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第一章
バー
しおりを挟む僕は、家を飛び出して、そのままの足で少し前まで常連だったゲイバーへ来ていた。
「はー、辛気臭いわぁ。もぉ止めてよねー?営業妨害って言葉、知ってる?」
アカネママは、かなり厳ついイケメンだ。
このゲイバーの客の大半がこのアカネママ目当てで来てるくらいイケメンだけど、誰にも本気にならないと評判だ。
そんなイケメンオネエのアカネママは、もう3年、僕の相談相手というか、もはやマイカウンセラー。
「だって、だって、僕、僕…もう我慢出来なくて…」
僕は泣きながらカウンターに突っ伏す。
「はいはい、ノンケ相手にもう10年も片想いしてるから拗れまくってんのよねー?唯人ちゃんは」
フーっと煙草の煙を天井に吐いて新しい酒を出してくれる。
僕は、普段よりもかなり強い度数の酒を一気に喉に流し込む。
これくらい強くないと、辛い現実を忘れられない。
「その上、嘘までついて無理矢理、彼と夢の同棲にまでこぎつけたものの欲望が暴走しそうで、ヤバいんでしょ?そういうのを砂上の楼閣っていうのよ。これ以上、バカな嘘は重ねない方が身のためよ?」
ナッツを皿から取って、口に放り込む。
健吾が皿に入れてくれるなら、そこらへんの石でも僕は食べられるし、このナッツよりよっぽど美味いだろう。
「分かってるよ、そんなの!でも、健吾に離れていかれると思うと、つい都合の良い嘘をついちゃうんだ。でも、いつかはストーカーなんていないのもバレるだろうし。大体、僕、ハウスキーパーなんて頼んだことも無いし、女の子と付き合ったことも一度も無いし、もちろん男の人だって…僕は、僕には健吾だけなのに…」
「くそ童貞根暗ストーカーイケメン」
ボソリとアカネママが呟いた。
「へ?なに?」
何か低い声で空耳が…?
「ん?とりあえず胃袋掴んで好意を伝えて、ほだされるのを待つのが得策じゃない?ゲイがノンケを堕とす常套手段よ」
にっこり笑ってアカネママが、はっきりすっぱり言い切る。
あ、もう、僕との話を終わらせようとしてる…
ウジウジとバーのカウンターで泣く僕が邪魔なんだ…
「でも…でもっ、あんまり僕が料理すると、健吾が『ハウスキーパーいらなくね?』って言うんだ。仕事が無ければ、俺は必要ないだろ?ってぇ~っ…ぐすっ…」
えぐえぐと泣き続ける。
周りの客がドン引きしてることなんて分かってる。
ここでの僕は王子なんかじゃなく、むしろ皆から遠巻きにされる存在だ。
アカネママ以外には、僕はここでも高校の頃と同じで、一人ぼっちだ。
「はあーっ!めんどくさ。もう、全て告白しちゃえば?」
「それが出来たら、ここでこんなことしてないよっ!今頃、健吾に土下座してるさ!」
アカネママが、タバコを咥えて頭を抱えてる。
分かってる、分かってるよ、そんなこと。
自分が逆ギレしてる面倒な客な事ってことも、全部知ってる。
「じゃあ、もうバレないように欲求を叶えつつ自分を抑えていくしかないんじゃない?今のままじゃあ、もう我慢しきれないんでしょ?」
「え?どういうこと?」
「仕方ないわね…ほんとは止めた方がいいけど。だからねー…」
僕は、あちこちの店に寄って、あれこれと買い込んだ。
家に帰ったのは、朝6時。
健吾は、麗しく光輝きながら朝ごはんを作っていた。
「…お、おかえりー」
いつも通りの健吾がいた。
かわいい、好き。
良かった。嫌われてなかった。
「た、ただいま!ごめんね、連絡もしないで。急に仕事を思い出してさ。それで、これ、昨日のお詫びなんだけど。偶々寄ったゲーセンのUFOキャッチャーで取れてさ」
健吾の好きなゲームキャラのぬいぐるみを渡す。
前に好きだって言ってたから、これなら嫌がられないはず。
「あ、え?う、うん…ありがと。俺、このキャラ、好きなんだよなー」
「うん、前に言ってたからさ。あ、健吾の部屋のテレビ横にでも、飾って?」
健吾の部屋にも小さいテレビを置いてある。ちょうどテレビ横に良いサイズなことは測ったから大丈夫なはず。
