両片想いのループの中で

静穂

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入学式。
同じ中学からは由夏と二人だけの進学で、心細かった。

あぁ、今までなら隣に翔がいて、
「制服に着られてるな」
とか
「まぁ、いいんじゃね?」
とか言いながら向かっていたから、心細いなんて感じる暇が無かったんだって思い出した。

もう簡単に会えないって分かっているハズなのに、何かあると翔を思い出してしまう。

彼が東京に行ってから。
テレビや雑誌で見かける機会があって。
身構えていれば、翔を見かけてもポーカーフェイスでいられるけれど、番宣CMみたいな不意打ちはつい表情が固まってしまう。

時が経てば、きっとこの思いも薄れて、ただの幼馴染に、一視聴者になれる。

そうならなきゃ、と言う想いと
まだ好きでいたい気持ちがせめぎ合っていて、新生活のドキドキに追いつかない。

笑わなきゃ、
笑え。

自分を鼓舞しても、私の顔は能面の様で。
そこに気付いて、また落ち込んだ。

由夏は、時折心配そうな顔を見せながら、
「クラス、一緒がいいね!」
と、私の分も本当に楽しそうに笑ってくれた。

校門から少し進んだ、クラスが張り出されている掲示板には、これから机を並べるであろう子達が集まっていた。
総合学科は2クラス。
ドキドキしながら由夏と確認して。
無事に同じクラスで、小さくハイタッチをした。

そんな時。
「華っ!」
呼ばれて振り返ると、そこにはダンスチームで一緒だった、懐かしい顔がいた。

「涼!」
「よっ!元気だったー?俺もココなのよー、総合学科!」
相変わらずチャラ付いている涼が同じクラスにいる事にビックリしたけど、正直、ホッとした。

ダンスチームでは一緒だったけど、小学校も中学も違う彼は、昔から同級生なのにどこかお兄さんな雰囲気で。

「これから宜しくなー!で、そちらの美人さんはどなた?」
そんな涼の一言があって、由夏を紹介して。

涼の隣にいた、涼のお友達で偶然にも同じクラスになった真斗しんとを紹介されて。

真っ暗だと思っていた、翔の居ない高校生活に、ちょっとだけ光が差し込んだ様に思えた。

こんな風に、翔も私が居ない「日常」を受け入れて、もう交わらない道を歩んで行くんだ。
そしてそれを私は、真偽も分からぬままに、受け入れるしか無くて。

そんな風に思っている事も、いつか笑い話に出来る日が来るのかな。
この気持ちは、どうしたら落ち着くのかな。
…感情の揺れを抑える術は私には無くて。

だから、気付かなかった。
そんな不安定な私を見つめる視線にーー

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