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男の子
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あれは17歳の春の出来事でした。
私は全寮制の学校の学生でした。
学校は緑が豊かな壮大な土地にあり、その一角の少し薄暗い隅の方にポツリと寮がありました。
ルームメイトは縦割りで構成されており、
中学一年生から大学2年生までの合計8名が各部屋で生活をしていました。
私の部屋は一階の入り口近くの暗い部屋で
「清風」という部屋名だったように記憶しています。
とにかく陰気臭い部屋だっことは記憶から
拭うことは出来ません。
それでも当時唯一の楽しみがあり、部屋の裏手にあるパン工場から毎朝香ばしいバターの香りがすることでした。
清風は部屋の扉を開くと左右の壁に沿って
2段ベットが2台ずつ置いてありました。
私は手前のベットの1段目を、中1の
中西茜さんが私の上段のベットを使っていました。
寮生は平日は寮生活をし、
休日は帰宅したり、友人宅に泊まったりと自由に過ごすことが出来ました。
私もほぼ毎週末家族のいる自宅に帰省したり、繁華街へ赴き友人と夜遊びを楽しんだりしていました。
しかしあの土曜日はいつもとは違いました。学校近くに住む友人宅に日曜日に行く約束をしていたので寮に残ったのでした。
週末の寮は不気味な程静まり返っていました。残っている生徒はちらほらと少数で、
いつもはけたたましい楽器音が鳴り響いている演奏室からも何も聴こえてきませんでした。
私は夕食を済ませ、暫くラウンジでテレビを見てからすぐに自室の「清風」へと戻りました。
その夜、「清風」に残っていたのは私だけでした。
静寂に包まれた部屋で本を読み時間を過ごしながらたまには1人でゆっくりとするのも悪くないなと思っていました。
就寝の時間22時になり寮長が見回りに来て安全確認を終えると、私は2段ベットの下段のベットに潜り込み、うつらうつらと
まどろみの世界に落ちていきました。
しかし暫くして目が覚めた私に不思議な事がおこったのです。
「う、う、動けない、金縛り?」
ゆっくり、恐る恐る目を開けると
上段のベットから何かがぶら下がっているのが見えました。
それは白いボヤがかかり良く見えないのですが確かに上から何かがぶら下がっていたのです。
瞬間的に私は中西さんの布団が落ちそうになっているのだと思い、ホットしたのも束の間、中西さんは帰宅していない事を思い出しました。
そう、
この部屋にいるのは私だけ。。。
いぜん、金縛りから解放されない。
私はそのぶら下がっている物体を触ろうと必死で意識を集中させてみました。
すると、
バサっとその物体が地上に降りたのです。
そこでようやく金縛りから解放された私は
その地上に降りた物体を目を凝らして見てみました。
そこには真っ白い顔をした少年がこちらを呆然と見つめていたのです。
手も足もありました。
彼の顔は今でもよく覚えています。
日本人離れをした端正な顔立ちの男の子でした。
少年は自由自在にどこでも動けるようで、私が目で追うと姿を消し、再び違う所から
姿を現すのでした。
まるで鬼ごっこでもしているかのように。
最後はクローゼットの影に隠れて片目だけをこちらに向け暫くじーっと私を凝視していました。
徐々に恐れが私を襲ってきました。
それ以上は「清風」にいることは出来ませんでした。
部屋を飛び出た私は一目散に寮長の部屋の扉を強く叩き助けを求めました。
寮長はすぐに扉を開け、私の顔を訝しげに見つめました。
「何かありました?」
「あ、あ、」慌てていた私の口から言葉が出てこないのを見て寮長はすぐに私を部屋に入れてくれました。
そして、ゆっくりと話し出したのです。
「何か見ましたね」
「はい、お、男の子」
「やっぱりそうですか。最近はあまり出てこなかったからお祓いが効いたのかと安心していましたが」
「お祓い?」
「あの少年は裏のパン工場の息子さんで
かなり前に亡くなったようです。
今は経営者が違いますから。
少年の亡くなり方があまりに残忍で、
成仏出来てないんでしょうね」
「残忍?」
「はい、殺人でした。細かい話は聞きたくないと思います。
まあ、昔の話しですが。」
寮長はそれから一旦深い呼吸をしてから呟いたのです。
「あの部屋の生徒の何人かは過去に不慮の事故にあったり、急死された方もいました。でもここ数十年は何も起こっていなかったんです。」
私は身体に鳥肌がたち、震えが止まらなくなりました。
その後「清風」は再び開かずの間になりました。