「おー、ちょうどいーじゃん、唯人、サンキュ」
健吾が笑顔でぬいぐるみをテレビ横に置くのを、しっかりと確認する。
よし!向き、配置共にオッケー。
「さて、朝ごはん作ってくれてたんだ!ありがとう!さっそく食べていい?」
「あ、ああ、もちろん…どうぞ?」
二人で仲良くご飯を食べる。
目の前には、僕の健吾。
僕はこれからのことを考えると、興奮が抑えられなかった。
今日も早く帰らなきゃ。
まあ、元々、残業なんて無いホワイトな職場だから問題無いけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えーっと、接続はどうかな…」
僕の自室には、いつもきちんと鍵をかけている。
僕しか鍵は持ってないから、健吾は当然入れない。
夜ご飯もお風呂も終わった今、僕のPCには、自分の部屋にいる健吾の姿が詳細に映し出されている。
音声も。
ぬいぐるみに仕込んだ機器は順調だ。
健吾は寝る時は下着を脱ぐらしい。
ゴクリと唾を飲んで画面に食い入るように見る。
パジャマの下の肌が艶かしい。
妄想よりも遥かに美しい肢体に釘付けになる。
僕は、すぐに膨らんで硬くなった屹立をズボンから取り出す。
しゃがんだ健吾のお尻がカメラの方を向いている。
細い腰と引き締まったお尻。
「はあっ健吾のお尻、かわいい、やらしいっ、はあ、触りたいよぉ」
ヌチヌチと屹立を上下に擦ると先走りで右手がもうベトベトヌルヌルだ。
健吾が、何かベッドの下に落としたらしい。
四つん這いになって、お尻をこちらに向けたまま、ベッドの下に潜ろうとしている。
「ああっ…健吾、中に…挿れていい?」
妄想と画面の中の健吾を重ねながら、健吾のお尻に向けて腰を突き出す。
「健吾、気持ちいいよ、健吾ぉ」
妄想の中の健吾は、既に喘いで僕を求めている。
出る寸前にティッシュで受け止める。
最高だ。
これは最高の発明だ。
「これなら、僕、我慢出来る」
毎日の動画を全て保管し毎晩鑑賞しては抜くという最高の楽しみを手に入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なー、どうーしてんの?唯人は」
「え?どうって?」
あまりのことに頭がついて行かない。
健吾から、そんな話しが出るなんて。
「だからさ、共同生活だと気ぃ遣うじゃん?全然してないから溜まっちゃってさ。彼女もいねーし」
そういうお店に行こうかと思ってる。
健吾はそう言ったんだ。
ここでの暮らしも一年になって、だいぶお金も貯まったし、と。
「やだよ、健吾。ダメだよ、そんなの」
泣きたい。
僕が渡したお金が、他の誰かとのそういうコトに使われるなんて。
健吾が、僕以外の誰かと、そんなことするなんて!
健吾のお金なんだから文句は言えないって分かってる。
でも、僕は許せなった。
「やっぱ、ヤバいかな?病気とか、もらう?」
健吾も少し不安があったみたい。
僕の中の悪魔が囁く。
勝手に口は滑らかに動く。
「そうだよ、危ないよ。最悪、病気になったら死ぬかもしれないんだよ?それに、そんなに溜まってるなら僕が…」
そこまでで止まる。
これは、さすがにマズイ。
「ん?なに?」
「僕が…オススメのDVD貸してあげるよ」
そんなの持って無いけど。
僕が持ってるのは、健吾の写真や動画だ。
また嘘付いたな、僕。
「マジ?やったー、何系?俺、今なら何でもイケるわ」
僕は、にこにこ王子スマイルを貼り付けながら計算した。
明日の仕事帰りにあの店に寄って買って来よう。
ひとまず3枚あればいいか。
珍しくエロ話に花を咲かせて、お互いに部屋へ戻った。
くぅっ、健吾の口から、あんな卑猥な言葉が出るなんて!
冷静な顔を保つのが辛かった。
でも、これも最高な時間への階段。
健吾の言葉を頭の中で反芻しながらパソコンの中の健吾を凝視しながら、自分自身を追い上げていく。
いつもより沢山出た。
明日が楽しみ過ぎる。
もう明日は仕事早退しようかな。
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