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2人の聖女様
よんじゅうはち
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数日、同じような毎日を繰り返した。
ララ達のように魔力が見える訳ではないから、子供達の魔力が増えたかどうかよくわからない。
火の勢いが強くなったような変わらないような……
いやでも慌てるな、僕だってあのララのスパルタで何度も何度も何度も気を失って、少しづつ魔力を増やしたのだ。
たった数日でそんなに期待をするもんじゃない。継続が大事なのだ。
そんなある日、果穂が珍しく、家に居たいとぐずった。
体調が悪い訳でもなく、ただちょっとやだ、と言うだけ。
無理はさせたくない。させたくはないが、行く約束もしてるからなぁ、と困ってると、やっぱり行く、と言う。
「大丈夫か?無理してないか?」
「ううんいく、あそぶおやくそくしたの、おもいだした」
「んー、熱はないみたいだけど、具合悪くなったらすぐ帰ろうね、皆にうつしても大変だからね」
「うん……」
子供の意見がころころ変わるのはまあ珍しいことではない。
ただ、最近は友達が出来た影響か、あまりぐずらなかったので久し振りだな、と思いつつも、気にはしなかった。
僕が他の子達に構うから、赤ちゃん返りでもしてしまったのかもしれない。
孤児院の手前まで来ると、抱えてた果穂がぎゅっと抱き着いてきた。
やっぱり無理させてるのかな?
今日は帰ったら果穂を充分に構ってあげよう。
「おはようございます……」
「おはよう~、今日はお客様が来られてるのよ、お庭で遊んでくれてるの」
笑顔で出迎えてくれた先生に促されて、僕も庭に出る。
あ、と声が出た。
入学式の日に薔薇園で会った、長いプラチナの髪の女の子がそこにいた。
「お、おはようございます」
「おはようございます……」
か細い声だった。見た目もあって、消えてしまいそうな子だ。
「えっと、前、薔薇園で会った……」
「あ、はい……女の子がいたので、覚えてます、あの時はどうも……」
「あ、いえいえ僕もタイミングが悪くて……」
「私もあんな所で泣いてたから……あ、ハンカチ、その、持って帰っちゃって……後から気付いて……その、うちに置いてあるのでまた今度」
「あー、あれくらい大丈夫ですよ、もしなんなら捨てて貰っても」
「……でもあのハンカチ、その、この子のですよね?」
「大丈夫です大丈夫です、気にしないで」
そんなことより今日は泣いてない。
表情は明るくはないけど。
「今日はどうされたんです?学園は?僕は最近ここに通わせて貰ってるんです」
「今日はお休み頂いたんです……あの、孤児院のお話をされて、様子見に」
「……孤児院の話?」
「ええ、経営の話で……といっても私に権限はないんですけど」
「……もしかして」
この子が百花の言ってた聖女様なんだろうか。
確かに見た目は聖女様と言われても頷ける程それっぽい。優しくて穏やかで15歳の少女。
「百花から聞きました?」
「お知り合いですか?」
「あ、はい」
百花から話をしたとは聞いてない。
聞いてないが、百花のことだ、きちんと話が出来た訳ではなく、ほんの少し話をしただけだから、詳しく話をしてから僕に話そうとでも考えていたのだろう。
それなのに聖女様の行動が早かったのかもしれない。
「えっとじゃあその、聖女様……」
「烏滸がましいのですが、そう呼ばれております」
「なんか色々ご失礼を……」
「あっいえ気にしないで下さい!あの、最近そう言われるだけなので、私もまだ違和感が凄くて……普通にして頂けると」
そうか。
まだ15歳の少女が聖女様だなんだと急に祭り上げられて困惑してるのかもしれない。
学園でも聖女様の挨拶をさせられ、クラスでは聖女様として期待され、下手なことも出来ず、大人しく過ごしているのかもしれない。
元々大人しい子かもしれないけど、国中から聖女様聖女様と言われ、余計に聖女様の像を作り上げてるのかもしれない。
つくづく大変な面倒な職業だな……
「ここの子たち細いでしょう、経営も苦しいらしくて、国の方からどうにかして貰えないかなと思って百花に相談したんです」
「……絶対とは言えないんですけど、でも伝えてみます、確かに皆枝のよう」
「ありがとうございます!」
「いえ……こうやってちゃんと確認しないと駄目ですね、呑気に生きてきた私が嫌になります」
あ、この子ネガティブだって言ってたな。
繊細な子なのだろう、既に泣きそうな顔になってる。
慌てて、そんなことないですよ、知らないことがあるのは仕方ないですよ、と慰める。
「こうやって、知ってから動けるのが大事なんですよ、だから百花から聞いてすぐ動いて下さったことに感謝してます」
「……ありがとうございます」
ところで、この子達から魔法を教えて貰ってるのですが、と訊かれ、そんな大したことではないですがと頷く。
魔力が少ない子ばかりなことを説明し、少しでも魔法に使えるようになればと伝えると、そうですね、と真面目にきいてくれる。
「私も攻撃魔法は苦手なんです」
「学園で習ったりするんですか?」
「そうですね……私には上手く使えないようですが」
基本的には後方支援ってことかな。
ゲーム脳だと、それ大分すごいのでは!と思うけど、本人からしたら攻撃魔法を使えないのは良くないことなのだろう。
「あの、私もたまにここに来ても良いでしょうか」
「それは僕が決めることでは……」
「……私も魔法のお勉強やお手伝い、したいです」
……縋るような瞳で言われると、嫌とは言えないです。
ララ達のように魔力が見える訳ではないから、子供達の魔力が増えたかどうかよくわからない。
火の勢いが強くなったような変わらないような……
いやでも慌てるな、僕だってあのララのスパルタで何度も何度も何度も気を失って、少しづつ魔力を増やしたのだ。
たった数日でそんなに期待をするもんじゃない。継続が大事なのだ。
そんなある日、果穂が珍しく、家に居たいとぐずった。
体調が悪い訳でもなく、ただちょっとやだ、と言うだけ。
無理はさせたくない。させたくはないが、行く約束もしてるからなぁ、と困ってると、やっぱり行く、と言う。
「大丈夫か?無理してないか?」
「ううんいく、あそぶおやくそくしたの、おもいだした」
「んー、熱はないみたいだけど、具合悪くなったらすぐ帰ろうね、皆にうつしても大変だからね」
「うん……」
子供の意見がころころ変わるのはまあ珍しいことではない。
ただ、最近は友達が出来た影響か、あまりぐずらなかったので久し振りだな、と思いつつも、気にはしなかった。
僕が他の子達に構うから、赤ちゃん返りでもしてしまったのかもしれない。
孤児院の手前まで来ると、抱えてた果穂がぎゅっと抱き着いてきた。
やっぱり無理させてるのかな?
