パンを浸して少女に手渡す
「ああ、手軽に栄養が取れるらしい。硬いパンも浸して食べれば柔らかく美味くなるとな」
受け取った少女はニコリとして、すぐに口に持っていく
「んく、おい、しい」
「まだあついからな、ゆっくり食べろ」
少女はにこりと笑っているのだろうが、長く伸びた髪でその顔は見えない。
それを見たゴルドが
「ふん、ワシが切ってやろう。その髪、うっとおしい」
そう言ってハサミを取りだし、少女の前に座り込むと
「切るぞ、いいか?」
「うん、おじいちゃん、ありがとう」
「おじ…う、うむ」
色黒のゴルドだが、顔を赤くして髪を切り始めた
チャキチャキとハサミの音だけが鳴る
ゴルドはさすがドワーフといった器用さを発揮する
丁寧だが、早い
アイエテスはそれを見て、近くの家の成れ果てを補修を始める
今日はここで休もうと思ったからだ
テントをその中に建て、なるべく快適になる様考える
ゴルドに伝えてから、アイエテスは近くの木材屋や食料品、そして衣類を買い求める
さすがに衣類は不審がられてしまったが、それと他に布団の代わりになる布などを買ううちに店員の態度も良いものに変わっていた
そして暫くして戻ると
「あ、おとうさん、おかえりなさい」
そう言って出迎える少女は見違える様に可愛くなっていた
ゴルドの整髪技術もさることながら、肌から汚れがなくなっている
「風呂に入れてやった、どうだ?可愛くなっただろう?」
そう得意げに言うゴルドはまるで本当の祖父のようだとアイエテスは思った
「コレを着せてやってくれ。それと適当に食材を買ってきた。しばらくはマシなものが食える」
「坊主、お主どうする気じゃ?」
それは少女をどうすると言う意味だ
「ふむ…聞かなくてもゴルドなら分かるだろう?」
「引き取る気か?」
こくりと頷く
「そんなことをしてみろ、坊主、お前のところに大量の孤児が送り付けられることになるぞ?」
「そうかもしれんな」
「だったら」
イラつくようにゴルドは言うが
「だからと言って、これを見過ごすことはできん…俺には、この子を引き取れるだけの力がある」
それは財力、余裕と言ったものだ
アイエテスには見放すと言った事はできない
「まったく、お主という奴は‥‥坊主のくせに生意気言いやがって」
「ふん、文句は受け付けんぞ?」
そのやりとりを、少女は何を言っているのかわからないと言った風に眺めていた
さて、それから数日アイエテスとゴルドは少女と過ごすことになる
少女は名前を、エルマと言った
年齢はおそらく、だが9歳程度だと思われる
最初見た時よりもやや上と言った具合だ
どうにも要領を得ない会話
アイエテスをおとうさんと呼び、ゴルドをおじいちゃんと呼んだ
それにほだされたのか二人も少しづつではあったが、エルマを気に入っている
さて、三人は日中なにをしていたのか
元は修行のつもりで来ていたアイエテスとゴルドだったが、今はすっかりエルマにかかりっきりである
そこに住む気なのか二人は家をどんどんと補修していく
石の壁しかなかった家に屋根が付き、石を積み上げられただけの壁の内側には木の板を張り付けたり
ドアと、窓についてもゴルドが簡単に作ってしまった
家具もゴルドがコツコツと作る
アイエテスは、少女と共に料理をしたり、文字を教えたりと色々と楽しんで居たようである
◇
なにかに夢中になっている、そんなおっさん二人はすっかりとそのエルマと言う少女が何か壊れていると言うことを忘れていた
その人形は、土に埋めた筈だった
そして死を、エルマへ伝えた筈だった
だから気づかなかった
そのボロボロの少女が、そう言った
「なんじゃ坊主、隠し子か?」
「そんなわけ無いだろう」
慌てる素振りも無くそう言うという事は、心当たりもないらしい
アイエテスは妻一筋の男だったのだから本当に無実である
だが、少女はおとうさんと言った
しかしアイエテスは否定しない
それが少女に対する優しさだと、思ってしまったのだろう
「お前、何故ここにいる?」
「おとうさん、待ってた。あのね、お母さんが、ここで待っててって、おとうさん、帰ってくるから待っててって」
そう嬉しそうに少女は言った
きっと待っていた父が来たからだろう、ようやく、帰って来たからと
「それで、お前の母は?何処にいる?」
まさか捨てたのかとアイエテスは怒る
それがこの親子にとってしょうが無かったとしても、だとは言え、アイエテスは怒るのだ
親が、子を捨てるなどと
「えっと、お母さんは待ってる間に動かなくなっちゃったの、おとうさん、お母さん治せる?」
