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クリスマスの猫の宿命(さだめ)
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「とうとう今年も来たな、クリスマスが」
白猫のマシュマロ、通称マシューが言った。
「来たね、マシュマロ。今年も覚悟しないと」
いつもはのんびりしている黒猫のココアが、めずらしくキリっとした顔で言った。
「昨日の二十四日は、あかりは残業だったから、家に帰るなりすぐ寝ちまった。だから逃れられたけど、今日は定時で帰って来るって言ってた……。まったく、これだから彼氏の一人もいないアラサー女はよ。デートの予定とか、ないのか?」
「アラサーってもう死語だよ、マシュマロ。しょうがないよ、観念しよう。それが僕ら飼い猫の宿命だよ。もしかしたら、猫ケーキ、食べられるかもしれないし」
「ココア、お前は潔いな、見直したぜ。俺は最後まで抵抗して、猫こたつで丸くなる。じゃあな」
マシュマロが猫こたつに入り、寝たふりを決め込んだとき、玄関の扉が開いた。
「ただいま~、ココア、マシュ―、さあ、今年も張り切って行こう!」
二十八歳、独身彼氏なし、深夜アニメを観ることが趣味な工藤あかりが、一人暮らしのアパートに帰って来たのだ。
にゃ~ん、にゃにゃん(おかえり~、あかりちゃん)
「あれ? ココアだけ? マシューは? さては猫こたつだな」
そう言いながらあかりは膨らんだ紙袋から、猫用サンタの衣装と帽子を取り出す。ついでにトナカイもある。
「ボーナス出たからトナカイも買っちゃった! さあ、撮影会よ~」
あっというまにココアはサンタクロースの衣装を着せられてしまった。
「うん、ココアは黒いから赤い帽子が似合うね。次はマシューね」
(俺はサンタなんかにならない!)
猫こたつの中で、マシュマロは雪見だいふくのように丸くなり、抵抗の構えを見せる。
それを見たあかりは、こたつを覗き込みながらこう言った。
「サンタになってくれたら、ご褒美にスペシャル猫用ケーキ、あげるんだけどな~。そっか、マシューは寝ちゃってるのかあ。マシューの大好物、高級ちゅるるもあるのに」
(なんだと、高級ちゅるる!? くそっ。これが宿命なのか)
マシュマロは高級ちゅるるの誘惑に負け、大福から白猫に戻り、こたつから出てきた。出てきて、あかりが持っている猫用衣装を見て、毛を逆立てた。
にゃーん!? にゃんにゃにゃん? にゃにゃんにゃにゃにゃんにゃん! (トナカイだと!? この俺がトナカイ? 俺は断じて真っ赤なお鼻なんて付けないぞ!)
残念ながら抗議の声空しく、マシュマロはトナカイの衣装を着せられてしまった。
「ココア、マシュ―、こっち向いて~」
あかりがスマホを向ける。SNSに上げる写真を撮るためだ。
ココアが再びやる気ゼロになったマシュマロに声を掛ける。
(マシュマロ、そんな死んだような目じゃ、いつまでたっても撮影会は終わらないよ。これは飼い猫の宿命だ、受け入れないと)
(ココア……それもそうだな。よし、とっとと終わらせて、高級ちゅるると、猫ケーキをいただくぜ!)
「二人とも仲がいいね、よーし、もう一枚」
二匹のそんなやり取りを知る由もなく、工藤あかりは二匹を撮影しまくるのだった。
(終わり)
白猫のマシュマロ、通称マシューが言った。
「来たね、マシュマロ。今年も覚悟しないと」
いつもはのんびりしている黒猫のココアが、めずらしくキリっとした顔で言った。
「昨日の二十四日は、あかりは残業だったから、家に帰るなりすぐ寝ちまった。だから逃れられたけど、今日は定時で帰って来るって言ってた……。まったく、これだから彼氏の一人もいないアラサー女はよ。デートの予定とか、ないのか?」
「アラサーってもう死語だよ、マシュマロ。しょうがないよ、観念しよう。それが僕ら飼い猫の宿命だよ。もしかしたら、猫ケーキ、食べられるかもしれないし」
「ココア、お前は潔いな、見直したぜ。俺は最後まで抵抗して、猫こたつで丸くなる。じゃあな」
マシュマロが猫こたつに入り、寝たふりを決め込んだとき、玄関の扉が開いた。
「ただいま~、ココア、マシュ―、さあ、今年も張り切って行こう!」
二十八歳、独身彼氏なし、深夜アニメを観ることが趣味な工藤あかりが、一人暮らしのアパートに帰って来たのだ。
にゃ~ん、にゃにゃん(おかえり~、あかりちゃん)
「あれ? ココアだけ? マシューは? さては猫こたつだな」
そう言いながらあかりは膨らんだ紙袋から、猫用サンタの衣装と帽子を取り出す。ついでにトナカイもある。
「ボーナス出たからトナカイも買っちゃった! さあ、撮影会よ~」
あっというまにココアはサンタクロースの衣装を着せられてしまった。
「うん、ココアは黒いから赤い帽子が似合うね。次はマシューね」
(俺はサンタなんかにならない!)
猫こたつの中で、マシュマロは雪見だいふくのように丸くなり、抵抗の構えを見せる。
それを見たあかりは、こたつを覗き込みながらこう言った。
「サンタになってくれたら、ご褒美にスペシャル猫用ケーキ、あげるんだけどな~。そっか、マシューは寝ちゃってるのかあ。マシューの大好物、高級ちゅるるもあるのに」
(なんだと、高級ちゅるる!? くそっ。これが宿命なのか)
マシュマロは高級ちゅるるの誘惑に負け、大福から白猫に戻り、こたつから出てきた。出てきて、あかりが持っている猫用衣装を見て、毛を逆立てた。
にゃーん!? にゃんにゃにゃん? にゃにゃんにゃにゃにゃんにゃん! (トナカイだと!? この俺がトナカイ? 俺は断じて真っ赤なお鼻なんて付けないぞ!)
残念ながら抗議の声空しく、マシュマロはトナカイの衣装を着せられてしまった。
「ココア、マシュ―、こっち向いて~」
あかりがスマホを向ける。SNSに上げる写真を撮るためだ。
ココアが再びやる気ゼロになったマシュマロに声を掛ける。
(マシュマロ、そんな死んだような目じゃ、いつまでたっても撮影会は終わらないよ。これは飼い猫の宿命だ、受け入れないと)
(ココア……それもそうだな。よし、とっとと終わらせて、高級ちゅるると、猫ケーキをいただくぜ!)
「二人とも仲がいいね、よーし、もう一枚」
二匹のそんなやり取りを知る由もなく、工藤あかりは二匹を撮影しまくるのだった。
(終わり)
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