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第9話 アルエド家の毎日
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「カエデ、随分魔法使えるようになったね」
「アリスさんのおかげですよ」
私がオラルさんの家に迎えられて、数週間が経過した。
毎日魔法の練習をしているうちに、私は多くの魔法を使えるようになった。
まだまだアリスさんほど多くの魔法は使えてないけど、この短期間で多くの魔法を使えるようになったことはオラルさんにも、アリスさんにも褒めてもらえていた。
今日も外でアリスさんと魔法の練習をしていて、少し遠くでオラルさんが私達のことを見守っていた。
「それじゃあ、そろそろ剣の使い方も教えてあげようか」
「え、アリスさん、剣も使えるんですか?」
「ふふんっ、すごいでしょ。多分、剣の腕だけなら私おじいちゃんよりも強いと思うよ」
「え、すごい」
「わ、ワシも全盛期なら負けとらんよ」
誇らしげに言うアリスさんの声が聞こえたのか、オラルさんは少しだけ張り合うようにそんなことを言っていた。
「ほら、カエデ。これで練習しよう」
「これって、木刀ですか?」
アリスさんは何もない空間から木刀を二本取り出すと、そのうち一本を私の方に差し出してきた。
どうやら、収納魔法でしまっていたらしい。
収納魔法というのは、空間魔法の一つらしく、いつでも自分の好きな空間にアイテムを収納できる魔法のことだ。
あんまり使える人がいないらしいけど、私もアリスさんに教わって使える魔法だったりする。
「さすがに、いきなり本物の剣でやったりはしないよ。ほら、遊びだと思ってやってみようよ」
差し出された短剣を握ってみるけど、初めて触れる木刀の柄の部分があんまり手に馴染まなかった。
持ち方もよく分んないけど、これで合ってるのかな?
「カエデ、いつでもいいから、かかってきなって」
こちらに木刀を構えているアリスさんの佇まいは様になっていて、素人が見ても隙がないことが分かった。
かかってこいと言われても、どこを狙えばいいのか見当もつかない。
「え、えーいっ」
とりあえず、アリスさんの構えている木刀めがけて剣を振り下ろそうと思って、踏み込んでから木刀を振り抜いた。
「甘いよ!」
「あっ」
しかし、私の木刀は軽くかわされて、アリスさんの木刀に弾かれた私の木刀は、私の手からすっぽ抜けて飛ばされてしまった。
「す、すごいですね」
「まぁ、私の方お姉さんだからね」
一瞬のうちに無力化されてしまった私が心かそんな声を漏らすと、アリスさんは得意げに胸を張りながらそんなことを言っていた。
そんなに強い力で弾かれたわけでもないのに、あっという間に木刀が手からなくなってしまった。
何がどうなったのかも分からないようスムーズな動きだった。
「ほれ、カエデちゃん」
私がさっきまで握っていた木刀をきょろきょろと探していると、オラルさんが私の木刀を拾ってきてくれていた。
「あっ、ありがとうございます」
受け取った木刀の柄の部分を握って、少し考えてみるけど、どうやってもアリスさんに勝てる気がしない。
さすがに、初めて木刀を手にしてアリスさんに勝つのは無理なのだろうか。
「ふむ。カエデちゃん、魔力を体に伝わせながら切り込んでみたらいいんじゃないか?」
「魔力をですか?」
オラルさんはアリスさんに聞こえないくらいの声の大きさで、さらに言葉を続けた。
「そうじゃ。ワシもやっている方法でな、体の動きが早くなって、力も強くなるんじゃ」
「そんな方法があるんですか。……分かりました、やってみます」
アリスさんは私がさっきの一撃を受けて戦意を喪失していると思ったのか、余裕そうに木刀を構えていた。
そのおかげで、さっきよりも少しだけ隙があるように見える。
「おっ、やる気だね」
「魔力を体に……魔力を体に……」
