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第18話 初めてのクエスト
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「薬草はこれで全部ですね」
「うん、ちょうど二人で十本だね」
私達は三つ受けたうち、一つのクエストを無事に完了させていた。
おじいちゃんの家が山の中にあったこともあって、私達は薬草や山菜の知識は並みの冒険者以上にあった。
それだけに、初めて来たベルリア近くにある森の中でも、目的の薬草を探すことができた。
どういう所に生えやすいかというのも、薬草によって違ったりするのだが、半年も山で過ごせば自動的にそんな知識も身についていたりしていた。
まさか、こんな所で田舎暮らしの知識が生きるとは……人生、何が分かるか分からないっていうのは本当みたい。
残りのクエストは魔物の討伐のクエストが二つだけ。まだまだ日も高いし、今日中にそれらのクエストを終わらせることもできる気がする。
「アリスさん、ホワイトラビットって知ってますか?」
「見たことはないけど、依頼書に書かれていた特徴と絵からすると……あ、あれじゃない?」
薬草を取り終えて一休みしようと思っていると、ちょうど私達の前に白いうさぎが通った。
クエストに必要なのは五体。そのうち二体が偶然にも目の前を通り過ぎようとしているのだ。
私はその二体を逃がさないように慌てて、手のひらをホワイトラビットの方に向けた。
「えっと、大気の水をかき集めて、凍らせて……『アイスウェーー』」
「『アイスウェポン』」
「あっ」
私がアリスさんに教えてもらった氷魔法を使おうとしていると、その隣から氷の塊が二つ飛び出していって、見事に二体に命中した。
「えへへっ、カエデは一撃は重いけど、スピードが遅いのが弱点だね」
「い、一撃の重さなら負けませんけどね!」
「いや、あんな小さい魔物相手にそれは無慈悲過ぎるでしょ」
「わざとしているわけではないんですよ。その、加減が難しくて」
アリスさんが放った氷の塊は見事にホワイトラビットの急所に当たったのか、ホワイトラビットは、完全に伸びてしまっているようだった。
アリスさんは手慣れたように、そのホワイトラビットを収納魔法の空間にしまって、屈んだときについた膝の汚れを払っていた。
「うーん、カエデの場合はいつもの三割くらいの力でいいと思うけどね。それでスピード重視にする。まぁ、慣れるまでは練習しかないよ」
「練習ですか……アリスさんはなんか流れるように魔法使いますよね」
「私の場合はすぐにその絵がイメージで浮かぶの。まぁ、ホムンクルスだからってのもあるかもだけど」
「なるほど。言葉よりもパッと絵を想像するんですね」
確かに、さっきの魔法もそうだったけど、一つずつ工程を丁寧に考え過ぎているのかもしれない。
もっと、言葉じゃなくて魔法を使う絵が想像できれば、もっとスムーズに魔法を使えるかもしれない。
絵かぁ……あんまり得意じゃないんだよなぁ。
「もっと極端に、魔力の塊をぶつけるくらいでもいいかもよ」
「魔力の塊をぶつける……確かに、それならすぐに打てる気がしますね」
イメージの途中くらいで魔法を投げてみるのもいいかもしれない。
何事も経験だって言うしね。
「あっ、カエデ、後ろ見てごらん」
「後ろですか? あれは……ワイルドボアですかね?」
振り返ると。そこには灰色の毛皮に包まれた猪のような魔物がいた。
体の大きさが私達の身長くらいあって、結構脂肪が乗ってそうな体をしている。
なんか、イラストにあった魔物よりも一回り大きい気がする。それに、なんか角みたいなのもあるし少し違う?
「少し違うかもしれないけど、倒した魔物は冒険者ギルドで買い取るって言ってたし、試し打ちしてみれば?」
「そうですね。試しに打ってみます」
またホワイトラビットに魔法を使うときにオーバーキルだなんて言われないように、このくらいの大きさの魔物に試しに打っておこう。
幸い、まだ向こうは私達が攻撃してくるとは思っていないみたいだし、隙だらけだ。
私は先程のアリスさんの言葉を頭の中で反芻させて、言葉ではなく絵でイメージをして魔法を想像した。
イメージは大気にある物を一瞬で集めて、それを放つイメージ。魔法が形成されるよりも早く、いつもよりも少しだけ力を落して、手のひらで固まったそれをぶつけるイメージ。
私がそのイメージをすると、本当にすぐに私の手のひらに何か力を圧縮したようなものが集まっていた。
何か違うような気がしながらも、スピード重視でそれを放ると、それはイノシシの魔物に一直線で飛んでいった。
そして、それを食らった魔物は、車にはねられたみたいに宙を舞った。
「プギィィィ!!」
そして、地面に体を叩きつけられたその魔物は、そのまま動かなくなったのだった。
「な、なに今の……え、魔法?」
アリスさんが初めて見た生物でも見るかのように、驚きと怪訝が混じったような視線でやられた魔物に視線を向けていた。
何か違うと途中で思ったけど、何かやっぱり違ってたみたいだ。
「あ、あれ? でも、今のは……は、早かったですよね?」
「早いけど今のって……本当に魔力を圧縮した物を投げつけたの?」
「どうなんでしょうか? そうなるんですかね?」
「ほ、本当にやったんだ。……カエデって、見た目に似合わず結構力で解決するタイプだよね」
「わ、私そんなイメージだったんですか?」
私はこっちの世界での姉的存在に、意外な印象を持たれていたことを知ったのだった。
し、心外だ!
