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19 友人
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「おはよー、陽向くん。ごめん遅かったかな」
「あ、樹くん、おはよう。大丈夫、僕もちょうど今来たところだよー」
朝、樹はいつもより早く家を出て、講義が始まる時間より前に、大学の奥にある花壇へ向かった。そこにはすでに友人の陽向が来ていて、花に水やりをしているのが見えたので樹は駆け寄り挨拶をした後、近くの水栓柱へと向かう。そこに持っていたバッグを降ろした樹は、陽向と同じようにじょうろに水を入れて反対側から花に水やりを始めた。
「うん、いい感じだね」
「そうだね、このお花はそろそろ咲きそうじゃない? 珍しいやつだよね! 楽しみ!」
水やりが終わった2人は少しの間花壇の花を観察していたが、講義開始の時間が迫ってきたため、慌てて講義室へと向かう。
樹と陽向は農学部の園芸コースに所属しており、サークルも同じ『花花クラブ』に入っている。花花クラブとは、綺麗な花を育てたり、珍しい植物をみんなで見に行ったりしているサークルだ。育てた花は大学構内に飾ったりもしている。所属人数は14人だが、就職活動や卒論で忙しい学部の4年生が4人いるため、実際に活動できているのは10人しかいない。今日はその花花クラブで所有している花壇の朝の水やり当番の日だったため、早めに来ていたのだ。
「危なかったねー」
「うん」
講義室へと入ると時間ギリギリだった。樹は陽向の言葉に頷きながら、空いている席へと座る。隣に座った陽向は大きな欠伸をこぼしていた。
「寝不足なの?」
「うん……昨日読んでいた本が面白くて、気づいたら朝方だったんだ」
「あー、なるほどねー」
陽向の言葉に樹はウンウンと頷いた。樹も、集中していると気がついたら朝になっていることはよくある。陽向は眠気を飛ばすように首を横に振った。その拍子に、頭の横についている灰と白色の大きくてフワフワとした耳も動く。陽向はコアラ獣人だ。ウォンバットとコアラは種族的にも近く、樹と陽向もなにかと気が合うため一緒にいることが多い。
講義が終わった後の10分間の休憩時間。2限目の講義も同じ場所で行われるのでそのまま座ってのんびりとしていると、陽向が話しかけてきた。
「あ、そういえば昨日、駅で樹くんを見かけたんだ」
「え、そうだったの? 気づかなかった」
「たぶん、恋人さんと一緒だったと思うんだけど、金髪の人だよね?」
「あ、えへへ。うん、そうだよ」
昨日、デートの終わりに家まで送ってもらっているところを陽向に見られたのだろう。陽向には恋人がいることは伝えていたが、髪色などは伝えていなかった。見られていたことに恥ずかしくなりながらも、樹は頷いた。
「――なんか、ちょっと冷たそうな人に見えたんだけど、大丈夫なの?」
「え、そう? 大丈夫だよ。迅くんは、かっこよくてかわいいんだー」
「かわいい!? そうなの? かっこいいは分かるけど……」
「ふふふっ、尻尾と耳が素直で分かりやすいんだよ。それに、なんだかミーくんに似てるところがあってねー」
「ミーくんって、樹くんが飼ってたって言ってた黒猫だよね?」
「うん!」
樹は、最近の迅を思い返した。前を歩きながらチラチラと後ろを振り返って確認してきたり、樹の手に尻尾がサワサワと触れてくることもあった。それに昨日は、財布がいらないという記事を見て、実際に持たずにいたりと、ちょっとお茶目な部分も知ることができた。
迅の行動を振り返った樹は、ふふっと思い出し笑いをしてしまった。
「まあ、樹くんが大丈夫ならいいのかな?」
樹が笑っている横で、陽向は首を傾げた。
「あ、樹くん、おはよう。大丈夫、僕もちょうど今来たところだよー」
朝、樹はいつもより早く家を出て、講義が始まる時間より前に、大学の奥にある花壇へ向かった。そこにはすでに友人の陽向が来ていて、花に水やりをしているのが見えたので樹は駆け寄り挨拶をした後、近くの水栓柱へと向かう。そこに持っていたバッグを降ろした樹は、陽向と同じようにじょうろに水を入れて反対側から花に水やりを始めた。
「うん、いい感じだね」
「そうだね、このお花はそろそろ咲きそうじゃない? 珍しいやつだよね! 楽しみ!」
水やりが終わった2人は少しの間花壇の花を観察していたが、講義開始の時間が迫ってきたため、慌てて講義室へと向かう。
樹と陽向は農学部の園芸コースに所属しており、サークルも同じ『花花クラブ』に入っている。花花クラブとは、綺麗な花を育てたり、珍しい植物をみんなで見に行ったりしているサークルだ。育てた花は大学構内に飾ったりもしている。所属人数は14人だが、就職活動や卒論で忙しい学部の4年生が4人いるため、実際に活動できているのは10人しかいない。今日はその花花クラブで所有している花壇の朝の水やり当番の日だったため、早めに来ていたのだ。
「危なかったねー」
「うん」
講義室へと入ると時間ギリギリだった。樹は陽向の言葉に頷きながら、空いている席へと座る。隣に座った陽向は大きな欠伸をこぼしていた。
「寝不足なの?」
「うん……昨日読んでいた本が面白くて、気づいたら朝方だったんだ」
「あー、なるほどねー」
陽向の言葉に樹はウンウンと頷いた。樹も、集中していると気がついたら朝になっていることはよくある。陽向は眠気を飛ばすように首を横に振った。その拍子に、頭の横についている灰と白色の大きくてフワフワとした耳も動く。陽向はコアラ獣人だ。ウォンバットとコアラは種族的にも近く、樹と陽向もなにかと気が合うため一緒にいることが多い。
講義が終わった後の10分間の休憩時間。2限目の講義も同じ場所で行われるのでそのまま座ってのんびりとしていると、陽向が話しかけてきた。
「あ、そういえば昨日、駅で樹くんを見かけたんだ」
「え、そうだったの? 気づかなかった」
「たぶん、恋人さんと一緒だったと思うんだけど、金髪の人だよね?」
「あ、えへへ。うん、そうだよ」
昨日、デートの終わりに家まで送ってもらっているところを陽向に見られたのだろう。陽向には恋人がいることは伝えていたが、髪色などは伝えていなかった。見られていたことに恥ずかしくなりながらも、樹は頷いた。
「――なんか、ちょっと冷たそうな人に見えたんだけど、大丈夫なの?」
「え、そう? 大丈夫だよ。迅くんは、かっこよくてかわいいんだー」
「かわいい!? そうなの? かっこいいは分かるけど……」
「ふふふっ、尻尾と耳が素直で分かりやすいんだよ。それに、なんだかミーくんに似てるところがあってねー」
「ミーくんって、樹くんが飼ってたって言ってた黒猫だよね?」
「うん!」
樹は、最近の迅を思い返した。前を歩きながらチラチラと後ろを振り返って確認してきたり、樹の手に尻尾がサワサワと触れてくることもあった。それに昨日は、財布がいらないという記事を見て、実際に持たずにいたりと、ちょっとお茶目な部分も知ることができた。
迅の行動を振り返った樹は、ふふっと思い出し笑いをしてしまった。
「まあ、樹くんが大丈夫ならいいのかな?」
樹が笑っている横で、陽向は首を傾げた。
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