「え、カエデ?」
私はアリスさんに聞こえないくらいの声の大きさで、自分自身に意識させるように言葉を続けた。
魔力の流れは掴むことができているので、それを身体的な能力の向上に使うようにとイメージを膨らませていく。
ある程度イメージが固まったところで、強く地面を蹴るとふっと体が浮いたような感覚があった。
「え?」
「はやっ! くっ」
数歩の距離があったはずの私とアリスさんの距離は、一瞬で埋まってしまった。何が起きたのか分からないけれど、この状態のままアリスさんの木刀を弾いてしまおう。
そう思った私は、その勢いをそのままに木刀を振り回すようにして、アリスさんの木刀を叩いた。
「いったい!」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
私がアリスさんの木刀を弾くと、木刀は何か大きな衝撃を当てられたかのように、鈍い音を立てて遠くに飛んでいった。
アリスさんの方を見てみると、手のひらにふーふーと息を吹きかけて、微かに涙のような物を浮かべていた。
「すみませんでした! 大丈夫ですか?」
「大丈夫だけどさ、今のってなに?」
「えっと、魔力を込めて剣を振ったら、あんな感じになっちゃって……」
「えー、あんな乱暴なの剣術じゃないよ、木の棒で殴ってるだけじゃん」
「た、確かにそうですよね」
「一旦、魔力使うの禁止。これだと、練習にならないでしょ」
なんとかアリスさんを無力化することはできたけど、これだとただの魔法の練習と変わらなくなる。
料理のできない子が、無理やり力任せで食材を切り落としたみたいな感じなんだと思う。傍から見て危なっかしんんだろうなぁ。
せっかくなら、アリスさんみたいな綺麗な剣使いができるようになりたい。特に、将来的に使うことはないかもしれないけど、なんというかアリスさんの剣さばきはかっこよかった。
そんな姿に憧れて、私はそれから毎日アリスさんに魔法と剣を教わった。
毎日魔法と剣を教わって、お腹が空いたらご飯を食べて、三人で面白い話をして、少し遠くに出かけたりもして。
そんな楽しい日々が続いていく中で、一生こんな生活が続けばいいなって心の底から思っていた。
けれど、そんな時間が一生続くことはなかった。
半年後、おじいちゃんが突然亡くなってしまった。
「アリスさんのおかげですよ」
私がオラルさんの家に迎えられて、数週間が経過した。
毎日魔法の練習をしているうちに、私は多くの魔法を使えるようになった。
まだまだアリスさんほど多くの魔法は使えてないけど、この短期間で多くの魔法を使えるようになったことはオラルさんにも、アリスさんにも褒めてもらえていた。
今日も外でアリスさんと魔法の練習をしていて、少し遠くでオラルさんが私達のことを見守っていた。
「それじゃあ、そろそろ剣の使い方も教えてあげようか」
「え、アリスさん、剣も使えるんですか?」
「ふふんっ、すごいでしょ。多分、剣の腕だけなら私おじいちゃんよりも強いと思うよ」
「え、すごい」
「わ、ワシも全盛期なら負けとらんよ」
誇らしげに言うアリスさんの声が聞こえたのか、オラルさんは少しだけ張り合うようにそんなことを言っていた。
「ほら、カエデ。これで練習しよう」
「これって、木刀ですか?」
アリスさんは何もない空間から木刀を二本取り出すと、そのうち一本を私の方に差し出してきた。
どうやら、収納魔法でしまっていたらしい。
収納魔法というのは、空間魔法の一つらしく、いつでも自分の好きな空間にアイテムを収納できる魔法のことだ。
あんまり使える人がいないらしいけど、私もアリスさんに教わって使える魔法だったりする。
「さすがに、いきなり本物の剣でやったりはしないよ。ほら、遊びだと思ってやってみようよ」
差し出された短剣を握ってみるけど、初めて触れる木刀の柄の部分があんまり手に馴染まなかった。
持ち方もよく分んないけど、これで合ってるのかな?