でも、私の普段の魔法や剣の使い方を思い出すと、そんなイメージを持たれても仕方がなくて、私はその言葉を否定することができなかったのだった。
「うん、ちょうど二人で十本だね」
私達は三つ受けたうち、一つのクエストを無事に完了させていた。
おじいちゃんの家が山の中にあったこともあって、私達は薬草や山菜の知識は並みの冒険者以上にあった。
それだけに、初めて来たベルリア近くにある森の中でも、目的の薬草を探すことができた。
どういう所に生えやすいかというのも、薬草によって違ったりするのだが、半年も山で過ごせば自動的にそんな知識も身についていたりしていた。
まさか、こんな所で田舎暮らしの知識が生きるとは……人生、何が分かるか分からないっていうのは本当みたい。
残りのクエストは魔物の討伐のクエストが二つだけ。まだまだ日も高いし、今日中にそれらのクエストを終わらせることもできる気がする。
「アリスさん、ホワイトラビットって知ってますか?」
「見たことはないけど、依頼書に書かれていた特徴と絵からすると……あ、あれじゃない?」
薬草を取り終えて一休みしようと思っていると、ちょうど私達の前に白いうさぎが通った。
クエストに必要なのは五体。そのうち二体が偶然にも目の前を通り過ぎようとしているのだ。
私はその二体を逃がさないように慌てて、手のひらをホワイトラビットの方に向けた。
「えっと、大気の水をかき集めて、凍らせて……『アイスウェーー』」
「『アイスウェポン』」
「あっ」
私がアリスさんに教えてもらった氷魔法を使おうとしていると、その隣から氷の塊が二つ飛び出していって、見事に二体に命中した。
「えへへっ、カエデは一撃は重いけど、スピードが遅いのが弱点だね」
「い、一撃の重さなら負けませんけどね!」
「いや、あんな小さい魔物相手にそれは無慈悲過ぎるでしょ」
「わざとしているわけではないんですよ。その、加減が難しくて」
アリスさんが放った氷の塊は見事にホワイトラビットの急所に当たったのか、ホワイトラビットは、完全に伸びてしまっているようだった。
アリスさんは手慣れたように、そのホワイトラビットを収納魔法の空間にしまって、屈んだときについた膝の汚れを払っていた。
「うーん、カエデの場合はいつもの三割くらいの力でいいと思うけどね。それでスピード重視にする。まぁ、慣れるまでは練習しかないよ」
「練習ですか……アリスさんはなんか流れるように魔法使いますよね」
「私の場合はすぐにその絵がイメージで浮かぶの。まぁ、ホムンクルスだからってのもあるかもだけど」
「なるほど。言葉よりもパッと絵を想像するんですね」
確かに、さっきの魔法もそうだったけど、一つずつ工程を丁寧に考え過ぎているのかもしれない。
もっと、言葉じゃなくて魔法を使う絵が想像できれば、もっとスムーズに魔法を使えるかもしれない。
絵かぁ……あんまり得意じゃないんだよなぁ。
「もっと極端に、魔力の塊をぶつけるくらいでもいいかもよ」
「魔力の塊をぶつける……確かに、それならすぐに打てる気がしますね」
イメージの途中くらいで魔法を投げてみるのもいいかもしれない。
何事も経験だって言うしね。
「あっ、カエデ、後ろ見てごらん」
「後ろですか? あれは……ワイルドボアですかね?」
振り返ると。そこには灰色の毛皮に包まれた猪のような魔物がいた。
体の大きさが私達の身長くらいあって、結構脂肪が乗ってそうな体をしている。
なんか、イラストにあった魔物よりも一回り大きい気がする。それに、なんか角みたいなのもあるし少し違う?
「少し違うかもしれないけど、倒した魔物は冒険者ギルドで買い取るって言ってたし、試し打ちしてみれば?」
「そうですね。試しに打ってみます」
またホワイトラビットに魔法を使うときにオーバーキルだなんて言われないように、このくらいの大きさの魔物に試しに打っておこう。
幸い、まだ向こうは私達が攻撃してくるとは思っていないみたいだし、隙だらけだ。
私は先程のアリスさんの言葉を頭の中で反芻させて、言葉ではなく絵でイメージをして魔法を想像した。
イメージは大気にある物を一瞬で集めて、それを放つイメージ。魔法が形成されるよりも早く、いつもよりも少しだけ力を落して、手のひらで固まったそれをぶつけるイメージ。
私がそのイメージをすると、本当にすぐに私の手のひらに何か力を圧縮したようなものが集まっていた。
何か違うような気がしながらも、スピード重視でそれを放ると、それはイノシシの魔物に一直線で飛んでいった。
そして、それを食らった魔物は、車にはねられたみたいに宙を舞った。
「プギィィィ!!」
そして、地面に体を叩きつけられたその魔物は、そのまま動かなくなったのだった。
「な、なに今の……え、魔法?」
アリスさんが初めて見た生物でも見るかのように、驚きと怪訝が混じったような視線でやられた魔物に視線を向けていた。
何か違うと途中で思ったけど、何かやっぱり違ってたみたいだ。
「あ、あれ? でも、今のは……は、早かったですよね?」
「早いけど今のって……本当に魔力を圧縮した物を投げつけたの?」
「どうなんでしょうか? そうなるんですかね?」
「ほ、本当にやったんだ。……カエデって、見た目に似合わず結構力で解決するタイプだよね」
「わ、私そんなイメージだったんですか?」
私はこっちの世界での姉的存在に、意外な印象を持たれていたことを知ったのだった。
し、心外だ!
でも、私の普段の魔法や剣の使い方を思い出すと、そんなイメージを持たれても仕方がなくて、私はその言葉を否定することができなかったのだった。
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