シングル·ルームシェア

にじいろ♪

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午前中は、のんびり

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「はい、おはようございます。小梅さん」

「あらぁ、ノッキョちゃん、今日は海賊狩りかい?」

杖をついた可愛いばあちゃんが、オレのタオルを巻いた頭を見て、クフフ、と笑う。あー、和む。ちっちゃくて可愛いばあちゃん、大好き。

「えー、海賊を狩る方?海賊じゃなくて?」

タオルの巻き方は、完全に海賊側なんだけど。

「だって、あたしゃノッキョちゃんが狩られたら泣いちゃうもの」


好き。
え、好き。何?この手の平で転がされてる感。これが年上の包容力……!!

「も~っ、上手いんだから、小梅さん~いつもより多めに揉んどくよ~」

「なんだい、とうとう胸揉むのかい」

「そこは旦那さんに頼んで~オレ、専門外だから~」

アハハ、と冗談を言いながら、小梅さんのマッサージ、そのまま筋トレ、歩行練習までやる。全部いつも通り。
え、OTだろって?それじゃあPTの真似事だろうって?
整形だと、お年寄りは、大抵みんな同じなんだよ。
あとは、手の骨折とかなら、また違うけど、大抵は、こんなもん。
お年寄りは、ホットパックとマッサージが好き。オレも同じだもん。出来ることなら、自分は何もしないで、誰かにマッサージして欲しいもん。わかる。
それが正しいとかは別にして。

「ほんじゃ、今日はここまで~」

「はい、ありがとうございましたー」

そんなこんなで、次々と患者さんをこなして、午前中の業務は終わった。
後片付けは、鈴木さんが猛スピードでやってくれていて、オレも明士も合わせようとするけれど、そもそも次元が違うらしい。

「あ、もう、そこ終わりました」

「はいっ、すみませんっ」

余計な手出しは却って足手まとい。

「では、お疲れ様でした」

「「はい、お疲れ様でしたー!また来週よろしくお願いします!」」

ペコリ、とお辞儀をして、終業時間ピッタリで鈴木さんは裏口から出て行った。流石だ。もはや感動するレベルに仕事が早い。

「ほら、あんた達もさっさと帰りな!」

中本さんに追い出されるように、オレ達も慌てて着替えて裏口から出る。
鈴木さんは、終業5分前には着替えていたような……働くママは大変よな。尊敬。


「昼飯、どーする?」

午前仕事は12時30分まで。
現在、12時40分。丁度、昼飯時である。

「あー……丼系?それか、麺類?」

「最近、俺達、野菜食ってねぇだろ。野菜食おうぜ」

「野菜ってさ、なんか食った気がしねぇんだよなー。水っぽかったり、カサカサしててさー」

「ノッキョ……それが野菜であり、それが生きるってことだ」

「意味分かんねぇ」

そんなこんなで、難関サラダバーを擁するファミレスへ行くことにした。

「いらっしゃいませー、2名様ですか?」

「はーい、2名でーす」

暖かい店内は、それなりに賑わっていた。
ファミリーも1人も、グループも。
すぐに席に通されて、ランチメニューを選ぶ。

「あー、日替りかなー」

「ハンバーグ食いてえ」

「あと、サラダバーとスープバー付ける?」

「えー、スープバーって、意味あんの?水分じゃん。ドリンクバーで良くね?」

「お前なぁ、スープには栄養が溶け出してんだよ、多分だけど」

「なにそれ。説得力無いわー」

ごちゃごちゃ言いながらも、二人共、日替りランチを頼み、スープバーとドリンクバー、サラダバーも付けた。豪華な昼飯である。

「んじゃ、取ってくるわ」

「あいよー」

荷物番と取りに行く係で、一人ずつ順番に行くスタイル。一応ね。リスク管理は大事。

「はい、次、どぞ」

「うぃー」

明士が戻って来て、次はオレ。
うーん、野菜、あんまり好きじゃないんだよね。
周りをキョロキョロしながら、レタス、キャベツ、ブロッコリー、プチトマト、あと安定のポテトサラダを載せてシーザードレッシング。

うん、濃厚で良い。
サラダには濃厚さを求めるから、次はゴマドレッシングだな、と次の予定も決める。

ついでにスープも注いで戻る。
ドリンクバーは明士のもついでに取りに行く。健康がどうたら面倒なこと言う癖に、明士はコーラばっか飲むんだよな。
酒はカルアミルクだし。糖尿になるぞ。

「はいよ、お待たせ」

「ん、サンキュ」

メインが届くまで、モシャモシャとサラダとスープ、ドリンクを飲んで待つ。食べ過ぎるとメインの美味さが落ちるから加減したい。

「なー、明日のゲーセンだけどさ」

「んー?なに?」

シーザードレッシングの優秀さに感謝してブロッコリーを食べていると明士が話始めた。

「軍資金、どれくらいにする?」

「あー、それな。超大事」

話題は、ゲーセンで幾ら使うか問題。これは、かなり重要。なにせ働いてるからね、オレ達。しかも独身、ルームシェア。
使おうとすりゃあ、それなりに使えちゃうわけで。ある程度、決めておかないと悲惨な月末を迎えます。

「キャッシュレスでも出来るだろ?財布開かないと加減わからなくなるよな」

「だよなー!やっぱ両替した100円が無くなるまでとか、アナログじゃないと止められなくなるよなー」

うんうん、と頷きながらプチトマトを噛み砕く。プチトマトは好き。

「お待たせしましたー。ハンバーグランチのお客様」

「はい」

「彩りチキンプレートのお客様」

「はーい」

そうこうしてる内にメインも届きました。勿論、白米もセット。やっぱガツンと腹に溜まらないとね。

ガッツリ食べながらも、明日の作戦会議をする。

「じゃあさ、キャッシュレス使わないって、どう?で、現金だけで最初に両替した分だけにする、とか」

「あー……なるほどね。でも、あと一回って思った時に、ついキャッシュレス使っちゃうんだよなぁ」

「それは、もうズルと見なそう。明日はキャッシュレスNGで」

「OK……最初の両替が肝だな。幾らにするかで、運命が変わる」

物凄い真剣に話し合ってるけど、ゲーセンの話しだから。

「……だな。同額で勝負するか?」

「……それな……こうなったら、勝負するか」

メラメラと燃えたぎる熱い闘志。サラダも進む進む。明日に向けて栄養バランスもバッチリ決めて、オレ達は、明日、旅立つ。
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