「カエデ、いつでもいいから、かかってきなって」
こちらに木刀を構えているアリスさんの佇まいは様になっていて、素人が見ても隙がないことが分かった。
かかってこいと言われても、どこを狙えばいいのか見当もつかない。
「え、えーいっ」
とりあえず、アリスさんの構えている木刀めがけて剣を振り下ろそうと思って、踏み込んでから木刀を振り抜いた。
「甘いよ!」
「あっ」
しかし、私の木刀は軽くかわされて、アリスさんの木刀に弾かれた私の木刀は、私の手からすっぽ抜けて飛ばされてしまった。
「す、すごいですね」
「まぁ、私の方お姉さんだからね」
一瞬のうちに無力化されてしまった私が心かそんな声を漏らすと、アリスさんは得意げに胸を張りながらそんなことを言っていた。
そんなに強い力で弾かれたわけでもないのに、あっという間に木刀が手からなくなってしまった。
何がどうなったのかも分からないようスムーズな動きだった。
「ほれ、カエデちゃん」
私がさっきまで握っていた木刀をきょろきょろと探していると、オラルさんが私の木刀を拾ってきてくれていた。
「あっ、ありがとうございます」
受け取った木刀の柄の部分を握って、少し考えてみるけど、どうやってもアリスさんに勝てる気がしない。
さすがに、初めて木刀を手にしてアリスさんに勝つのは無理なのだろうか。
「ふむ。カエデちゃん、魔力を体に伝わせながら切り込んでみたらいいんじゃないか?」
「魔力をですか?」
オラルさんはアリスさんに聞こえないくらいの声の大きさで、さらに言葉を続けた。
「そうじゃ。ワシもやっている方法でな、体の動きが早くなって、力も強くなるんじゃ」
「そんな方法があるんですか。……分かりました、やってみます」
アリスさんは私がさっきの一撃を受けて戦意を喪失していると思ったのか、余裕そうに木刀を構えていた。
そのおかげで、さっきよりも少しだけ隙があるように見える。
「おっ、やる気だね」
「魔力を体に……魔力を体に……」
「え、カエデ?」
私はアリスさんに聞こえないくらいの声の大きさで、自分自身に意識させるように言葉を続けた。
魔力の流れは掴むことができているので、それを身体的な能力の向上に使うようにとイメージを膨らませていく。
ある程度イメージが固まったところで、強く地面を蹴るとふっと体が浮いたような感覚があった。
「え?」
「はやっ! くっ」
数歩の距離があったはずの私とアリスさんの距離は、一瞬で埋まってしまった。何が起きたのか分からないけれど、この状態のままアリスさんの木刀を弾いてしまおう。
そう思った私は、その勢いをそのままに木刀を振り回すようにして、アリスさんの木刀を叩いた。
「いったい!」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
私がアリスさんの木刀を弾くと、木刀は何か大きな衝撃を当てられたかのように、鈍い音を立てて遠くに飛んでいった。
アリスさんの方を見てみると、手のひらにふーふーと息を吹きかけて、微かに涙のような物を浮かべていた。
「すみませんでした! 大丈夫ですか?」
「大丈夫だけどさ、今のってなに?」
「えっと、魔力を込めて剣を振ったら、あんな感じになっちゃって……」
「えー、あんな乱暴なの剣術じゃないよ、木の棒で殴ってるだけじゃん」
「た、確かにそうですよね」
「一旦、魔力使うの禁止。これだと、練習にならないでしょ」
なんとかアリスさんを無力化することはできたけど、これだとただの魔法の練習と変わらなくなる。
料理のできない子が、無理やり力任せで食材を切り落としたみたいな感じなんだと思う。傍から見て危なっかしんんだろうなぁ。
せっかくなら、アリスさんみたいな綺麗な剣使いができるようになりたい。特に、将来的に使うことはないかもしれないけど、なんというかアリスさんの剣さばきはかっこよかった。
そんな姿に憧れて、私はそれから毎日アリスさんに魔法と剣を教わった。
毎日魔法と剣を教わって、お腹が空いたらご飯を食べて、三人で面白い話をして、少し遠くに出かけたりもして。
そんな楽しい日々が続いていく中で、一生こんな生活が続けばいいなって心の底から思っていた。
けれど、そんな時間が一生続くことはなかった。
半年後、おじいちゃんが突然亡くなってしまった。
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