【完結】ツンな猫君の恋愛事情

結城れい

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57 植物園

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「ふぁーあ」

 樹は大きな欠伸をしながら、ブランケットから顔を出した。
 迅は寝起きが良い。一緒に寝起きするようになって気づいたが、迅は起きた後すぐに行動している。対して樹は寝起きがとても悪い、というより完全に目が覚めるまで時間がかかる。樹が体を起こしたままうつらうつらしていると、迅が一抱えはあるネズミ君のぬいぐるみを渡してきたため、反射的に受け取り抱きしめる。
 両手でぬいぐるみを抱きしめたまま目を閉じて寝かけている樹の様子を、迅はベッドの上で対面に座ったままジッと見つめていた。

 暫くしてようやく目が覚めた樹は、迅に朝の挨拶をしてぬいぐるみをヘッドボートの元の位置に戻す。ベッドボードには最近仲間入りを果たしたウンピョウのぬいぐるみも鎮座している。そのぬいぐるみも倒れていないか確認して、樹はベッドから降りた。この一連の流れが最近の朝のルーティンだ。

 樹は大きく欠伸をしながら、迅が用意してくれたバターたっぷりの食パンにかぶりつく。モグモグと口をゆっくり動かす樹の向かい側に座り、一緒に朝食を食べていた迅が明るく話しかけてきた。

「樹、今日は水曜だから予定は何もないだろ?」
「……うん」

 ゆっくり頷いた樹に、迅がスマホの画面を見せてきた。

「今日は天気もいいし、植物園に行かないか?」
「しょくぶつえん」

 迅の言葉を復唱し、差し出された画面を見る。そこには、植物園で夏休み限定の展示を行っているとの案内が表示されていた。樹の眠たげな眼が勢いよく開かれる。

「え、植物園! 行く!」
「ああ」

 いつもの倍のスピードで朝食を食べ終えた樹は、それでも迅より遅かった。

 自宅から迅の家にいくつか服を持ってきていたので、寝室のクローゼットに置かせてもらっている。それに着替えた樹は、最後に麦わら帽子をかぶった。桃狩りに行ったときにかぶっていったものと同じだ。
 植物園にはサークルの仲間と一緒に行ったことがあるが、随分前のことだ。迅と行くのは初めてだし、変わっているものもあるかもしれない。
 ウキウキと準備を済ませた樹が寝室からリビングへと戻ると、迅がキッチンに立って何やら作業をしていた。

「あれ、どうしたの?」
「あ、ちょっと来ないでくれ!」

 迅に言われて、樹はピタリと足を止めた。だが、隠されると気になってしまう。きびすを返して離れながらも、気になった樹はチラリと首だけ振り返った。素直に離れていく樹に、迅が手元で作業をしながら説明する。

「折角だからお弁当を作ったんだ。お昼まで楽しみに待っててくれ」
「え、そうだったの!? 嬉しい! ありがとう! いつの間に作ったの?」
「今朝、早起きして作ったんだ」
「えー、そうだったんだ! 気づかなかったー」

 樹が起きる前に作っていたのだろうか。全く気がつかなかった。
 最後の仕上げまで終わったのだろう。迅が弁当の入った袋をリュックに入れているのに気づいた樹は、すかさず自分がリュックを持つと言ったが、却下された。
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