今日は帰ったら果穂を充分に構ってあげよう。
「おはようございます……」
「おはよう~、今日はお客様が来られてるのよ、お庭で遊んでくれてるの」
笑顔で出迎えてくれた先生に促されて、僕も庭に出る。
あ、と声が出た。
入学式の日に薔薇園で会った、長いプラチナの髪の女の子がそこにいた。
「お、おはようございます」
「おはようございます……」
か細い声だった。見た目もあって、消えてしまいそうな子だ。
「えっと、前、薔薇園で会った……」
「あ、はい……女の子がいたので、覚えてます、あの時はどうも……」
「あ、いえいえ僕もタイミングが悪くて……」
「私もあんな所で泣いてたから……あ、ハンカチ、その、持って帰っちゃって……後から気付いて……その、うちに置いてあるのでまた今度」
「あー、あれくらい大丈夫ですよ、もしなんなら捨てて貰っても」
「……でもあのハンカチ、その、この子のですよね?」
「大丈夫です大丈夫です、気にしないで」
そんなことより今日は泣いてない。
表情は明るくはないけど。
「今日はどうされたんです?学園は?僕は最近ここに通わせて貰ってるんです」
「今日はお休み頂いたんです……あの、孤児院のお話をされて、様子見に」
「……孤児院の話?」
「ええ、経営の話で……といっても私に権限はないんですけど」
「……もしかして」
この子が百花の言ってた聖女様なんだろうか。
確かに見た目は聖女様と言われても頷ける程それっぽい。優しくて穏やかで15歳の少女。
「百花から聞きました?」
「お知り合いですか?」
「あ、はい」
百花から話をしたとは聞いてない。
聞いてないが、百花のことだ、きちんと話が出来た訳ではなく、ほんの少し話をしただけだから、詳しく話をしてから僕に話そうとでも考えていたのだろう。
それなのに聖女様の行動が早かったのかもしれない。
「えっとじゃあその、聖女様……」
「烏滸がましいのですが、そう呼ばれております」
「なんか色々ご失礼を……」
「あっいえ気にしないで下さい!あの、最近そう言われるだけなので、私もまだ違和感が凄くて……普通にして頂けると」
そうか。
まだ15歳の少女が聖女様だなんだと急に祭り上げられて困惑してるのかもしれない。
学園でも聖女様の挨拶をさせられ、クラスでは聖女様として期待され、下手なことも出来ず、大人しく過ごしているのかもしれない。
元々大人しい子かもしれないけど、国中から聖女様聖女様と言われ、余計に聖女様の像を作り上げてるのかもしれない。
つくづく大変な面倒な職業だな……
「ここの子たち細いでしょう、経営も苦しいらしくて、国の方からどうにかして貰えないかなと思って百花に相談したんです」
「……絶対とは言えないんですけど、でも伝えてみます、確かに皆枝のよう」
「ありがとうございます!」
「いえ……こうやってちゃんと確認しないと駄目ですね、呑気に生きてきた私が嫌になります」
あ、この子ネガティブだって言ってたな。
繊細な子なのだろう、既に泣きそうな顔になってる。
慌てて、そんなことないですよ、知らないことがあるのは仕方ないですよ、と慰める。
「こうやって、知ってから動けるのが大事なんですよ、だから百花から聞いてすぐ動いて下さったことに感謝してます」
「……ありがとうございます」
ところで、この子達から魔法を教えて貰ってるのですが、と訊かれ、そんな大したことではないですがと頷く。
魔力が少ない子ばかりなことを説明し、少しでも魔法に使えるようになればと伝えると、そうですね、と真面目にきいてくれる。
「私も攻撃魔法は苦手なんです」
「学園で習ったりするんですか?」
「そうですね……私には上手く使えないようですが」
基本的には後方支援ってことかな。
ゲーム脳だと、それ大分すごいのでは!と思うけど、本人からしたら攻撃魔法を使えないのは良くないことなのだろう。
「あの、私もたまにここに来ても良いでしょうか」
「それは僕が決めることでは……」
「……私も魔法のお勉強やお手伝い、したいです」
……縋るような瞳で言われると、嫌とは言えないです。
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