そう言って少女はフラフラとしつつ、倒れていた近くに案内する
嫌な予感がした
「坊主、こりゃあ……」
「ああ……」
しかし予想外のものがそこにはあった
それは、人形であった
それを、母とこの少女は言った
死体がそこに無かったのは良かったと言える。だがそれ以上にアイエテスは衝撃をうけた
この少女は、既に壊れているのだと悟ったからである
◇
「ふむ、粉の乳か。なかなか良いらしいのう」
粉末状の乳、それはかなり高価な品であるがダンジョンなどでは重宝される。
ショウヘイの牧場で取れるそれは魔法によって水分が飛ばされており、粉状にて販売されている
本人は乳飲み子向けのつもりで開発したのだが、その利便性はダンジョンにこそあった
お湯でそれを溶き、パンを浸して少女に手渡す
「ああ、手軽に栄養が取れるらしい。硬いパンも浸して食べれば柔らかく美味くなるとな」
受け取った少女はニコリとして、すぐに口に持っていく
「んく、おい、しい」
「まだあついからな、ゆっくり食べろ」
少女はにこりと笑っているのだろうが、長く伸びた髪でその顔は見えない。
それを見たゴルドが
「ふん、ワシが切ってやろう。その髪、うっとおしい」
そう言ってハサミを取りだし、少女の前に座り込むと
「切るぞ、いいか?」
「うん、おじいちゃん、ありがとう」
「おじ…う、うむ」
色黒のゴルドだが、顔を赤くして髪を切り始めた
チャキチャキとハサミの音だけが鳴る
ゴルドはさすがドワーフといった器用さを発揮する
丁寧だが、早い
アイエテスはそれを見て、近くの家の成れ果てを補修を始める
今日はここで休もうと思ったからだ
テントをその中に建て、なるべく快適になる様考える
ゴルドに伝えてから、アイエテスは近くの木材屋や食料品、そして衣類を買い求める
さすがに衣類は不審がられてしまったが、それと他に布団の代わりになる布などを買ううちに店員の態度も良いものに変わっていた
そして暫くして戻ると
「あ、おとうさん、おかえりなさい」
そう言って出迎える少女は見違える様に可愛くなっていた
ゴルドの整髪技術もさることながら、肌から汚れがなくなっている
「風呂に入れてやった、どうだ?可愛くなっただろう?」
そう得意げに言うゴルドはまるで本当の祖父のようだとアイエテスは思った
「コレを着せてやってくれ。それと適当に食材を買ってきた。しばらくはマシなものが食える」
「坊主、お主どうする気じゃ?」
それは少女をどうすると言う意味だ
「ふむ…聞かなくてもゴルドなら分かるだろう?」
「引き取る気か?」
こくりと頷く
「そんなことをしてみろ、坊主、お前のところに大量の孤児が送り付けられることになるぞ?」
「そうかもしれんな」
「だったら」
イラつくようにゴルドは言うが
「だからと言って、これを見過ごすことはできん…俺には、この子を引き取れるだけの力がある」
それは財力、余裕と言ったものだ
アイエテスには見放すと言った事はできない
「まったく、お主という奴は‥‥坊主のくせに生意気言いやがって」
「ふん、文句は受け付けんぞ?」
そのやりとりを、少女は何を言っているのかわからないと言った風に眺めていた
さて、それから数日アイエテスとゴルドは少女と過ごすことになる
少女は名前を、エルマと言った
年齢はおそらく、だが9歳程度だと思われる
最初見た時よりもやや上と言った具合だ
どうにも要領を得ない会話
アイエテスをおとうさんと呼び、ゴルドをおじいちゃんと呼んだ
それにほだされたのか二人も少しづつではあったが、エルマを気に入っている
さて、三人は日中なにをしていたのか
元は修行のつもりで来ていたアイエテスとゴルドだったが、今はすっかりエルマにかかりっきりである
そこに住む気なのか二人は家をどんどんと補修していく
石の壁しかなかった家に屋根が付き、石を積み上げられただけの壁の内側には木の板を張り付けたり
ドアと、窓についてもゴルドが簡単に作ってしまった
家具もゴルドがコツコツと作る
アイエテスは、少女と共に料理をしたり、文字を教えたりと色々と楽しんで居たようである
◇
なにかに夢中になっている、そんなおっさん二人はすっかりとそのエルマと言う少女が何か壊れていると言うことを忘れていた
その人形は、土に埋めた筈だった
そして死を、エルマへ伝えた筈だった
だから気づかなかった
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