今でもその学校も寮もパン工場も存在しています。
あの少年が成仏出来た事を心から祈っています。
私は全寮制の学校の学生でした。
学校は緑が豊かな壮大な土地にあり、その一角の少し薄暗い隅の方にポツリと寮がありました。
ルームメイトは縦割りで構成されており、
中学一年生から大学2年生までの合計8名が各部屋で生活をしていました。
私の部屋は一階の入り口近くの暗い部屋で
「清風」という部屋名だったように記憶しています。
とにかく陰気臭い部屋だっことは記憶から
拭うことは出来ません。
それでも当時唯一の楽しみがあり、部屋の裏手にあるパン工場から毎朝香ばしいバターの香りがすることでした。
清風は部屋の扉を開くと左右の壁に沿って
2段ベットが2台ずつ置いてありました。
私は手前のベットの1段目を、中1の
中西茜さんが私の上段のベットを使っていました。
寮生は平日は寮生活をし、
休日は帰宅したり、友人宅に泊まったりと自由に過ごすことが出来ました。
私もほぼ毎週末家族のいる自宅に帰省したり、繁華街へ赴き友人と夜遊びを楽しんだりしていました。
しかしあの土曜日はいつもとは違いました。学校近くに住む友人宅に日曜日に行く約束をしていたので寮に残ったのでした。
週末の寮は不気味な程静まり返っていました。残っている生徒はちらほらと少数で、
いつもはけたたましい楽器音が鳴り響いている演奏室からも何も聴こえてきませんでした。
私は夕食を済ませ、暫くラウンジでテレビを見てからすぐに自室の「清風」へと戻りました。
その夜、「清風」に残っていたのは私だけでした。
静寂に包まれた部屋で本を読み時間を過ごしながらたまには1人でゆっくりとするのも悪くないなと思っていました。
就寝の時間22時になり寮長が見回りに来て安全確認を終えると、私は2段ベットの下段のベットに潜り込み、うつらうつらと
まどろみの世界に落ちていきました。
しかし暫くして目が覚めた私に不思議な事がおこったのです。
「う、う、動けない、金縛り?」
ゆっくり、恐る恐る目を開けると
上段のベットから何かがぶら下がっているのが見えました。
それは白いボヤがかかり良く見えないのですが確かに上から何かがぶら下がっていたのです。
瞬間的に私は中西さんの布団が落ちそうになっているのだと思い、ホットしたのも束の間、中西さんは帰宅していない事を思い出しました。
そう、
この部屋にいるのは私だけ。。。
いぜん、金縛りから解放されない。
私はそのぶら下がっている物体を触ろうと必死で意識を集中させてみました。
すると、
バサっとその物体が地上に降りたのです。
そこでようやく金縛りから解放された私は
その地上に降りた物体を目を凝らして見てみました。
そこには真っ白い顔をした少年がこちらを呆然と見つめていたのです。
手も足もありました。
彼の顔は今でもよく覚えています。
日本人離れをした端正な顔立ちの男の子でした。
少年は自由自在にどこでも動けるようで、私が目で追うと姿を消し、再び違う所から
姿を現すのでした。
まるで鬼ごっこでもしているかのように。
最後はクローゼットの影に隠れて片目だけをこちらに向け暫くじーっと私を凝視していました。
徐々に恐れが私を襲ってきました。
それ以上は「清風」にいることは出来ませんでした。
部屋を飛び出た私は一目散に寮長の部屋の扉を強く叩き助けを求めました。
寮長はすぐに扉を開け、私の顔を訝しげに見つめました。
「何かありました?」
「あ、あ、」慌てていた私の口から言葉が出てこないのを見て寮長はすぐに私を部屋に入れてくれました。
そして、ゆっくりと話し出したのです。
「何か見ましたね」
「はい、お、男の子」
「やっぱりそうですか。最近はあまり出てこなかったからお祓いが効いたのかと安心していましたが」
「お祓い?」
「あの少年は裏のパン工場の息子さんで
かなり前に亡くなったようです。
今は経営者が違いますから。
少年の亡くなり方があまりに残忍で、
成仏出来てないんでしょうね」
「残忍?」
「はい、殺人でした。細かい話は聞きたくないと思います。
まあ、昔の話しですが。」
寮長はそれから一旦深い呼吸をしてから呟いたのです。
「あの部屋の生徒の何人かは過去に不慮の事故にあったり、急死された方もいました。でもここ数十年は何も起こっていなかったんです。」
私は身体に鳥肌がたち、震えが止まらなくなりました。
その後「清風」は再び開かずの間になりました。
今でもその学校も寮もパン工場も存在しています。
あの少年が成仏出来た事を心から祈っています。
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