天穹は青く

君の名を

　この子がふと目の前に現れて、色んな話を聞かせてくれて、色んな映像を見せてくれて、色んなことを教えてくれて。
深い眠りから目覚めてすぐ、見た瞬間体を強張らせるほどの屈強な中年男性が、この子の眼前に現れた。憎悪を滾らせ罵詈雑言を浴びせ、
「潰してやりゃー！！」
と襲い掛かった瞬間、ユカは悲鳴を上げて両手で顔を覆った。子どもの傷付く様なんて見たくない。けれど
宙を舞い、地面に叩きつけられ、これ以上ないほどに痛めつけられたのは男の方だった。幼い子供とは思えないほど俊敏且つ的確な迎撃で男をいなし、痛みにあえぎ悶絶する様に慌てふためき
「ねぇ、もう止めなよ！」
と止めても耳を貸すことなく、その子は文字通り男を叩き潰した。あっという間の出来事だった。
死にゆく自身の運命を嘆き、子供に恨み言を遺す男の姿は言葉にできないほど無様で、ユカは思わず目を背けた。