10 / 77
10 帰宅
しおりを挟む
ある程度お腹も膨れてきたところで、質問の続きを行うことにした樹は、迅へと話を振った。
「次は迅さんの番ですよ」
「――え?」
「質問の続きです!」
「――俺の質問は終わったぞ」
「え?」
樹が種族の質問をした後に料理が届いたので、そこで中断していたのではなかったっけ、と樹は今までの会話を思い返す。すると、1つだけ思い当たる質問があった。
「え、もしかして、パスタが好きかって聞いたことですか?」
「ああ、そうだ」
「そうだったんですね! じゃあ、迅さんの好きな食べ物は何ですか?」
「……特にない」
「え、じゃあ、嫌いな食べ物はありますか?」
「……ない」
「えー、すごいですねー」
「ああ、まぁな」
嫌いな食べ物がないという迅の回答に樹は驚いた。樹にはある。自分が苦手な苦瓜を思い浮かべてしまい、樹は眉を潜めた。あの苦さはどうしても好きになれない。ピーマンなら大丈夫だが、苦瓜はどうしてもだめだ。折角美味しい料理を食べているのに苦手な食べ物を思い出してしまった樹は、慌てて話を変えた。
「じゃあ、次は迅さんの番です」
「――年齢は? 俺は、もうすぐ20歳だ」
「えっ、今19歳ってことですよね! 僕と同じだ。僕も今19歳です」
「そうなのか」
「はい!」
迅は自分よりも年上だと思っていたため、少しだけ親近感が湧く。初めて同じものを見つけられた。ニコニコと笑顔になる樹をジッと見つめながら、迅が自分の首筋に片手を当てた。
「……同じ年なら敬語使わなくていい」
「あ、そうですね、じゃなくて、そうだね――えへへ」
「ああ」
「じゃあ、お名前も迅くんって呼んでいい?」
「ああ」
迅は視線をそらしながらそっけなく返事をするが、その後ろでは迅の太い尻尾が忙しなく動いている。そのことに気がついた樹は微笑んだ。
「次は僕の番だね。うーん、どのあたりに住んでるの?」
「俺は――」
質問し合いながら食事を楽しんでいたが、お昼時なこともあり店が段々と混み始めたため、2人は食事を終わらせて外へと出た。
「お腹いっぱい! ピザもパスタも美味しかったねー」
「ああ、旨かった」
「まとめて払ってくれてありがとう。半分払うね」
2人が会計をしようとしたタイミングで店に団体客が来てしまったため、迅が先にカードですべて払ってくれていた。樹が片手に持っていた財布を開いたところで迅から声がかかる。
「いや、いい」
「――え、ダメだよ。映画の分も出してもらっているのにー」
「いや、大丈夫だ。金ならある」
「ええっ?」
迅の返しに樹が目をぱちくりさせている間に、迅は両手をポケットに入れて足早に駅の方へと進んでしまう。樹は慌てて追いかけるが、今度もお金を渡すタイミングを失ってしまった。
「えっと、えっと、ありがとう……」
「ああ。家まで送る」
「え、いいよ! 迅くんの住んでる所と僕の住んでる所、猫山駅を挟んで逆の方向でしょ?」
「――暇だから」
「そうなの? じゃあ、お話しながら行こう」
「ああ」
歩いて駅まで向かうと、丁度樹のアパートの方角の電車が止まっていたため、乗り込む。
「こっち方面には来ることあるの?」
「――まぁ、たまに」
「そうなんだー」
電車に揺られながらとりとめもない話をしていると、あっという間に樹のアパートの最寄り駅である『緑山駅』へと着いてしまった。流石に駅で別れようと思った樹が「ここまでで大丈夫だよ。ありがとう」とお礼を言ったが、迅は「家まで送るから」と頑なであったため、申し訳ないと思いながらも家まで送ってもらうことにした。
樹の住んでいるアパートは『緑荘』という名前の木造2階建てで、1階の102号室で生活している。少し古いが、外装は優しい緑で塗りなおされており、住人もいい人ばかりで気に入っていた。駅までは歩いて20分程の距離にある。
歩いている途中で迅がタクシーを拾おうとしたので、樹は慌てて止める。きっとタクシー代も迅が払うつもりなのだろう。もしかしたら、迅はとんでもないお金持ちなのかもしれない。ただ、恋人とはいえ全てを出してもらうのは気が引ける。次のデートではしっかりと払わせてもらおう、と決意しながら樹は迅を案内しながら歩いた。
「あ、ここが僕の住んでるアパートだよー。ここまでありがとう。お部屋に上がっていってよ。お茶だすよ!」
