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【エピローグ】ジョルジュside
あれから数ヶ月が経っていた。
お城はすっかりローズマリーの支配下に置かれていた。
王は隠居生活を余儀なくされ、母上である王妃共々離れの搭でひっそりと暮らしている。
城の臣下達は優秀な者達以外はその地位を剥奪され、とっとと故郷へと帰された。
今夜は女王就任の式典を開くらしい。
その一環として、先日新女王となったローズマリーが街をパレードし、国民達の前で演説を行ったと耳にした。
あれほど彼女を悪女と嘲り、罵り、嘲笑していた者達が彼女の演説を聞いて、あっという間に皆彼女の虜になったというのだ。
今や街を歩くとあちこちから
「新女王様万歳!! 」
「ローズマリー様万歳!! 」
という声が聞こえてくると言う。
国民達の心をひっくり返すような演説とは一体どのような内容だったのだろう。
いや、それよりもローズマリーのあの底冷えするような美しさに人々は魅了されたのかも知れない。
「この私のように……」
私は中庭に咲いた見事な深紅の薔薇を摘み取りながら思わず心の声が口から洩れてしまい、ハッとして辺りを見回した。
そして誰もいないことが分かるとほっと胸を撫で下ろした。
私は抱えきれない程の薔薇を摘み取り終わると、いそいそと目的の場所へと足を向けた。
「ジョルジュ!! 」
城へと戻ると、背後から切迫したような声で私の名を叫ぶイザベラに呼び止められた。
私は足を止め、わずらわしげに後ろを振り返った。
「なんだ、また勝手に城に入ってきたのか」
私の冷たい言い方にイザベラが我慢できないというようにわなわなと華奢な身体を震わせる。
そしてキッと私を鋭い眼差しで睨み付けるとつかつかと私の前まで歩み寄ってきた。
「いい加減に目を覚まして!! 貴方も国王や他の皆と同じようにあの女の能力に操られているだけなのよ!! 」
そう言いながらイザベラが大事そうに腕いっぱいに薔薇を抱える私の手に視線を移した。
「……手から血が出ているわ。貴方の綺麗な手が傷だらけよ。そんなにしてまであの女に薔薇を贈りたいの? 私にはそんなことちっともしなかったじゃない……」
悔しそうにイザベラの顔が歪む。今にも泣き出しそうだ。
「私と君は既に婚約を解消している。君がもう城に来る理由などないのだ。帰ってくれ」
また目の前で泣かれると面倒なので、私は彼女を追い返そうと冷たく突き放した。
「お姉様が婚約を戻すと言っていたじゃない! 私達はまたやり直せるわ! 」
そう言うとイザベラが私の腕に縋り付いてきた。
「いい加減にしないか。私はもう君にこれっぽっちも恋心も抱いていない。婚約は解消されたままでいいと、何度同じことを言わせるんだ」
私はいよいよ我慢の限界で鬱陶しいイザベラの手を払いのけた。
私の腕から数本の薔薇が床へと落ちる。
「お姉様の能力に惑わされないでジョルジュ。貴方、あれ程お姉様を嫌っていたじゃない」
悔しそうに、そしてローズマリーを心底恨むように、イザベラは床に落ちた薔薇を足でぐしゃりと踏みつけた。
イザベラの足下で踏み潰された薔薇を見て、私の中で彼女に対しての怒りが沸々と湧いてくる。
何故だろう。
イザベラの私を睨み付ける鋭い眼差しや歪んだ顔を見るととてつもなく不快で堪らない。
だが、これがローズマリー相手だと私は何故か激しく心が乱れ、興奮してしまうのだ。
(私は彼女にそうなるように操られているのか?
……いいや、違う)
私は自分のこの感情を庇うように、イザベラに向かって口を開いた。
「私はローズマリーの術になど掛かっていない。彼女はあの時確かに言っていた」
『いいえ。あの二人には絶対にこの力は使わないわ』
そう、私達二人だけが今までと変わらない。
大きく変わった周りの様子に取り残された二人。
いっそ私にも術を掛けてくれたらどんなに楽だっただろうか、と何度も思わずにはいられない。
二度と振り向いてくれない彼女の心が欲しい。
あの冷たく鋭い眼差しを憎しみの感情でいいから私だけに向けて欲しい。
彼女の姿を思い浮かべ、私は苦しさと興奮にぞくぞくと身体が震えた。
(ああ、一秒でも早く彼女に会いたい。
冷たくあしらわれようとも、こうして私をこの城に置いていてくれる彼女に。
そして毎日会うことを許してくれる彼女に)
それだけで私は幸せだった。
ローズマリーが私達の心を操らず、自由にさせていることで、私達は勝手に苦しんでいる。
そう、彼女の復讐は続いているのだ。
これからもずっと。
その事実を目の当たりにして、私の身体が再びぶるりと震えた。
それは果たして恐怖なのか、それとも悦びなのか。
私は私の心を永遠に支配し続けるローズマリーに想いを一層募らせる。
私は鬱陶しいイザベラを振り切ると、両腕に花束を抱え直し、愛しの女王様の元へと逸る気持ちを抑えきれず、足早に歩みを進めた。
(ああ、今日も君に会いに行くよ、ローズマリー)
玉座に座る冷たくも美しい女王様の姿を思い浮かべ、私は高鳴る胸の鼓動と、腕に抱えた薔薇の香りにいつまでも酔いしれるのであった。
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表示ミスのご指摘ありがとうございました💦
作品は既に最後まで執筆出来ており、順次確認作業が終わり次第最終話までアップ致しますf(^^;
大変失礼致しましたm(_ _)m💦