「――え、いや、いい。じゃあな」
「え、あ、うん。またねー」
ここまで送ってもらったお礼にお茶を出そうとした樹の提案に、迅は慌てた様子で踵を返し、帰っていった。
「次は迅さんの番ですよ」
「――え?」
「質問の続きです!」
「――俺の質問は終わったぞ」
「え?」
樹が種族の質問をした後に料理が届いたので、そこで中断していたのではなかったっけ、と樹は今までの会話を思い返す。すると、1つだけ思い当たる質問があった。
「え、もしかして、パスタが好きかって聞いたことですか?」
「ああ、そうだ」
「そうだったんですね! じゃあ、迅さんの好きな食べ物は何ですか?」
「……特にない」
「え、じゃあ、嫌いな食べ物はありますか?」
「……ない」
「えー、すごいですねー」
「ああ、まぁな」
嫌いな食べ物がないという迅の回答に樹は驚いた。樹にはある。自分が苦手な苦瓜を思い浮かべてしまい、樹は眉を潜めた。あの苦さはどうしても好きになれない。ピーマンなら大丈夫だが、苦瓜はどうしてもだめだ。折角美味しい料理を食べているのに苦手な食べ物を思い出してしまった樹は、慌てて話を変えた。
「じゃあ、次は迅さんの番です」
「――年齢は? 俺は、もうすぐ20歳だ」
「えっ、今19歳ってことですよね! 僕と同じだ。僕も今19歳です」
「そうなのか」
「はい!」
迅は自分よりも年上だと思っていたため、少しだけ親近感が湧く。初めて同じものを見つけられた。ニコニコと笑顔になる樹をジッと見つめながら、迅が自分の首筋に片手を当てた。
「……同じ年なら敬語使わなくていい」
「あ、そうですね、じゃなくて、そうだね――えへへ」
「ああ」
「じゃあ、お名前も迅くんって呼んでいい?」
「ああ」
迅は視線をそらしながらそっけなく返事をするが、その後ろでは迅の太い尻尾が忙しなく動いている。そのことに気がついた樹は微笑んだ。
「次は僕の番だね。うーん、どのあたりに住んでるの?」
「俺は――」
質問し合いながら食事を楽しんでいたが、お昼時なこともあり店が段々と混み始めたため、2人は食事を終わらせて外へと出た。
「お腹いっぱい! ピザもパスタも美味しかったねー」
「ああ、旨かった」
「まとめて払ってくれてありがとう。半分払うね」
2人が会計をしようとしたタイミングで店に団体客が来てしまったため、迅が先にカードですべて払ってくれていた。樹が片手に持っていた財布を開いたところで迅から声がかかる。
「いや、いい」
「――え、ダメだよ。映画の分も出してもらっているのにー」
「いや、大丈夫だ。金ならある」
「ええっ?」
迅の返しに樹が目をぱちくりさせている間に、迅は両手をポケットに入れて足早に駅の方へと進んでしまう。樹は慌てて追いかけるが、今度もお金を渡すタイミングを失ってしまった。
「えっと、えっと、ありがとう……」
「ああ。家まで送る」
「え、いいよ! 迅くんの住んでる所と僕の住んでる所、猫山駅を挟んで逆の方向でしょ?」
「――暇だから」
「そうなの? じゃあ、お話しながら行こう」
「ああ」
歩いて駅まで向かうと、丁度樹のアパートの方角の電車が止まっていたため、乗り込む。
「こっち方面には来ることあるの?」
「――まぁ、たまに」
「そうなんだー」
電車に揺られながらとりとめもない話をしていると、あっという間に樹のアパートの最寄り駅である『緑山駅』へと着いてしまった。流石に駅で別れようと思った樹が「ここまでで大丈夫だよ。ありがとう」とお礼を言ったが、迅は「家まで送るから」と頑なであったため、申し訳ないと思いながらも家まで送ってもらうことにした。
樹の住んでいるアパートは『緑荘』という名前の木造2階建てで、1階の102号室で生活している。少し古いが、外装は優しい緑で塗りなおされており、住人もいい人ばかりで気に入っていた。駅までは歩いて20分程の距離にある。
歩いている途中で迅がタクシーを拾おうとしたので、樹は慌てて止める。きっとタクシー代も迅が払うつもりなのだろう。もしかしたら、迅はとんでもないお金持ちなのかもしれない。ただ、恋人とはいえ全てを出してもらうのは気が引ける。次のデートではしっかりと払わせてもらおう、と決意しながら樹は迅を案内しながら歩いた。
「あ、ここが僕の住んでるアパートだよー。ここまでありがとう。お部屋に上がっていってよ。お茶だすよ!」
「――え、いや、いい。じゃあな」
「え、あ、うん。またねー」
ここまで送ってもらったお礼にお茶を出そうとした樹の提案に、迅は慌てた様子で踵を返し、帰っていった。
52
あなたにおすすめの小説
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】自称ワンコに異世界でも執着されている
水市 宇和香
BL
「たとえ異世界に逃げたとしたって、もう二度と逃さないよ」
アザミが高校二年生のときに、異世界・トルバート王国へ転移して早二年。
この国で二十代半ばの美形の知り合いなどいないはずだったが、
「キスしたら思いだしてくれる? 鳥居 薊くん」
その言葉で、彼が日本にいたころ、一度だけキスした同級生の十千万堂 巴波だと気づいた。
同い年だったはずのハナミは、自分より七つも年上になっていた。彼は王都から辺境の地ーーニーナ市まではるばる、四年間もアザミを探す旅をしていたらしい。
キスをした過去はなかったこととして、二人はふたたび友人として過ごすようになった。
辺境の地で地味に生きていたアザミの日常は、ハナミとの再会によって一変し始める。
そしてこの再会はやがて、ニーナ市を揺るがす事件へと発展するのだった…!
★執着美形攻め×内弁慶な地味平凡
※完結まで毎日更新予定です!(現在エピローグ手前まで書き終わってます!おたのしみに!)
※感想や誤字脱字のご指摘等々、ご意見なんでもお待ちしてます!
美形×平凡、異世界、転移、執着、溺愛、傍若無人攻め、内弁慶受け、内気受け、同い年だけど年の差
【BL】僕(18歳)、イケメン吸血鬼に飼い慣らされる。
猫足
BL
地下室に閉じ込められていた吸血鬼の封印が解け、王族は絶体絶命。このままでは国も危ないため、王は交換条件を持ちかけた。
「願いをひとつなんでも聞こう。それでこの城と国を見逃してはくれないか」
「よかろう。では王よ、お前の子供をひとり、私の嫁に寄越せ」
「……!」
姉が吸血鬼のもとにやられてしまう、と絶望したのも束の間。
指名されたのは、なんと弟の僕(18)で……?!
※諸事情により新アカウントに移行していましたが、端末の不具合のためこのアカウントに戻しました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ひろいひろわれ こいこわれ ~華燭~
九條 連
BL
さまざまな問題を乗り越え、ヴィンセントの許で穏やかな日常を送る莉音に、ある日、1通のハガキが届く。
それは、母の新盆に合わせて上京する旨を記した、父方の祖父母からの報せだった。
遠く離れた九州の地に住む祖父母の来訪を歓迎する莉音とヴィンセントだったが、ふたりの関係を祖父に知られてしまったことをきっかけに事態は急変する。
莉音と祖父、そして莉音とヴィンセントのあいだにも暗雲が立ちこめ――
『ひろいひろわれ こいこわれ』続編
隣に住む先輩の愛が重いです。
陽七 葵
BL
主人公である桐原 智(きりはら さとし)十八歳は、平凡でありながらも大学生活を謳歌しようと意気込んでいた。
しかし、入学して間もなく、智が住んでいるアパートの部屋が雨漏りで水浸しに……。修繕工事に約一ヶ月。その間は、部屋を使えないときた。
途方に暮れていた智に声をかけてきたのは、隣に住む大学の先輩。三笠 琥太郎(みかさ こたろう)二十歳だ。容姿端麗な琥太郎は、大学ではアイドル的存在。特技は料理。それはもう抜群に美味い。しかし、そんな琥太郎には欠点が!
まさかの片付け苦手男子だった。誘われた部屋の中はゴミ屋敷。部屋を提供する代わりに片付けを頼まれる。智は嫌々ながらも、貧乏大学生には他に選択肢はない。致し方なく了承することになった。
しかし、琥太郎の真の目的は“片付け”ではなかった。
そんなことも知らない智は、琥太郎の言動や行動に翻弄される日々を過ごすことに——。
隣人から始まる恋物語。どうぞ宜しくお願いします!!
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる